第53話 初日の出が普通じゃない!
12月31日と言えど、特に変わりはない。
大人は日付が変わるまで、酒を嗜んでいたが、子供は早々にダウンだ。
日付が変わる瞬間は地球に居なかったなんてやる子供はこの時代に居ないだろう。
俺と嫁は酔っぱらってジャンプしたが...。
朝の5時ぐらいに真衣と由衣に起こされる...。
頭痛を我慢しながら真衣と由衣の後をついて行くと、そこには平気そうな嫁が居た。
どうして俺はこんなに苦しんでいるのに倍以上飲んだ嫁がピンピンしているのか不思議で仕方なかった。
頭を押さえる俺を見兼ねたのか、嫁は一杯の水を俺に差し出した。
「初日の出みるよ!」
「あ、あぁ...わかった」
こんな朝早くに何かと思えば初日の出...俺としてはどうでもいい。
いつもの様に日が昇るだけ、たったそれだけの事に何故か多くの人が関心を寄せる。まぁ家から見えるなら楽でいいか...。
念のため水筒に水を入れ、準備は万端だ。
家の縁側に行き日が昇るのをのんびりと家族で待った。
希望を瞳に宿す嫁と真衣由衣。快は起きれなかったのか華菜の腕に抱かれている。
「パパ大丈夫?」
「ん?あぁ大丈夫だ、今の所...」
そして嫁達待望の日が昇る。
こんなの何がいいん...だ...か...あれ?
太陽ってこんなに赤かったか?いや、初日の出だから?
「なにこれッ????こんなに赤いなんて、まさか...」
ポケットからスマホを取り出しネットの呟きを見るとネットのみんなも赤い太陽を見たらしく、困惑している。
ニュースに取りざたされる事態にまでなり、世界の終わりと嘆く者まで現れる始末...。
原因は大体わかっている、どうせ嫁の友達の異世界人が関わっているのだと。
「朝早くから恒星なんぞを見るとは殊勝なことだ、あんなものより我輩を信仰したほうがましだと思わないか?」
空から悠然と降りてくる存在はかなり厄介な存在だと認識している、よりにもよって混沌の神様とは...。
俺も嫁を笑顔が引き攣る。
「さぁ我輩が遊びに来たぞ?持てなす事を許してやろう」
そそくさとリビングに戻り朝食にしようとする嫁に置いていかれる俺。
「なにをしておる。我輩を持て成すと良い」
「すいません、二日酔いで頭が痛くて...」
「軟弱だな、治してやるからお年玉を寄越せ」
あっという間に二日酔いが治り、本当に痛みがあったのかさえ疑問に思ってしまうほどだ。
そして俺は今、カツアゲされている。
逃げるようにリビングへと向かい混沌の神様を入れみんなで朝食を食べる。
元旦と言えばお雑煮、と言うくらい簡単でありきたりな思い付きによって今日の朝食は餅となった。
「これはなんだ?弾力が凄いな」
「で、何しに来たの!」
嫁が高圧的に神様へと迫る。
そんな嫁に対し、神様はさも当然とばかりに答える。
「お年玉をもらいに来たんだ。わかるだろ?」
「カオスって世界の始まりじゃなかった?だとしたら!!!むしろ私達が貰う側でしょ!」
「グ―レス達と同じ事を言うんだな...」
大きなため息をつく神様は手の平から金塊を生み出し机の上に力強く置く。
「これで満足か?それとも足りんか?」
「これをどう使うってのよ...まったく...」
渋々財布から1万円を取り出し神様に渡す。
「これがこの世界の金か、では行って来る」
「行くって何処に?」
「ラーメンというものを食いたくてな、その為の資金調達だ」
それだけを言い残す神様に呆れつつ朝食を食べる。テレビをつけてみると、いまだに真っ赤な太陽の特集が行われていた。
「せめて治してから行きなさいよ....」
「まぁ神様なんてそんなもんだろ...」
「そうね...」
せっかくの初日の出は普通じゃなくなった...この赤い太陽は治るのだろうか...
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