彼女の疑問

ある日の午後。彼女がカップケーキを持って僕に会いに来た。学校の調理実習で作ったらしい。彼女が作ったカップケーキは、狐色でチョコチップがまぶしてあり、食べるとほんのり甘くてふわっとした食感だった。おいしい…。僕はそう思いながらカップケーキを食べていた。すると彼女が突然こんなことを聞いてきた。

「零はさぁ…。学校に行ってるの…?」

「ゴフッ…。」

僕は彼女の質問にびっくりして、カップケーキを喉に詰めてしまった。何で急にそんな質問を…?

「ごっ…。ごめん。いや、だって…。零いつも私が来る時間帯にいるでしょう。この家にだって毎回来ているのに、零のお父さんとお母さん見たことなかったから…。不思議だったの。」

彼女は申し訳なさそうに言うと、僕の目をジッと見つめてきた。僕はその目を見ると嘘がつけない気がしてボソリと話し出した。

「…。父さんと母さんはいない。数年前に亡くなった。僕は周りの人から嫌われているから、他の人が僕の面倒を見たくない。って言って、この家に一人で住んでいる。さすがにまだ子供だから、一週間に一回、この家の門の前に食料が入った箱が置かれている。それで、何とか生活している。…学校には行っていない。僕は嫌われているから学校になんて行けない。」

僕は話している間にどんどん自分がうつむいて話しているのを感じた。彼女は僕のことを嫌いになるのかな…。それが怖くて顔を上げられなかった。別に僕は一人でも構わなかった。だけど彼女と出会ってから、彼女には嫌われたくなかった。一人でいるのが怖くなった。

別に僕を嫌っている人たちは憎んではいない。みんなが僕を嫌いになるのは、当たり前だ。だって僕は、犯罪者の子供なんだから…。

「…そうだったんだ。話してくれてありがとう。そうだ!私が零のご飯を作ってあげるよ。私、料理は得意なんだ。」

彼女は悲しい顔から一転、明るい笑顔で僕に提案してきた。彼女に二度と来ないって言われたらどうしよう…。と思っていたが、また来てくれるのがわかって安堵した。あぁ…。本当に彼女は僕を救ってくれる。彼女は僕が君の明るさに救われているのに気づいていない。でも、僕の心は確かに彼女に救われている。

「うん…。ありがとう。」

僕はとても嬉しくて、彼女にお礼を言った。彼女もまた、どういたしまして。と笑顔で僕に言った。

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