第9話 告白 

 スマホを鳴らしたが、凛は電源を切っているのかつながらなかった。

 降り悪く雨が降り出したこともあり、剛太郎は宿舎に戻った。


 宿舎と言っても妻帯者ではない剛太郎は、署の独身寮に住んでいる。警察官になると他の世界との関係は極端に少なくなる。勤務時間から飲み屋まで大体において仲間内でつるむことになる。


 警察外と言っても検察庁がほとんど、他の捜査機関がまれにといったように、一般市民の友人など、ほとんどいなくなるのが常だ。


 だからこそ凛が心配だった。森田とかいう生意気、女を張り倒してやりたい気がしたていた。

 あの女におやじとの関係を聞けばいい、森田巡査の言った言葉が、頭の中でリフレインしている。


 捜査一課の森田管理官、そう言われてもピンとこない。剛太郎は地域が希望なのだが機動隊、留置係と警備畑を歩いている。捜査に関しては全く知らない世界だ。


 夕方になってスマホにメールが来た。

「話がある、家に来て」

 凛は民間のアパートを借りている。


 剛太郎は玄関ドアの前で深呼吸をするとチャイムを押した。

「入って」

「いいのか」

 剛太郎の人生で女性の部屋に入るのは初めてのことだ。


 凛の部屋は、女の子の部屋とは思えない殺風景なものだった。炬燵兼用のテーブルとベッド、本棚。ワンルームにあるのはそれだけと言ってほぼ正しい。


「座って」

 凛はポンとクッションを投げてよこした。


「前に、なんで京都府警って聞いたでしょ。警察官になるなら警視庁か神奈川県警の方が楽じゃないかって」

 たしかに聞いた覚えがある。採用人数がおいだけに、少なくとも府警よりは簡単には入れことができる、と剛太郎は思っていた。


「、、田警視」

「え? なんて」

「森田警視、彼がいたから」


 予想はしていたがはっきり聞かされると、さすがにショックだった。

「いつから」

「高校生の時」

 剛太郎は何と言っていいのかわからなくなった。


 高三の夏、電車内で凛は痴漢にあった。それと取り押さえたのが、たまたま研修で東京に来ていた森田、当時は警部だった。


 それできっかけで大学一年の時に、二人はそういう関係になったという。

 卒業した凛は、迷うことなく京都府警を受験しそして合格した。


 ただその関係はすぐに森田の家にばれ、凛は身を引いた。

 それが警察学校のころだという。

「ごめんね」


 凛は下を向いたまま言った。

「前からずっと剛太郎の気持ちは知ってた、嬉しかった」

「だけど、自分のしてきたことを考えたら、剛太郎に申し訳なくて」

 凛に嫌われていないことだけは確信してた。


「まだ私のこと好きでいてくれる?」

「もし、いてくれるなら……、抱いて」

 剛太郎は凛を抱きしめた。




 。




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あの子は同期で上官で 女子高生全裸殺人を追う友人以上恋人未満の二人 ひぐらし なく @higurashinaku

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