第34話 出店巡りが普通じゃない

 人の少ない夏祭り。

 祭り感が少ないが貸し切りみたいで少し楽しい。

 少し大きめの神社で行われる祭り、境内には様々な出店が出店している。

 金魚すくいや綿菓子、お面屋、玩具屋に射的、鳥居をくぐり出店巡りが始まる。


「久しぶりねこういう所」

「人込みは苦手だしなぁ」


 どうでもいいような会話を交わしながら歩くと、最初の出店が姿を現した。


「焼きそばかぁ~食べる?」

「食べる~!」「食べた~い!」


 最初から焼きそば?!うそでしょ?


 焼きそばを人数分購入し近くのベンチに腰を下ろしのんびりと食べる。

 快も一人で食べれると言うがどうせ食べきれないので、守り神さんと二人で食べてもらう。

 俺も小食という訳では無いが、一人前を食べればそりゃあ腹も膨れる。


「パパ...お腹いっぱい...」

「そうか...」


 ほらそうなる...。

 案の定、真衣と由衣は焼きそばを半分残した。

 2人が残り物を俺に渡してくるので、俺は仕方なく食べた。


 ふぅ...俺はもう食えないぞ。

 そういう思いを視線に込めて嫁を見る。


「よし、じゃあそろそろ次行こうか」

『はーい!!』

「えぇ....」


 次に見えてきたのはチョコバナナのお店だ。

 嫁はもちろんだが、真衣と由衣もバナナとチョコの誘惑に勝てず5本購入した。俺の分は含まれていない、俺はもう食べれない...うっぷ...。


「おいしい!!」

「ね~」


 美味しそうにチョコを食べる3人。そのママ食べ終えてくれればいいが...。

 横目で快と守り神さんを見てみれば、快は守り神さんに食べさせてもらっていた。

 仲いいのは喜ばしいが...父さんは嫉妬しちゃうぞ...。


「パパ...お腹いっぱい...」

「何故食べた...」

「ん...」


 一言言ってから俺に差し出す真衣に無言で差し出す由衣...分かってはいたよ...あと半分くらいなら頑張れないかな?父さんは頑張れないよ?


 捨てるのは申し訳ないので、食べる。

 美味しい。甘い。ただただ甘い。

 ふぅ...ご馳走様...。願わくば食べ物は勘弁してください。玩具なら買ってあげるから...。

 そして再び歩みを進める。次に見えてきたのが...。嘘だろ...


「綿菓子だって。食べてみる?」


 嫁よ見ていなかったのか?


『食べる!!』


 娘よ学ばなかったのか?

 結果綿あめを4本買った。

 綿あめが出来上がる工程を興味深そうに眺めている娘達の横で、絶望の表情を浮かべる俺。

 そして...娘達は半分残した...。

 快と守り神さんは二人で一つを食べ、しっかりと完食している。

 守り神さん...俺も助けてくれ...。


 もう無理...甘いのはほんとに勘弁してください...。

 糖尿病になってしまいます。

 そろそろ玩具屋とかないのかな...。


「見てみて!射的よ!!ママあれ得意なんだよ~」

「ママすごい!」「やってみて!」

「真衣と由衣が先にやってみて、ママがやったら全部景品取れちゃうから」

『わーい!!』


 結果。

 真衣と由衣は景品を取ることが出来なかった。

 的に当たっても当たっただけで倒れるまではいかなかった。不正を疑いたくなるが...。

 そして嫁の番。

 2人の時とは威力が違う。弾は基本当たり、当たった景品は例外なく倒れる。

 こっちのほうが明らかに不正だ。


「ね?ママすごいでしょ?」

「すごい!!」「ママすごい!」

「で、どうやったんだ?」

「弾に多少の魔力込めたのよ、壊さない程度のね♪」


 はい不正です。

 まぁ、魔力使用禁止などの張り紙はないので、不正ではない?

 面白いくらい倒れるので嫁はどんどん倒していった...その結果。俺の手荷物が増えた。


 腹は糖分でパンパンになり、両腕は景品でパンパンになり...辛い...。


「俺、一旦荷物車に置いてくるから」

「うん、じゃあ金魚すくいで遊んでるね」

「お、おう...」


 一人とぼとぼと車まで荷物を運ぶ。これ...普通の出店巡りじゃないよな...もっといろいろ歩き回って...もっといろいろ悩むものなんじゃないのか...。

 出店すべてで遊んでいくなんて...どう考えても普通じゃない...。


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