第4話 魔王イリスティラ


 我は魔王イリスティラ。


 我は日頃から引退を考えておった。

 我の夢は、我より強いものと結婚してお嫁さんになる事。


 なのに……魔王城には、来るもの来るもの弱い者ばかりじゃった。


 どこかに我を倒せるほどの強者はいないものか……。

 魔王城での暮らしは退屈そのものじゃった。


 何故ずっと椅子に座ってなければならないのじゃ!?


 イスの座り心地も固くて最悪じゃった。


 だれか私を娶って後継者になってはくれぬかのう。

 

 そんな時じゃった。我の前に勇者が現れたのは。

 さあ!我を倒してみよ!


 我を倒す事が出来たなら、我の後継者として、魔王になって貰うのじゃ!


 ……そして我は負けたのじゃ完敗じゃ。


「まさか……この魔王が敗れるなど……ぬおおおおおおおおお!!!」


 おおおおおおお!我は!お、お嫁さんになるのじゃあ!!


「勇者よ……この……責任は取って貰うぞ……」


 そうじゃ!責任取って我をお嫁さんにするのじゃ!


「何を言う、お前を倒したら俺は元の世界に帰るんだ!」


 ちょ!待つのじゃ!帰られたら結婚できないのじゃ!こうなれば、ついて行くしかないのじゃ!我の最後の力を使って!逃がさぬのじゃ!お主は我の旦那様なのじゃあああ!


「よかろう……首を洗って……待っておるがよい……ぐは!ぐあぁぁぁぁ!!」


 絶対に!その首に!キスマーク付けてやるのじゃ!待っておれレイモンド!


 そして、我はレイモンドを追ってこの世界へとやって来たのじゃ。


 今まで威厳を出すためにしていた魔王のコスプレともおさらばじゃ。


 レイモンドは我の事など覚えておらんじゃろうが、我の魂にはレイモンドと戦った記憶が刻まれておる。どこへ逃げようとも追いかけて責任を取らせてやるのじゃ。


 我はレイモンドの家を匂いで突き止めてレイモンドの帰りを待ったのじゃ。


 じゃが……力を使い過ぎた我は……体が縮んでしまったのじゃ。これではお嫁さんになれんではないか……。


 それに……腹が減って力が出ないのじゃ。


 不貞腐れた我は、力の使い過ぎで疲れたのもあり、そのまま眠りについたのじゃ。



◇◇



 レイモンドは、魔王である我を受け入れてくれたのじゃ。流石は我の見込んだ勇者レイモンドじゃ。レイモンドは既に行くところも無い我には優しかったのじゃ。


 それに、一緒にバイトとやらにも採用されて、生活の基盤はなんとかなりそうじゃ。

 そして、今日は遂にレイモンドと、「でえと」なのじゃ!


 なんか服を買ってくれるというのじゃが、我はこのレイモンドの服が気に入っておるのじゃ♡ レイモンドの匂いがして好きなのじゃ♡


 レイモンドと手を繋いで、でえとしていると心が温まるのじゃ。


 なんかかわいい服がいっぱい置いてある場所でレイモンドは、我の服を一生懸命探してくれている。幸せってこういう物なのじゃろうか?


 その時、我の幸せを邪魔する女が現れたのじゃ。


「あら、可愛い子ね?」


「我は、今日は……レモンとデートなのじゃ!」


「ええ?そうなの?良かったわねぇ」


 レイモンドのこの世界での真名はレモンと聞いておった。じゃからレモンと呼んで、我のレイモンドであることを目の前の女に知らしめてやったのじゃ。


そうじゃ。ふふん!我はレイモンドとデート中なのじゃ!


 このカリンと名乗った女は、レイモンドとくっ付き過ぎなのじゃ!

 ぬおお!今!キスしようとせんかったか!?


「それじゃ服を買いましょうか?」


「おー!」


 よし、我が可愛い服を着てレイモンドを悩殺してやるのじゃ!!

 待っておれ!レイモンド。


「ところで……その子のお名前は?」


 そうじゃった、我の名前を知らしめてやらねばなるまい。驚くでないぞ?


「我は、魔王イリスティラじゃ」


「いや、違います!こいつはそう、イリスっていうんです!」


「我は、まぁイリスっていうんじゃて言ったんだよな?な?」


 レイモンド?そんな事は、言っておらんぞ?


「イリスちゃん?いい名前ねぇ」


「むぅ……」


 我の名前を短くしよって……。でもレイモンドがそう呼んでくれるならば……。


 イリスと呼ばれるのも悪くないのじゃ。


 その後は色々と着せられたのじゃが、どうやらお金というものが足りないらしい。


 我は。レイモンドのワイシャツとやらが気にいったので、このままでよいのじゃが……。


 そういえばレイモンドはお金とやらが無くてバイトを始めておったな。


 ならば我がもっと働いて、レイモンドを養ってやらねばならぬか?まったく世話のやけるやつじゃのう。


 

「うーん、それなら私のお古で良かったらあげるわよ?」


 カリンという女が服をくれると言うので。ならば我に献上させても良いかと思ったのじゃ。


「え!?いいの?」

「うん!それじゃ、うちに行きましょう?」


 ならば、案内するが良い。カリンはいいやつなのじゃ。


「おー!」


 こうして、我はレイモンドと手を繋いで、カリンという女の家でデートする事になったのじゃ。






読者様へ

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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こちらは暇な時にゆっくり投稿予定です。 まったり進みます。

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