第15話 サークルの懇親会



 私の夫レモンが小学生を連れ込んで、如何わしい事をしていたので問い詰めたらイリスちゃんのお友達だって言うじゃない?


 きっと、イリスちゃんをだしにして連れ込んだに違いないわ!


 アイナちゃんだっけ?


 レモンは、アイナちゃんの頭をナデナデしていたのよ?それもアイナちゃんは気持ちよさそうにしていたし、私だってあんなにナデナデされたことないのに!


 それに、イリスちゃんがいつも家にいるので、レモンとの初夜はまだ経験していない。


 レモンはヘタレなので、恋人から始めようなんて可愛い事を言ってくれた。


 確かにレモンとデートとかもっとしてみたいし、恋人らしい事をもっとしたい。


 戸籍上は入籍しているので、私とレモンは夫婦の関係だ。


 もう焦ることは無いし、レモンのしたいようにしてあげたいと思う。


 恋人らしい事をする前に離婚なんて嫌だからね?


 だから、レモンと大学に通っている間が私達の恋人としての空間だった。



◇◇



「え?サークルの懇親会?」


「ああ、夕切お前幽霊部員だろ?懇親会ぐらい出てくれないか?」


「悪いな。バイトが忙しくて、サークル活動する余裕は無いんだ」


「相変わらず付き合い悪いよな?そんなんじゃ彼女なんて出来ないぜ?」


 こいつの名は、市原雄二。大学で知り合ったサークル仲間だ。イケメンでは無いし非モテ仲間として意気投合して、出会いを求めて同じサークルに入った経緯がある。


 ただ、俺はバイトがあるのでサークルには顔を出していない。いわゆる幽霊部員だった。


「いや、俺には彼女がいるからな」


「は?……なん……だと?」


 実際は彼女じゃ無いんだけど、大学では結婚している事をあまり知られたくない。


「嘘だよな?嘘と言ってくれぇぇぇ!!」


「……嘘」


「だよなぁ!嘘だと思ったんだよ!じゃ待ち合わせはココな!絶対に来いよ!」


 市原は、紙切れを俺に渡すと去っていった。


 さて、どうしよう?言われたとおりに嘘と言ってやったが……。


 そして大学の帰り、俺は花梨ちゃんにバイトに行くからと言ってイリスの事を頼んで、待ち合わせの場所に足を運んだ。


 そこは、居酒屋だった。


「俺市原雄二!君たち女子大だよね?名前教えてくれる?」


 おいおい。懇親会って合コンじゃねーか!?

 俺は既婚者だぞ?秘密だけど……。


「私は野原早苗看護科三年よ?」

「私は、埼玉光じゃん?……早苗と同じ三年じゃん?」

「どうも……私は一年の白川好美……です。未成年なのでお酒はダメです」


 女子の挨拶が終わったら俺達の番だ。


 俺も自己紹介するのか?


「こっちが、山田で、こいつが夕切」


 って、挨拶飛ばすのか?


「どうも山田です」


 俺は適当に自己紹介して嫌われて帰ろうと思った。


「俺は、夕切レモン!人は俺の事をレイモンドと呼ぶ。異世界帰りの勇者さ」


 決まった。これで俺は、中二病の痛いやつ確定。さよなら見目麗しい美少女よ。


「…………」


 思惑通り滑ったか?


「あはははは!面白ーい!レモン君とか覚えやすくて好感度高いよ君!」


「プクク……夕切りってどんな切り方じゃん?クシ切り、輪切りに次ぐ新しい切り方教えて欲しいじゃん??」


「勇者様…………まさか、また……お会い出来るとは思いませんでした」


 滑ってねぇぇぇぇぇ!!!!!


「かぁ!まさか、夕切に全部持ってかれた!?なぁなぁ俺も見てくれよぉ……」


 ん?ちょっと待て……。


 一人だけ俺の事を勇者様と呼んでいたんだが?白川好美?誰だ?


「ホワイトリバー!ラブミーチェンジャー!」


「ああああああああ!!」


 俺は立ち上がって、白川好美を指さした。


「久しぶり、レイモンド」


 その必殺技は覚えている。そいつを使うのは、俺の勇者パーティの仲間の一人。


「……ホワイティなのか?」


「ええ、サナとヒカルもいるけど、残念ながら記憶が失われていたわ」


 ホワイティはそう言うと、野原早苗と埼玉光の方を見つめていた。


 え?こっちの二人もサナとヒカルなのか?確かに顔は似ていると思ったけど?


「えぇ?何なに?知り合い?知り合いだった?このこのぉ!」



 それから、俺達は連絡先を交換し合った。でも。ホワイティ達に俺が魔王と暮らしている事を知られてままずい。


 サナとヒカルとホワイティは、魔王との最後の戦いにまで付いて来てくれた、大切な仲間だった。

 

 俺はこっちの世界に帰る気だったから、最後まで俺はこいつらに手を出さなかったけどな?


「それで、れいもんろったらひろいんれすぅ……わらしに手をらしてくれらいし……らいてもくれらいんれす……へたれれす……」


 ……誰だ?未成年に酒を飲ませたのは?


「ホワイティ?いや、白川さん?飲みすぎだよ……」


「れいもんろ?しゅき♡」


 だめだ、もう帰らせよう。ホワイティは、俺に抱き着いてきた。


「あの……俺、白川さんを送って帰ります」


「ええ……いいよ?でも送り狼は、ダメだぞ?」

「この二人、お似合いじゃん?」


「夕切ぃ!裏切者ぉ!お持ち帰りかよ!?くっそぅ!」


 そして俺は、ホワイティ……白川さんに肩を貸して、居酒屋を出た。


 あ、俺……白川さんの家知らないや……。


 かといって、ホテルに連れ込むのはまずい。


 いや、連れ込みたい気持ちが無い訳ではない。


 俺だって男だ、ホワイティの事は好きだったし、手を出さなかった事に後悔もしていた。


 だが、俺にはすでに嫁が二人いるので、浮気する訳にはいかない。


 ん?俺、何か矛盾する事を言ってないか?


「仕方ないか……」


 俺は白川さんが住所の分かる物を持っていないか調べようと思ったが、一人暮らしだったら?もし女子寮に入っていたら?だめだ……住所が特定できない。


 仕方が無いので、俺はホワイティを家にお持ち帰りする事に決めた。


 嫁には怒られるだろうが、ホテルに連れ込むよりかはマシだと思いたい。


「あの部屋に四人は狭いよなぁ……」


 でも俺は、花梨ちゃんにバイトに行くって言っていたことを忘れていたんだ。







読者様へ


ここまでお読みいただきありがとうございます。

レビュー☆☆☆にコメント、応援♡を頂けたらとても嬉しいです。


こちらは暇な時にゆっくり投稿予定です。 まったり進みます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る