第16話 薬草

「先輩、そろそろ目的地に着く頃ですけど」


「んー、まぁこの辺でいいか」


「それで、何するんすか?まだ全然依頼の薬草見つけてないっすけど」


「おう、まずは冒険者ギルドで買ってきたこの薬草あんだろ」


「はい」


「これを……」


「ごくり……」


「植える」


「へ?」


「そして水をやる、『水やり』発動!」


「…………」


「ふぅ~~~、いい汗かいたなぁ、今日も爽やかに労働しちまったぜ」


「いや先輩なに働いたつもりになってんですか……薬草一本植えただけじゃないっすか」


「おう」


「いや、おう、じゃないですってなんでちょっと満足気なんですか」


「いやな、これが今回やりたかった事なんだっての」


「こんな事したかったんすか?」


「こんな事とか言うなよ……この前この森でさまよってた時に木植えたろ」


「はい」


「翌朝起きたらなんかむっちゃ育ってたじゃん、アレが実際どうなのか試そうと思ってよ」


「ああ……先輩の農民スキルのせいかどうかって事っすね」


「そういうこった。今回なんか翌朝起きたら一面薬草まみれになってたりしてな」


「あーあ、先輩、そういう事いって本当になっても知らないっすよ」


「まぁそんなわけで、もう今回の目的の半分以上は終わっちまった事になる」


「へー……あっ、じゃあ農民スキルが不発だったときに備えて薬草探しでもます?」


「あー、まぁそうだな、やることも特にないし探索するか」


「了解っす!」


そうして、俺たちはその場を離れてしばらく薬草を探して辺りを探索したのだった。


「いやー、けっこうあったっすね薬草」


「おう、意外と見つかったな。つっても片手で持てる程度だが」


「それでもこの短期間でこんだけ見つかれば上出来ですって」


「そうかもな」


「あっ、先輩、あそこなんかむっちゃ薬草生えてますよ!群生地っすかね!ラッキーです!」


「…………」


「どうしたんです?」


「いや……あれ俺が植えたやつじゃね?って思ってよ」


「へっ?いやいや……そんなわけ……ありそう……っすね!」


「絶対そうだよなんか出発前に目印に刺しといた木の枝あるしよ」


「めっちゃ薬草生えてますけど」


「抜くのめんどくさ……」


「いやそこは収穫スキルあるじゃないっすか先輩」


「ああ……」


「テンション低いっすねなんか」


「いやなんか思ったより異常な育ち方しててちょっとドン引きしてるわ」


「そのへん適当に歩いて戻ってきたら、うじゃあっ、ですもんね」


「……『収穫』」


「おおっ、綺麗さっぱりなくなりましたね」


「…………」


「一晩かからなかったっすねー」


「おう、もうやる事なくなっちゃったよ今回」


「帰ります?」


「いや、なんかあんだけの量こんな短時間で持って帰ったら不審に思われるんじゃねーか?」


「うーん、そうかもですね」


「まぁ何も悪いことしてるわけじゃねーけどよ、俺らよそ者だし、まだ変な目立ち方したくねーんだが」


「それはそうっすね」


「せめてもうちょっと時間潰してから帰ろうぜ」


「あ、そうだ、先輩、また薬草植えます?」


「え……」


「無限に植えて無限に育てましょうよ」


「悪目立ちしたくないつってんじゃん。それにそんなに一気に持ち込んでも価格が下がるだけだろ」


「あー」


「あんまり供給ばっか増やしても需要が追い付かなきゃ損するだけだぞ」


「じゃあ薬草が大量に必要になるように怪我人増やしましょうか」


「なんでお前も時々サイコパスみたいな提案してくんの?ほかに売れそうな商品さがせばいいだろ」


「その発想はなかったっす」


「その発想ちゃんと持っててくんね?まぁそんなわけだから、次にやりたいことは市場調査とかだな」


「了解っす。薬草以外にも売れる物あるかもしれませんしね」


「そういうこった」


「香辛料とか果物とか、売れそうな物が見つかるといいっすね先輩」


「まぁな。今日の実験結果で出来そうなことが増えたのは良かったな」


「そうっすね」


「今日はこれで十分だな。あとは適当に休もうぜ」


「了解っす」


そうして、俺たちは夜を明かした。

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