第24話 仕事は普通じゃない その1

「じゃあお願いしますね、ドミナミさん」

「はい~お任せください」


 俺と嫁は子供達を天使さんに預けて本社へと向かう事になった。

 どうやらドミナミさんはゼルセラさんの部下だそうで、子供の御守が得意というか好きらしい。

 ならばと嫁がお願いし、急遽来てもらったのだ。

 羨ましい事に快はその豊満な胸に抱かれその大きな桃に包まれている。


 ほんとは場所を変わってほしい位だが、これから仕事なので、名残惜しいがその場を去ることにした。


 普段着る事のないスーツを着て眼鏡を掛けいつもは下ろしている髪をすべてオールバックにする。

 嫁もそうだ、普段先生として着るスーツでは無くちゃんとしたスーツに身を包んでいる。

 よし、行くか。と決意を固めた頃、再び俺の携帯が鳴る。


「はい、もしもし、佐藤です」

「副社長、アプデの件で協力者の方が到着されました」

「もうですか...わかりました」


 ふむ...まずい....部下達はまさか俺達がド田舎に引っ越しているとは思っていない。

 都内にいるだろうと思い到着の旨を伝えたのだろう...。

 まさかこんな早く到着するとはこちらも思っていなかった...。


「どうかなさいましたか?」


 不意にドミナミさんに声を掛けられ肩が跳ね上がる。


「ねぇ私達を都内に転移させて欲しいんだけど」

「えぇ構いませんよ」

「ありがとうドミ!」

「ではさっそく」


 そして俺達は光に包まれ視界が眩む。

 目を開けると田舎の田園風景では無く都内の高層ビルが映し出される。

 街中ではなく、路地裏に飛ばしてくれたようだ。

 さてと、俺は携帯を取り出し、部下の一人に車を出すよう連絡を入れる。


 待つ事数分。

 一台のリムジンがこちらに近寄って来る。

 その車は俺達の前で止まると後部座席のドアが開く。

 迷う事なく俺と嫁は車に乗りくつろぐ。


「お疲れ様です、社長、副社長、デバッカーの方がお待ちです」

「えぇ話は聞いてるわ」


 街中は突然登場したリムジンに騒めきだし、人だかりを作る。

 すぐこれだ...。


 俺達を一目でも見た周囲の人達はひそひそと噂話を始める。

 他にも、俺達と判別されやすいものがこのリムジンには秘められている。

 それが...


「いい加減車にゲームタイトルのステッカー貼るのやめたらどう?」

「社長...自分もこの作品に感銘を受けた一人として譲れません...どうかご容赦を...」

「別に責めてる訳じゃないわ」


 車に揺られる事数分。

 他よりも一層高いビルへと到着する。

 正面玄関の前には既に多くの部下たちが待機している。

 外部の人が見たらどこの組織だ!と突っ込まれるくらいにはきっちりと並んでいる。

 車のドアが開きリムジンから降りると、待機していた部下達が一斉に頭を下げる。


 部下達と挨拶を交わす事無く部下達の作り出す通路を通る。


「社長~~!」


 聞きなれた声だ。

 俺達が居ない間に指示を出す、いわば司令塔だ。

【奥野 恵那】

 しっかり者で与えられた役割をきちんとこなしてくれる、優秀な幹部社員だ。


「行くわよ恵那。大仕事が待ってる」

「はい」

「恵那、デバッカーの方はどんな人だった」

「えっと...かわいい少女...でした...」


 ほう、やはりあの世界の人らしい。

 まぁ知っていたけど...。


 外部の人間が見たらこの光景をどう思うのだろうか...普通じゃない事は間違いない。


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