自己紹介

全員で食堂に戻ると、先程と同じ位置に座った。

「あの、おそらくあそこにいるテロリストのせいでしばらくここから出れそうにないと思われます。殺人事件も起きてなかなか危機的な状況なので、皆さんでまとまって自分の身を守るためにも、名前を把握しておきたいです。」

私はそう提案してみた。

「その前に、テロリストがいつ襲ってくるかわからないんですよ。こちらからは窓を壊さないと外に出れないし、でもそんなことしたらあの見張りの奴らがさすがに放っておかないでしょ。私はまずはもっと安全な状態に持っていきたいです。私はもうキャパオーバーだけど、誰か良い方法はないですか?それこそ、管理人さん、あなたを一番頼りにしてるんだけど。この旅館には隔離シェルターみたいなものはないのかしら。」

「…さすがにございません。」

日本庭園で会った女は先程から多少ヒステリックだが、言ってることはそんなに間違ってはいない。

「そこに関しては俺から案があります。今俺らにはテロリストにいつ襲われるかわからない恐怖と同時に、どこの誰が殺人犯なのかわからない二つの恐怖があります。さらにこの旅館から出れなくなってしまいました。そこで、とにかく全体行動をするべきだと思います。それでも動きやすいように、3人、3人、4人に分けてまとまって常に行動するようにしましょう。そうすれば1人でいるよりは安全です。」

「はい、こういう時の鉄則ですよね。私は賛成です。」

私はそう続けた。

他にも反対を示す者はいないようだった。


「安全な場所がどこにもないんじゃ、そうするしかないわね。」

彼女も納得したようだった。

「それではそこに関しては自己紹介の後に詳しくルールを決めましょう。」


話がまとまったようなので私は立ち上がってこう続けた。

「じゃあ自己紹介、早速始めましょうか。まずは言い出した私から。清野あみかといいます。23歳で院1年生のまだ学生です。」

それだけ言うとすぐ座る。

隣には赤城くんがいたのですぐに立ち上がって続いてくれた。

「俺は赤城謙人って言います。18歳の大学1年生っす。よろしくお願いします。」


続いて立ったのは大荷物を運んでいた例のお嬢様だった。

「私は風間星羅と申します。24歳です。東京の美大で卒業後に残って研究生として日々勉強しています。」

なるほど。美大生だったか。イメージ通りだ。


ここから次のテーブルに移る。

最初に立ったのはガタイの良い男性だった。

「自分は飯田力也(りきや)です。21歳で土木系の力仕事してます。無事に帰れるようこんな状況ですが助け合って頑張りましょう。」

これまでの行動を見ていても良い人なんだろうなと思わせる人だ。


次に立ったのは先ほどからよく喋ってた日本庭園であった女性だ。

「佐藤莉緒です。なんか取り乱しててすみません。でも正直に怖いんです。死にたくない。…輪を乱すつもりはないんでよろしくお願いします。あ、ただの会社員…26です。年齢言いたくないんだけど…。ちなみに帰国子女で空気読むのとか苦手です。じゃ、次の人どうぞ。」


おそらくヒステリックにはなりやすいが悪い人ではないらしい。


続いてゆっくりおどおどしながら立ったのはずっと影が薄く、一度も言葉を発してない地味目の女性だ。

「あ、あの…えっと、三森奈々です。正直とても今怖いです。ただの事務員で…28…です。」

それだけ言うと速攻座った。


これで最後のテーブルに移る。

最初に立ったのは真面目そうな青年だった。

「えっと…これまで何にも喋ってなくてすみません。こんな事態初めてなもので状況を飲み込まずにいました。自分は東條衛(まもる)と申します。25歳、公務員です。ここにいる全員で無事に帰ることを目指したいです。本当は今すぐ逃げ出したいくらい怖いですが、がんばります。ここは全員で団結していきましょう。よろしくお願いします。」

喋り出すとかなりしっかりした人のようだ。


続いて立ったのは携帯が使えないことを教えてくれた若い女性だった。

「えっと…私ですね。橘光莉、18歳大学生です。私もめっちゃ怖いですが、良い人が多そうで安心しました。自分にできることなら頑張るのでよろしくお願いします。」


どうやらそんなに変な人はいないようだ。みんな集団に協力する意思がある。

次の人が一番どうなるかわからないが…。


そう思ってるとゆっくりと彼が立った。

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