第35話

俺は早速ブザーバックスに出勤し、面接官だった女性から指導を受けた。


どうやらこの女性が店長だったみたいだ。チェーン店はどこでも同じ物を出さなくてはいけないらしく、厳しい訓練を受けた。


今日は教育・指導だけでバイトが終わった。次からは『本チャン』だ!今からもうすでにわくわくしていた。


夜遅くアン子から写メがとどいたが、相変わらずのドアップで笑ってしまう。


相変わらず何のメッセージ性があるのか疑問を呼び起こす写メだ。


すみれはバイトなんぞしなくてもいい身分だから、しなくても良いんだろう。


確かホットヨガをやっていると聞いた。飽き性のすみれが続けているんだから、よっぽど相性がいいんだろう。


俺は、今日指導された時のメモを読み返していた。初バイトでやはりどうしても興奮してしまう。


何を買おうかなと悩んだが、新しい海パンとチャリぐらいしか今は思いつかなかった。基本普段使いの物だけ買うので物欲があまりなかった。


朝飯・夕飯を食べない母は、俺の事を心配してるようだった。説明しても上の空のような感じだったが、とにかく昼に、とある事情で弁当を2つ食っていると説明しても母はボケーっとしていた。


やはりというか何というか、なかなか寝付けなかった。腹が減ってきたのもあるが、やはりバイトの事で頭がいっぱいだった。が、そのうち涼しくなると自然に眠りについた。


次の日────


元気に起きた俺は、今日も朝飯抜きで、早速学校へと向かった。もちろんアン子が家の前に立っている。遅れた事はこれまで一度も無かった。


「おす」


アン子は不安そうに俺のそでを掴みながら、


「バイトどうだったん?」


と聞かれた。


「まだ指導・教育だけだから、んー何とも言えないな。何しろ種類が多くてさぁ」


「飲み物だけなのに、そんなに種類があるん?」


「ああ。さらにトッピングまであるんだぜ?」


などと雑談していると校門前で、すみれがベンツから降りて来た。


「あらキョースケ。バイトはじめたんですって?」


「ああ」


「それで時給はいくらですの?」


「780円くらいかな」


すみれは爆笑して、


「ウチのペットの食事代より安いじゃない。本当に続けるの?」


「さ、行こうかアン子」


俺は無視して学校へと入って行った。


「こ、こら、待ちなさいよ!」


すみれもキョースケの元へ駆けて行った。アン子はそのままのペースで歩いて行った。


早速訪れる放課後。もう家には行かずにブザーバックスのバイト先へ特急的到着する。


「まずはカウンターから始めるから。お客様の注文を受けるのよ」


「あ、はい」


「基本メニューは売れ筋が決まってるけど色んなトッピングがあるから、それだけは気を付けて」


「はい分かりました」


カッコいい制服に着替えた俺は、カウンターに入ると全員に挨拶した。


「え、オッドアイ?」


いつもの反応に、


「え?ええ、はい天然です」


と笑顔で応えた。


「じゃあ注文いいかな?」


「はい!」


俺はカウンターの定席に立った。


「サクラフラペチーノ、チョコかけで」


「はい。サクラフラペチーノ、チョコかけでーす!」


厨房にレシートを貼り付ける。


「748円になります。」


「スタバカードで」


俺は機械にカードをスイングさせるとピっと正しい音が響き渡った。


「番号札でお待ちください」


店長は俺の働きぶりをただじーっと見ていた。


あっという間に就業時間になり、バイト終わりの着替え室。


「響介君ご苦労様。」


「お疲れ様です!店長」


「初日にしてはまあ良くやったわね」


「ありがとうございます!」


「もう作る側に異動してもよさそうね」


「へ?」


「明日から作る側にまわって。もちろん1週間は先輩の動きを追って見てるだけね。じゃご苦労様」


いきなりの展開である。作る事なんてできるのか?俺に…

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