第3話 春が終わる

春が終わると次に梅雨が来るので

桜が散り、酒を片手に、団子を食べて

春が終わると次にひなげしが咲くので

カーディガンを羽織り、眩しさに目を瞑り

もうすぐ春が終わるので

寂しがりの酔いどれたちは夜へ向かう

まばらに木蓮の花びらが石畳の上に広がって

噴水のあたりで煙草を嗜む

春が終わると次に行こうと言う奴が現れる

そいつは梅雨が終わるまで滞在して

私を揺らがし、私を淘汰し、私を惨めにする

梅雨が終わり夏が来れば、それはそれでじめじめといじめる

春がもうすぐ終わるので

花びら舞っているうちに出来る事を数えてみる

私に出来てこれからも続けられる生活の

音をひとつずつ数えてみる

もうすぐ春が終わる


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