第27話 仕事は普通じゃない その4
「無理ね、交渉できなかったわ」
嫁は電話から戻るとぶっきらぼうに告げる。
「実際のステータスを参考にしているから、無理だそうよ...どうやら元ネタの人達が弱体化を嫌がったらしいわ」
「元ネタいるんだ...」
衝撃の事実を言われた気がするが、バランス調整の方が重要だ。
これではゲームとして成り立たない。
「でも...これではゲームになりません、トッププレイヤーですら最大レベルが1300...明らかに異常です」
全員で頭を抱える。
これは無理難題だ...。
「少々お待ちください。覇王様に確認を取ってみます」
カウガールの言う事に一瞬我が耳を疑ったが...最後の「えっ今から来るんですか?!」に俺の心臓ははちきれるかと思った。
そして現れたのはいつしか見た銀色の髪をした男だ。
「難航しているようだな」
「グレース?!」
嫁が酷く動揺、いや、全員が動揺する。
俺と嫁、カウガールは顔見知りだが、恵那に関しては初対面であり、間違いなく異常事態だ。
「レベル上限を開放してしまえばよいだろう、弱体化はゼル達が嫌がるからな」
「そうすると、月一イベントの報酬が無意味になるわ」
「ふむ、それもそうか、ならばこれはどうだ、上限解放では無く、レベルアップのアイテムを配れば良い、そしてレベル上限を緩和し、今まで培った余剰経験値はすべて適応させる。これなら損するプレイヤーは少ないだろう」
なるほど、今までの努力は無駄にならず、これからもランキングバトルに参加する価値はある...だが...相手の高すぎるステータスを一体どうすれば...。
「それと、まだ到達したプレイヤーが居ないだろうから知らないだろうが、レベルがカンストするとステータスを引き継いでレベル1に出来る、アイテムが獲得できる、問題はあるまい」
「あの...覇王様...」
カウガールはごくりと固唾を呑み男に問いかける。
「今の私の余剰経験値だと、レベルどれくらいまでいきますか?」
「ふむ...レベル5830だ、随分やってるみたいだな。本職にはちゃんと顔出してるのか?」
「一時期休みは休みをもらいましたが、現在はしっかりと働いています!ぜひ今度いらしてください」
「そうだな、今度な」
フランクな会話を楽しむ二人を横に俺と嫁、それから恵那は話し込む。
余剰経験値でレベルが上がるのなら、反感は少ないだろう...ただ、強すぎる相手への不満が無くなる事は無いだろう...。
う~ん...。
「あのっ!」
恵那は何を思ったのか男に尋ねる。
「あの...貴方のステータスってどれくらいなんでしょうか...」
男が恵那に視線を向けると恵那は肩をびくつかせる。
カウガールも気になったのかデバック特権を利用し覇王城の戦闘をスキップし最終ステージの玉座の間に向かった。
「やめておけ」
カウガールの行動を男が静止する。
「俺のステータスを表示させようとすると、その瞬間に最大容量を越えてフリーズするぞ」
絶句。
このゲームは滅多にフリーズしない、してはならない。
それは精神と直結させているからこそだが直接人間の脳に処理を行わせている為、許容量が元から膨大だからだ。処理を脳で行っているからこそ痛覚や味覚などを感知する事ができる。データとしての容量は関係がない、だが、人間の脳の処理能力を越えフリーズしてしまえば、精神は肉体と遮断される。つまり―――死。
ステータスを表示させると死ぬ。
やばいとは思っていたけど...想像以上に普通じゃない...。このアップデートを施工するかどうか...俺達は頭を抱えた...。
ゲームによる死亡事故など合ってはならないのだ...
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