助けてくれたのは水色のワニ!!

 舞台は第二次世界大戦の終わる間際。
戦時下、追い詰められた人は人でなくなる。

 そんな非日常の中でも飄々と暮らす斎藤という男が、水筒と手榴弾を間違えてあえなく青空に散った。

 斎藤は戦時中といえども最後の最後まで人であったと言える。
青空を見上げて喜ぶ彼の姿は、確かに人間であったと思う。

 死の危機にさらされた主人公の前に現れた水色のワニ。
主人公はこのワニに「斎藤か?」と呼びかける。

 果たしてワニは斎藤であり唯一のヒトであった。
戦場という極限状態でも人として有り続けた、ただ一人の存在であった。

彼に救われた主人公は生きて終戦を迎え、戦争のない時代に水色の空を仰ぐ。

斎藤の散った水色の空に、思わず涙を誘われた。

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