第36話 肝試しが普通じゃない
夏祭りも終わり娘達の夏休みも徐々に終わりが近付いていく。
特に何もないただ蒸し暑い日の夜、嫁は晩御飯中に突拍子もない事を言いだした。
「肝試ししよっか」
「何を言ってるんだ...やらないだろ...普通...」
こんな田舎で肝試しなんてやった日には熊に襲われてしまう。なんてことは無いだろうが...胆を試す必要がどこにあるのだろうか...。
「夏と言えば、やっぱりお化けよ」
「違う。真衣と由衣だって肝試しなんてやらないよな?」
「やる!!」「やりたい!!」
「えぇ....」
はい。という事で、準備が完了しました。
嫁が協力を要請し、以前懇親会で見かけた死体の様な女性のメトラさんが助っ人として登場した。
いつ見ても怖い。
肌は気味が悪いくらい白く、ゴスロリ衣装からちらりと見える肌には縫い目がついている....パッと見ただけで肝が冷える。
それに追加で子供が二人だ。
一人は話もしたことがある、アブソリュートと言う少女とメトラさんの実の娘である、ミリィちゃん。
空色の髪に生える真っ白な角、そしてすべてを見透かす様な黄金の瞳。そもそも、鬼なのだから胆を試すにはちょうどいい。間違っても胆を試す側ではない。
ミリィちゃんに関しては、懇親会の時にも聞いたが、ただの特殊メイクらしく、アンデットではない。ただ、その特殊メイクがかなり怖い。脅かし役としては適任と言える...。
肝試しは三人一組で行われる事となった。
そしてそれを決めるのはくじ引きだ。割りばしの先端に赤、青、黄、色が付けられており同じ色の割り箸を引いたのがチームだ。
そして一斉に割り箸を引き...俺は青。
チーム分けはこうなった。
赤チーム:嫁・真衣・由衣
青チーム:俺・アブソリュート・ミリィ
黄チーム:メトラ・快・守り神さん
誰か、交代してくれ。
チームメンバーと集まり、軽く自己紹介をする。
「ミリィ...です。呼び方は...どれでも構いません。こっちは...アブちゃん。そう呼んでくだ...さい」
「う、うん。俺は真衣達の父親の健太です。よろしくね、ミリィちゃんにアブちゃん」
「っふ。舐められたものだ。よもやこの我の事を、ちゃん付けなど...所詮は人族の親、礼節など知らぬか...」
あれ...なんかすごい酷い事言われた....。
開始前なのに折れる心を奮い立たせ笑顔を浮かべる。がんばれ俺。
「アブは...遊び人。私はネクロマンサー...ケンタは?」
「そ、それは職業の話...なのかな?俺は...なんだろうね...遊び人かな...?」
「それしきのこともわからぬとは、哀れなものだ。己が身を護れるのは己のみ、我は助力しない。だが、我が朋友の頼みとあれば我は力を貸そう」
と。遊び人がなにか言っておりますが...。
赤チームが先に出発する。
聞こえてくる悲鳴と泣き声。そんなに怖いのか...。
「ん...ネクロマンサー?それって...もしかして...」
「うん...死霊使い」
なんで肝試しに幽霊を操る子と参加しなければならないのだろう...せめて普通の肝試しが良かった...どう考えても普通じゃない...。
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