第2話 元魔王軍〇〇になる

「さて、今日はどのクエストを……」

「ねぇねぇ、これなんかいいんじゃない!? 報酬もほら!」


 ベレッタが一枚のクエスト用紙を持ってくる。

 ここは冒険者ギルド、街の平和を守る為に日夜冒険者が集う場所だ。


「うーん、これにするか」

「やった! 美味しいごはん〜」

「まだ食うのか? 朝ごはん食べたばかりだろ」


 その細い身体の何処に消えてるんだ。


「え〜、一日中食べていたいよ〜」

「破産するわ!」


 クエスト用紙を受付に持っていく。


「これ、受けれるか?」

「あら、カリオさん、このクエストですね……こちらクエストの詳細です」

「ふむ、報酬上がってない?」


 報酬は50ロゥから150ロゥに上がっていた。


「あ〜、魔王軍が出たとか言われていて危険度が上がったんです」

「そうなんだ」

「どうなさいます?」

「やめておくよ」

「そうですか」

「他に何かいいクエストは無いか? 魔王軍と関係なく、そしてなるべく報酬のいいやつ」


 受付嬢のローナはしばらく考え込むととあるクエストを見せてくる。


「村の用心棒か……」

「はい、この村の近くで盗賊が出るみたいで討伐隊が殲滅するまで用心棒として村を守るクエストです」


 まぁ、これなら厄介なことにはならないし……。


「これを受けるよ」

「ありがとうございます。 それでは出発は明日、馬車を用意しておくのでそれに乗って討伐隊と共に村に向かってもらいます」

「了解……」

「所で……その、今日ってこの後予定ありますか?」

「いや、ないが……」

「でしたらもうすぐ上がりなので二人っきりで食事いきませんか!?」

「別に構わないが……」

「やった! 約束ですよ!」


 人差し指を唇に当てウィンクしてくる。

 クエストの詳細を受け取るとベレッタの元へ戻る。


「遅かったじゃない」

「クエスト変更だ……あのクエストには魔王軍が絡んでるらしい」

「ちぇ、あの屑め……相変わらず私たちの邪魔ばかりして、殺してやろうかしら?」

「こらこら、物騒なこと言うんじゃない」

「むぅ〜、それで変更のクエストは何?」


 僕は彼女にクエストの詳細の書かれた紙を渡す。


「これ、いいじゃない!」

「気に入ってくれたならよかった」

「うふふ」

「どうしたの?」

「なんでもな〜い」

「それで出発は明日の朝らしい」

「ねぇカリオ、何か隠してることない?」


 楽しそうな表情だった笑顔が何処か不穏に感じるのは気のせいだろうか?


「隠してること?」

「うん」


 思い当たるところはないな。


「何もないぞ」

「ふ〜ん」

「なんだよ」

「べっつに〜」

「じゃあ、今日は解散ってことで……」

「えぇ、どうぞお楽しみに!」


 ベレッタは怒りながら出ていく。

 何を怒ってるんだ、訳がわからん。





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