第10話 神人の親は普通じゃない?

 隣の部屋で子供達は遊び、保護者は保護者同士で暢気に話し合う。


【神人】これはその話し合いで出てきた単語だ。

 どうやらキーラさんは【半神半人】らしいその身に神を宿しているらしいが...異世界出身ならなんでもありなのだろう、あまり触れないでおく。

 子供達は完全に【神人】らしく生まれながらに他人の思考が読めてしまうらしい。

 神の前で人は隠し事すら出来ないのだ。


 それが不安の種でもあるらしい、これから魔法学院に通うらしく、そこで奇異の目に晒されないかが心配だそうだ。

 なんとなく大丈夫そうな気がしなくもないが、子供とは時に残酷なのだ、傷つける意図は無くとも相手の心に傷を負わせてしまうことだってある。


 心を読んでしまうのなら、その傾向はさらに増えてしまうだろう。

 神人といえど子供は子供...きっとキーラさんはそこが心配で今日ここに来ることにしたのだろう...。


 改めて子供達に視線を戻す。

 学校に行かせるのに不安が無い訳ではない、都会から田舎への転校、ここが余所者は悪、という考えの場所の場合、最悪戻るのも視野に入れている。そうではないと信じているが...。


 1、2、3、4、5....ん?5?あぁ...守り神の子も参加してるのか。

 なんて微笑ましく見てしまったが...俺も普通じゃなくなっているのかもしれない。


「兄様は大丈夫だって言ってくれてるんですけどね...」


 辛そうに笑みを見せるキーラさんに胸が痛くなる。

 子供の悩みは神であろうと同じなのだ。


 それからしばらくの間俺たちは子供の事について話し合った。


「そろそろ入学式に向かわなきゃ」

「はい、今日は突然失礼しました」


 子供達も仲良くなったのか別れるのが寂しのか名残惜しそうにしている。仲良くなれたようで何よりだ。


 どうせまた会えるのだから。


 それに子供達には今日新たな出会いが待っているのだから。

 別れを悲しむ必要はない。その場から一瞬で居なくなる三人を見送る。多分空に消えた訳じゃない、だけど俺たちは青い空を眺めていた。


 神も...俺らと同じ普通の親だった。

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