第3話 魔王とデートする。


 今日はバイトも無く大学の授業も無いので家でゆっくりする予定だった。


「のう……レイモンド?」

「何だ?」

「……暇じゃ」


「奇遇だな、俺も暇だぞ?」


「……でぇとに行かぬか?」


 俺はレモンだ。レイモンドではない。


「のう……ぇえじゃろぅ?」


 なんで俺が魔王とデートしなければならないんだ?しかもお前は幼女だぞ!?


 魔王は、上目遣いで目をウルウルさせながら俺を誘ってくる。

 幼女の体型なのでどうしても可愛く見えてしまうのだ。


「ああ、もう!分かった!」 


 イリスティラには、俺の大きなワイシャツを着せたままなので、子供服を買いに行くことにした。


 俺はイリスティラを連れて、近くのショッピングモールへ向かった。

 イリスティラは、見た目幼女なので、迷子にならないように手を繋いでいる。


「どこにいくのじゃ?」

「お前の服。そのままじゃ社会的にまずいんだよ」


 いつまでも、ワイシャツでは、世間体的にまずいだろう。


 ショッピングモールの子供服売り場でイリスティラに似合う服を探していたら、見知った人に声を掛けられた。


「あら、レモン君?」


 山家花梨やまやかりんちゃん。俺の大学の同級生で、肩まで伸ばしたストレートの黒髪が綺麗で、俺の憧れの人だ。今日の花梨ちゃんは、ノースリーブの水色の可愛い服を着ていてとても綺麗で似合っていた。


「花梨ちゃん……こんにちわ」

「ええ……こんにちわ。今日は買い物?」


「まぁ……そんなトコです。こいつの服を買いに来たんですよ」


「あら、可愛い子ね?」

「我は、今日は……レモンとデートなのじゃ!」

「ええ?そうなの?良かったわねぇ」


何故か、イリスティラは小さな胸を張っていた。


「いや!違うから!こいつは親戚の子で、預かってて!」


 こいつ!今日に限ってなんでレモンって呼ぶんだ?


「何そんなに慌ててるの?服を買いに来たんでしょ?私も一緒に選んであげるわ」


「あ、ありがとう。花梨ちゃん」


「レモン君……その花梨ちゃんって子供みたいで恥ずかしいから……花梨って呼んで?」


「え?いいの?」


「私が良いって言ってんだから、いいのよ?」


「じゃあ……花梨よろしくたのむ」


「ええ、レモンよろしくね?」


 花梨ちゃんは俺の顔に自分の顔を近づけて来て、キスするかのようにして来たので、一瞬ドキっとさせられてしまった。


 ちょっと心臓に悪い。


「それじゃ服を買いましょうか?」


「おー!」


「ところで……その子のお名前は?」


「我は、魔王イリスティラじゃ」


 って、何言ってんの!?


「いや、違います!こいつはそう、イリスっていうんです!」


「我は、まぁイリスっていうんじゃて言ったんだよな?な?」


「イリスちゃん?いい名前ねぇ」


「むぅ……」


 イリスティラは不満そうな顔をしているが、魔王なんて言っても信じないし、名前が長すぎる。

 

 そして俺たちはイリスティラ改め、イリスの子供服を選んで購入する事にした。


「これなんか似合いそう」


 花梨ちゃんが手に取ったのは、ピンクのヒラヒラの付いたワンピースだった。


「うん、可愛いんじゃないか?」


 げ!俺は値段を見てびっくりした。子供服ってこんなにするのか?生活費が足りなくてバイトを始めたのに……買える訳がない。

 

「すまん……金が足りない」


 迂闊だった……。


「あら、そっか学生だものね……」


「むぅ……我はこのワイシャツで良いぞ?」


 いや、俺的にはいいんだが、そのままでは俺の社会的モラルが駄目になるんだ。


「うーん、それなら私のお古で良かったらあげるわよ?」


「え!?いいの?」


 ここに神がいた。


「うん!それじゃ、うちに行きましょう?」


 え?うちに行きましょう?


「おー!」


「ちょっと!?」


 え!?花梨ちゃんのうちに行っていいの?


 思いがけない事に、俺とイリスティラは花梨ちゃんの家に招待される事になったのだった。





読者様へ

ここまでお読みいただきありがとうございます。

レビュー☆☆☆にコメント、応援♡を頂けたらとても嬉しいです。


こちらは暇な時にゆっくり投稿予定です。 まったり進みます。

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