第2話 似顔絵捜査官高瀬の事件簿 1


「眉毛は薄かったですね」


分かりました。


「もっとエラが張っていたような気が」


はい。


「あれ?鼻筋は通ってましたって言いませんでしたっけ」


はい…。


「あ!だから、眉毛もっと薄いですって!」


あぁ…すいません。


「あ…、こちらこそすいません。なんか、似顔絵が僕に似てる気がしてしまって…」








今から1時間前、俺が勤務する警察署に突然ソイツはやってきた。


「おい聞いたか?今、連続殺人事件の情報を持っているってやつが署に来たみたいだぞ?」



情報を持っているという電話は今日だけで100件以上。


その殆どが役に立たない嘘情報ばかり。


捜査協力金に目が眩んで連絡をしてくるバカどもばかりだ。


有力な情報は一向に入ってこない。


時間は無駄に過ぎていく一方だ。


その矢先に事件の情報って。


また今回もどうせ役に立たない話だろう。



「高瀬さん内線です!今来てる男性、犯人の顔を見たって言ってます!」



俺は耳を疑った。


犯人の顔を見た、だと?



自分で言うのもなんだか、俺は署内でも腕利きと評判の似顔絵捜査官だ。


それが本当の話ならば、事件解決の糸口が見つかるかもしれない。


俺は仕事道具を手にして、男の待つ受付へ向かった。

血が騒ぐ。



「こんにちは」



今まで酷い遺体を顔を歪めた事は何度かあった。ただ、生きてる人間様相手に慄いたのは今回が初めだ。


男の顔が異常に濃い。まさに特徴の塊。



色黒で艶やかな肌。

太くフサフサの眉毛。

眉毛の間にある大きな黒子。

綺麗な二重に長い睫系。

丸く大きな瞳

鼻筋は太く鼻頭は丸く大きい。

くっきりと浮き出た豊麗線。

分厚く太い唇。

ど真ん中で割れている顎。



『一度見たら忘れない顔』この言葉はこの男のために生まれてきたと言っても過言じゃない。



いやいや、落ち着け俺。情報を聞いて描くんだ!



「では早速描きますね」




◇ ◇ ◇




ダメだ。描こうすればするほど、コイツの顔に引っ張られていく。


「はぁ………もういいです。僕、帰ります」


「申し訳ありません」



男は肩を落として帰っていった。


俺は頭を下げた。今日はダメだ…。






『特報です!先程警察より当テレビ局に情報が入りました。

連続殺人犯の特徴ついてです。



特徴は…


色黒で艶やかな肌。

太くフサフサの眉毛。

眉毛の間にある大きな黒子。

綺麗な二重に長い睫系。

丸く大きな瞳

鼻筋は太く鼻頭は丸く大きい。

くっきりと浮き出た豊麗線。

分厚く太い唇。

ど真ん中で割れている顎。

以上です。


皆さまの周りでこんな男性がいましたら、以下の番号へご連絡ください』

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