第十膳『とっておきのデザートをキミに』

 こんにちは。

 さようなら。

 わたしたちはどちらを選ぶのだろう?


 わたしはあれからずっと考えていた。

 ツレが作ってくれた料理はすごくおいしかった。

 わたしのためを思って作ってくれたのがちゃんと伝わってきた。

 では、わたしがツレのためにできることは何だろう? 


『ただいま』と『おかえり』を言える場所を作ること。

『いただきます』と『ごちそうさま』がある食卓と料理を作ること。


 わたしにできることなんてそれだけだ。

 でもそれこそが大切なんだと今は思う。


 そんなことを考えながら、わたしはデザートの仕上げに取りかかっていた。

 最後を締めくくるデザート。カロリーなんて気にしない、とにかく甘くて、優しい味のする、ほっぺたが落ちそうになる、そんなとびっきりのデザートだ。


 ツレにはデザートのことはナイショにしている。

 サプライズを仕掛けたいのは、わたしの悪い癖だ。


 さて。これで準備は完了。

 エプロンを外して、小さな皿にきれいに盛り付ける。


「今日は最後にデザートを作ったんだ。一緒に食べよう!」


 思った通り。ツレはびっくりした顔でデザートを見つめている。


「今日は特別な日。そういう日にはデザートがぴったりだと思わない?」

 

 こんにちは。

 さようなら。


 まぁどちらにせよ一生の別れではないのだ。

 その結末はデザートのあとで十分。

 今は一緒にこの甘くておいしいデザートをたっぷり堪能しよう。


 待ちきれないように、わたしたちのお腹がぐぅと鳴った。


「いただきます!」


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