笑いかけて

 小学生になった璃子はとても元気な女の子になっていた。

 毎日朝から放課後まで暇さえあれば、はしゃいでいた。


 公園で転倒したあの日、あの少年と目があった時、璃子はゾクゾクしたのを覚えている。

 体の熱が一気に上がった不思議な感覚。

 その感覚をもう一度味わいたい。


 そう思った璃子は、とにかく人目を引きたがる子どもになっていたのだ。


 授業中はわからなくても一番に手を上げる。

 冗談を言ったり、昨日テレビで見たギャグを真似してみたりもしていた。


 明るい璃子の周りには友達がたくさん集まってきた。


 みんなが璃子の目を見て笑ってくれるのが好きだった。


 でも、あの時の感覚とは程遠かった。


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