第15話 戦後交渉

 「勝っちゃったよ…」

 あっけなく落とし穴のそこに落ちていった賊の屍を上から覗き込みながらつぶやく。


 もし、この落とし穴がなかったら…

 そう考えると恐ろしくて体が震えてきた。


「いやー。危機一髪でしたねぇ…!」

「あ、オロチ!どこにいたの?」

 どこからともなく現れたオロチに、俺は声をかける。


「自分は危険じゃない木の上から見つめてました。」

「あー、そういうことね…」

 オロチとこうして話していると、戦いは終わったのだとだんだん実感してくる。

 それとともに虚脱感に苛まれて膝から崩れ落ちた。

「大丈夫ですか⁉」

「ああいや、緊張が溶けて、力が抜けただけ。気にしないで。」

「そうですか。」


 オロチがホッとしたような顔で頷く。

 そんな優しいオロチに感謝を伝えることにした。

「まあ、とにかくありがとうな。おかげで助かったよ。」

「いやいや、お礼は僕じゃなくて、僕の髪の毛に言ってください。僕は髪の毛に命令しただけなので。」

「そこは素直にお礼を受け取ってくれないかなぁ⁉いまうまく場を収めようとしてたのに…」

「僕はマイペースなのでしょうがないです。」

「本当にマイペースなやつは自分でマイペースなんて言わないからな⁉」

 二人で一気に吹き出す。


 やっぱりオロチは優しい。

 俺が疲れているから、話しやすいようにわざとおどけてくれた。


 そんな気遣いができるオロチがこの世界に来て初めて出会った存在で良かったと思う。


 ――あ、まあ厳密に言うと最初に出会ったのは高御産巣日神なのだが、まああれはこの際ノーカウントってことにしよう。うん。


「まぁ、不束者ですが、日本を統一できるように引き続き頑張っていくから、引き続きよろしくね?」

「……はい。もちろんです!」


 俺がオロチに手を差し出す。

 オロチがその手をガッチリと握る。




「あのー」

「「っ」」


 感動的な雰囲気が流れかけていた時、何者かに話しかけられて俺たちは固まった。

「誰だ!」

 それでもすぐに反応したオロチは声が聞こえた方向から俺を守るように立つ。


 そんな警戒心丸出しの姿に俺もオフにしていた緊張状態のスイッチをオンにする。

 俺らが見据えた先から現れたのは――


「投了しますっ!投了しますから、お許しください!」

「はへっ?」


 両手を上げて降参の意を示した、外見チャラ男のリーダーだった。


          ◇◇◇


「本っ当に申し訳ありませんでした‼」

「はあ」


 その後、念の為両手を背中の後ろで縛ってから、その男の話を聞くことにした。

 もちろん、両手はオロチの蛇奴隷スネークスレーブで縛っている。


 そんなチャラ男リーダーが頭を下げているが、俺は最初からこの人が形だけのリーダーだと思っていなかったので、全く怒っていなかった。だから薄い反応しかできない。


 が


 それを露ほども知らないオロチは髪を逆立てる勢いでチャラ男リーダーを問い詰めていた。


「謝っても遅いんですよ!あなた自分で何をしようとしていたかわかっているんですか!県神である大宮神に対して兵を向けたんですよ?これが何を意味するかわかりますか?普通は即、死罪ですよ⁉なぜこの状況で命乞いができるんですか?男なら黙って処刑されなさいよ‼」

「すみません…」

「ちょっと、オロチ!その人多分形だけのリーダーだから!そんなに厳しなくてみおいいよ!」

「ふんっ‼どうだか。じゃあ聞きますけどあなたは形だけでもなんでリーダーになったんですか?」


 威勢よくオロチはチャラ男リーダーに訪ねる。

 そんなオロチに向かって、チャラ男リーダーは言いにくそうに口を開く。

「いえ、あまり人のせいにするのは本意ではないのですが…私が有名な神の息子だということだけで、勝手に筋肉ムキムキの人たちにリーダーに祭り上げられてしまったんです。」

「なるほど。つまりあなたも神様だったんですね?」

 俺が軽く相槌をうつと共にそう訪ねると、こともないようにチャラ男リーダーは答えた。

「おっしゃる通り。と言っても私はそんなに力もないんですけどね」


 刹那。オロチの動きが止まった。


「あの、オロチ様?どうされたのでしょうか?」


 不審に思ったチャラ男リーダーが訪ねる。

 オロチは口をパクパクさせたかと思うと、


「す、す、す、すみませんでしたー!」

 と、土下座を始めたのだった。

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 作者注

 普段のオロチを見ていると忘れてしまいそうになりますが、オロチは上下関係に厳しいですからね

 知らず知らずのうちに神様に偉そうにしていた事に驚いているんです



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古代転生記〜ただの高校生だけど転生して日本を統一しないといけないらしい⁉︎ ゴローさん @unberagorou

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