第20話 塩スキル

「えっ先輩、塩出せるようになったんすか」


「いや……なんというか……たぶんそう」


「おー、見せてくださいよ」


「いや、今は無理だ」


「なんでっすか?」


「農地でしか使えないらしいし……このスキルは危険すぎる」


「いや塩っすよね?」


「塩だ」


「危険なんすか?」


「ああ、危険すぎる」


「もう一度訊きますけど、塩ですよね?」


「そうだ」


「……いやなんかむっちゃ気になるんすけど。今すぐ使える場所行きましょうよ」


「いいぜ。戻ってきてすぐだけどちょっと街の外行くか」


「はいっす」


そうして、俺たちは街から少し離れた森へとやってきた。


「先輩、そろそろいいんじゃないっすか?」


「おう、この辺でいいか。適用範囲を周囲に影響を与えない程度に小さくしてと……」


「ごくり……」


「スキル発動」


そう言うと、俺の手から塩がこぼれ出し、地面に小さな山を作った。


「ペロ……いや塩じゃないっすか。どこが危ないんすかこれの」


「このスキルの名は『カルタゴ農法』。農地に塩を撒いて雑草ばかりか作物も育たなくする禁断の農法だ」


「それローマがカルタゴを滅ぼして、カルタゴが再起できないように農地に塩撒いたやつっすよね?」


「おう、いやうん、詳しいね朝倉」


「だったらカルタゴ農法じゃなくてローマ農法じゃないっすかね」


「うん、そうかもな、うん」


「カルタゴが塩撒いたわけじゃないから風評被害だと思うんすよね」


「まぁそうなんだけどな、手から塩が出てくることの前には些事だと思うんだよな、うん」


「でも先輩手から水出てくるじゃないですか」


「おう、もう農民辞めて大道芸人にでもなるかな」


「怪しげな宗教でも創設したらいいんじゃないっすかね。奇跡の水とか奇跡の塩とかいって売り出しましょうよ」


「大道芸人やるなら人気は必要だろうけども、そういう偶像崇拝的な人気は求めてないんだわ」


「そのうち手からパンとかワインとか出てきそうっすね」


「ただの農民として平穏な暮らしをさせて欲しいぜ……」


「それで先輩、この塩どうするんすか?売ります?」


「いや……まずは様子見。なんか税金とかかけられてたり取引に制限かかってたりすると問題だから」


「ふむーそんな事ありますかね」


「調査して問題なかったら売ろうぜ」


「そっすね。じゃあそうと決まったらバーベキューしましょうよ先輩。アタシ肉持ってきましたよ待ちきれなくて」


「いつの間に買ってんのお前。でもこれで塩の効いたまともな肉が食えるな」


「着々と文化と文明を取り戻してますね」


「おう、まだまだ先は長いがな」

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