第22話 田植えが普通じゃない!
5月中旬。地域によっては田植えの時期だ。
裏山は所有しているが、田んぼは所有していない、なので我が家に田植え作業は訪れない。はずだった...。
だが、どういう訳か俺は作業着を着て学校の子供達と共に嫁の説明を聞いている。
学校行事で田植えを行うらしい。やりたければやればいい、何故巻き込まれた...。
嫁の説明は一般的な田植え作業の説明だ。
子供達は手作業で植え俺は機械を使って植える。
流石の俺も、嫁の頼みとは言え手作業でやるつもりはない、現代には優れた機械があるのだから。わざわざハイテクなこの時代にアナログな方法でやる必要はない。
機械で田植えを始めてから3時間ほど経過しようやく一つ目の田んぼが終わった。
10のエリアに区分けされた田んぼの2割を俺が機械を使って一人で植える。そして3割を子供達と教員で植える、教員って言っても野口さんとその旦那さんだけだが...そして残る5割は...嫁が一人で植えると豪語している。
まぁやれるというならやれるのだろう。
さらに時間が経過した所で野口さんがこちらのエリアに向かって来るのが見えてくる。
大きく手を振りこちらを呼ぶので俺も機械のエンジンを止める。
「お疲れ様でーす。そろそろ休憩にしましょ~」
「あっお疲れ様です。さすがにしんどいですね」
ははは、苦笑いを浮かべる。
しんどいのは事実だ、機械を使ってるとはいえ疲れるものは疲れる。
「そうですね...ですが、綾香先輩が農家の人に頼んでくれなかったらこんな体験授業経験できませんでしたからね!流石先輩です...子供達にも良い経験になるでしょう」
「ははは...それもそうですね...はぁ...」
巻き込まれるこっちの身にもなってほしい...懇親会で渡された膨大なデータの確認作業もあるのだから...。
「これ差し入れです」
「あっどうも、ありがとうございます」
みんなで昼食を食べる。
楽しそうに遠足気分で食べる子供達の横で大人たちも食事をする。
野口さんの旦那さんはガタイが良い、きっとこんな田植え作業でも楽しんで行えるのだろう。
それに比べ...俺は一人で坦々と機械を操縦し....なんでおればっかり...。
昼食を食べ終えたら午後の作業再開だ。
そして夕暮れ。
ようやく与えられたエリアに苗を植える作業が終了した。
「おつかれ。どう?いい運動になったんじゃない」
「なってない、仕事に支障が出そうだ...」
「もう情けないわね」
「で、そっちは終わったのか?」
「いや、まだ手を付けてないけど」
固まる俺。
既に日は傾いている、残されたエリアは5つ、丸1日かけて5つ...嘘だろ...。
「野口先生!学校への子供達の引率お願いしてもいいでしょうか」
「はい!任せてください!」
嫁が迅速に指示を出し、野口先生が嬉しそうに受ける。
「あと、この田植え機を農家の人に返して欲しいんですが...」
「それは自分がやりましょう」
意気揚々と野口さんの旦那さんが我こそはと名乗り出た。
皆の姿が見えなくなった後、嫁は植える予定の苗を1か所に集め手を翳す。
「いい?見ててね?」
「はいはい」
何をしてるんだ...と見ていると、苗達が浮き上がり各田んぼに等間隔で並べられていく。
それなんていうチート?
俺の人生に重大なバグが発生している。わずか数秒で5つのエリアは終了した。
最初からそれでやれよ...。
こんなすぐに終わるのに...子供と俺、特に俺に重労働をさせるなんてどう考えたって普通じゃない!!
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