僕、君、私

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ずっと一緒に


「君、、、、、、、、を、、、」



今日も僕は部屋に引きこもっている。母も父も心配していることはとっくに知ってるけど、家から外に出るたびに体が拒否反応を起こしてしまう。1、2年経っても克服する気配も見せてくれない。部屋の中は僕だけの世界と言わんばかりの安心感と孤独感、そして底なし沼のような深く抜け出せない感覚を覚える。


「そこに居たら終わりだよ」

かなり前に誰かに言われた言葉だ。その言葉がずっと腹の中で質量を持っているかのように重たく感じた。だめだとは僕も感じている。けれど家の外には獣がたくさんいる。人殺し、詐欺師、暴力団に変態。多種多様な悪人が外の世界にはたくさんいる。僕はきっとどうやって抵抗しても勝てやしない。それなら、家に引きこもるしかない。


慰めの言葉なんかはもう聞きたくない。部屋の中でしか生きられない僕を惨めな目で見られているように感じて気持ちが悪い。もちろん善意で言ってくれる人もいるんだろう。でも僕を肯定してくれる人は一人しか居ない。そうに決まってる。君は夜に僕の部屋にやってくる。君が昼に現れてくれたら僕は外にも出られるのかな、なんて妄想を続けていると、窓の外は人工的な光に満ちてきた。


「また、会えたね」

気づくと日は完全に沈んでいて、君は僕の目の前に現れた。少し霧がかっていて、姿はハッキリ見えないがそれもまた幻想的で美しい。黒い髪。華奢な体。身長は僕と一緒くらいだろうか。とにかく彼女のことが好きでたまらなかった。病的なこの心情は抑えることができなかった。というよりも、彼女の存在が僕の心の支えになっていたのかもしれない。



昔の話だ。

僕は女の子に生まれたかった。辛いことがいくつものあることは知ってたけど、可愛い服やメイク、そして男としてではなく、女性として生まれて恋愛したかった。こんなものなければいい、切ってしまいたいと何度でも思ったけど、僕が居なくなってしまうんじゃないかと不安になってしまう。細身だけど中途半端に大きな体、低すぎる声、性別、捨てたいのに、捨てたいのに、捨てたいのに、捨てたいのに。そう思ってから、約10年ほど経っていた。



「僕のこと、愛してる?」

「もちろん、だれよりもね」

「なんで、そんなに優しくしてくれるの?」

「君が私と似てるからだよ」

「なんで分かるの?」

「私が一番、君を見ているからだよ」


君とならどこでも行けそうだ。


「じゃあ、夢の中に行こうよ。」

「うん!!」

君と、沈んでいく。そして、その世界に僕は一目惚れをした。

深海に沈んで、二人だけの世界。水は青々しく、世界中のどんな景色よりも綺麗だ。魚たちは自由に踊り、珊瑚礁はカラフルな光を放っている。銀色のヴェールの中で、君とふたりきり。砂のカーペットをゆっくりと進み、海底に沈んだ白い柱がいくつも刺さってある神殿のような場所の手前で、君と向かい合う。知らぬ間に呼吸は合わさっていた。何も見えなくても、何も聞こえなくても、それでもいいと思った。

「君をもっと知りたい」

「ふふ、もう知ってるでしょ?」

「よくわからないよ、目を開けても良い?」

「いいよ、じゃあ、手を合わせよう。」

「手?わかった。」

君と手のひらをゆっくりと合わせる。何か、こころがどんどん君に吸い込まれるような感覚になった。その時、

「バリッ」

驚き、焦ってで僕は目を開けてしまった。

「起きちゃった、、、、かぁ」








自分の手には、ガラスが刺さっていた。


目を開けると、目の前には鏡があり、彼女はその中に入っていた。何が起こっているかわからず、みっともなく後退りした。


「どういうことなの?」


彼女は何も言わずただこちらを見ている。いや、睨みつけているといったほうが正しかった。僕の心の奥底から戸を叩くような音がする。ドンドン。ドンドン。


「私を、、、離し、、て、、」


「ここから、、、出して、、、」


彼女の声は聞こえないけど、聞こえてる。


そして鏡の中の君はゆっくりと,


僕に向かって、こう言った。



「君を、殺したい。」

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