緊急事態発生
「どうでした。警察に連絡は出来ましたか。」
「それが、出来ませんでした。」
管理人の顔はすっかり青ざめている。食堂には先ほどにも増して緊張が走った。
「なぜか旅館内の電話、そして私用の電話も線が完全に切られていて、使い物になりませんでした。」
管理人は元気なくそう伝える。
「…それは非常事態ですが、それなら携帯電話からすぐ警察に連絡しましょう。」
赤城くんはそう言い、すぐに携帯を操作した。
「え、何で圏外…。誰か携帯の電波が通じてる人いますか。」
「なんかここ全然電波通じないんですよねー。さすが人がほぼいない小島って感じで。」
「いえ、先ほども申し上げた通り、普段は電波が通じるんです。たしかにそんなに繋がりは良くないですが、圏外ってことはないです。それがなぜか今日の夜からどうもずっとこんな調子で。」
「私今日の20時ごろに管理人さんに携帯が繋がらないって相談しに行ったんですよ。だからもうずっと圏外で使えてないですよ。」
そう話したのは若いお洒落な女の子だった。年は赤城くんと同じくらいだろうか。
「そんな…。」
「そしたらもう外に行きましょう。それしかないでしょう。」
日本庭園で出会った女性がそう言い、全員が賛同した。
友人を殺された彼も何も言わなかった。
全員でロビーまで行き、管理人を先頭にエントランスから外に出ようとする。
しかし、自動扉は開かなかった。
「管理人さん、鍵でも閉めておいたんですか。」
「いえ、いつも閉めないのです。こんな人の少ない小島で、私は島民の方全員を知っています。その上旅行客の方は全員この旅館に泊まりますから、あまり防犯面を気にせず鍵を閉めることは本当にないのですが…。」
「じゃなぜ開かないのでしょう。」
もうそこにいる人たちの緊張感も極限になってきた。
「今すぐドアをチェックしてみます。…いや、特に壊れてはない。ロックも外れています。ドアを動かす大元のエンジンをチェックしてきます。皆さんはこの場で少しお待ちを。」
管理人はすぐに帰ってきた。
「なぜか何度エンジンを入れ直しても入りませんでした。壊れているようです。」
「はぁ。じゃあ窓よ。窓から出るしかないわ。」
日本庭園で話した女性はいよいよ焦りが全面に出てきてしまっている。
全員で再び食堂に戻り、大きな窓を開けることにした。
しかし、
「ダメです。開きません。」
「何言ってるのよ。私がやるわ。」
再びその女性が無理矢理にも力付くで窓を開けようとするが、びくともしなかった。
「割りましょう。緊急事態なのよ。すぐに何か割るものを。」
ちょうどその時、突然どこからかアナウンスが鳴った。
_______緊急事態発生。緊急事態発生。島内にテロリストが侵入。島民の皆さんは直ちに室内に避難してください。警察が到着するまで一切の外出を禁止とします。鍵をかけてテロリストの侵入に防いでください。繰り返す。
「何よ、これ…。どこから流れてるのよ。」
「ここ日本でしょ。テロなんて聞いたことないけど。こんな何にもない島でテロをして何になるわけ。」
「このアナウンスはこの旅館の向かい側にある島内アナウンス用に付けられたスピーカーから聞こえているものです。ただ、こんな事態は私も体験したことがありません…。」
「おい、あれ見ろよ。」
ずっと黙っていた友人を殺された男が窓の外を指差して言った。
「うそ…。本当なの。」
私も思わず声を上げた。
そこには全身黒服に黒い帽子を被りサングラスをかけた二人組が遠くからこちらに向かってくるのが見えた。手には銃を持っているように見える。
「もう一体何が起こってんのよ!」
ついに先程から焦っていた女性が叫んでしまった。
「みなさん、とりあえず全てカーテンを閉めましょう。2階もです。急いで!」
赤城くんがそう呼びかけ、全員が一斉に散らばった。
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