第8話 近所の人が普通じゃない??

 引っ越し完了から2日後、一通り家の用事も終わったので、ご近所さんへの挨拶回りに行こうと思う。ご近所と言っても歩いて10分は掛る距離だが...。


 コンクリートで舗装されているが、その両サイドは草が生い茂っている。

 左は森、右には田んぼがある、田舎では極々自然な景色だが、都会育ちの子供達にとっては興味を引くものばかりだ、まずは無人販売。

 都内ではまず見掛ける事が無いが、田舎は別だ。けっこうある。


 そして次に娘達の気を引いたのは...鹿に注意。と書いてある看板だ。

 看板と言うか...その横を堂々と歩く大鹿にと言うか...。


 意外とここの鹿は人に慣れているのか、それとも嫁を恐れてなのかこちらに危害を加える事無く森に戻っていった。


 そんなこんなで歩く事20分。

 寄り道のせいで倍の時間が掛ってしまったが無事到着だ。


 田舎の雰囲気とは変わり意外と近代的な家が建っている。

 試しにインターホンを押してみると中から可愛らし声が聞こえてくる。


「ごめんくださーい」

「はーい」


 少し待つと玄関が開かれ少女が顔を見せる。


「えっと~どちらさまでしょうか?」

「えっと、近所に引っ越して来た佐藤っていいます」

「よろしくね、えっと...野口さん」


 嫁の登場により、少女は多少の落ち着きを見せる。まぁ確かにおっさんが一人で家を訪ねてくるとか...嫌だよな...。

 多少心に傷を負ったが、嫁は交渉のプロであり接客のプロ。少女の心を開くなんて児戯にも等しい。


「マイちゃんとユイちゃん...カイくんですね!覚えました!」

「よろしくね美奈華ちゃん」


 野口美奈華。14歳。

 年齢よりもずっと大人っぽく感じさらに、優しくてしっかりとしてそうな雰囲気だ。


「でも残念だな~せっかく近所なのに小学校と中学校じゃ学校違うもんね...」

「大丈夫ですよ、うちは小、中同じなので」

「え...そうなの?!」


 あぁ....全校生徒って小中含めて5人だったんだ...

 つまりその中の一人がこの美奈華ちゃんってことか...


 覚えるのが簡単そうで助かる。

 職場でも人の名前を覚えるのは得意では無かった、特に営業先の名前なんて覚えられた試しがない、いつも嫁に任せきりだった...そこに関してはこの田舎は最高だ。

 親の名前が覚えられなくても、○○君のお父さんや○○ちゃんのお母さんなどでごまかせるからだ。

 グッジョブ!田舎!


 近所の人は普通...だった

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