ハナニンジャーは静かに暮らしたい

夏川冬道

ハナニンジャーは静かに暮らしたい


桜木まなかには小さな悩みがあった。同居人のミユのことであった。ひょんなことから桜木まなかの部屋に転がり込んできたミユだったが彼女は気まぐれで時々トラブルを引き起こすのであった。

「ミユ!また私に内緒でコスメを買ってきたでしょ」

 まなかはミユが勝手にコスメを買ってきたことをとがめた!

「だってこのコスメ、可愛かったんだもん」

 ミユは頬を膨らませる。

「急に見に覚えのない宅配便が来るから困ってしまったじゃない」

 まなかは悪びれないミユを呆れた顔で見る。

「ミユ、今度からネット通販をするときは私に一言言っておいてよ」

 まなかはそう言うと夕食を作るためキッチンに向かった。


◆◆◆◆◆


 ミユがまなかの部屋に転がり込んでから半年が経過していた。早いものだな。料理を作りながらまなかはひとりごちた。

 半年前、桜木まなかはハナニンジャーとして悪の忍者組織関東邪忍党と激闘の末、ついに関東邪忍党を壊滅させた。長く苦しい闘いを終えまなかは普通の女の子として日常に戻る……はずだった。

 しかし、まなかの部屋に関東邪忍党の幹部であったミユが飛び込んできたのであった。ミユは元々関東邪忍党の棟梁に洗脳された一般人であり、ハナニンジャーとの戦いの果てに洗脳は解除されたのであった。しかし洗脳されていた期間はあまりに長くミユの実家は赤の他人の持ち家になっていた。どこにも帰るあてのないミユは最後に頼れる相手が桜木まなかだったわけだ。かくして元ヒーローと元悪の女幹部の同居生活がはじまったわけである。

 なれない二人暮らしにまなかとミユは悪戦苦闘しながらも支えあって生きていた。半年も一緒に生活すれば二人の絆も半年分強固になった。

 まなかは手慣れた手付きで料理を作っていた。関東邪忍党との激闘の日々でレトルト食品しか食べれなかった時期に比べると格段の進歩だ。これもミユのおかげたろうか。やはり一緒に食べてくれる人がいるとモチベーションが上がるのだろう。まなかの包丁を握る手は自然に力が入った。


「キャーッ! まなか!虫! 虫が出た!」

 その時! キッチンの外でミユが悲鳴を上げた!

「ミユ……虫が出たぐらいで大げさな」

「そうじゃなくて!すごく大きい虫が出たの!」

 ミユの具体的な説明を聞いてまなかは料理の手を止め新聞紙を丸めリビングに出た。そして、まなかは驚愕し丸めた新聞紙を取り落とした。

 まなかが見た虫は人間大の大きさのゴキブリだったからだ。

「あー、これは新聞紙じゃダメなやつだ」

 そう言ってまなかは自室に一旦急ぎ足で行き、DXハナニンフォーンを取り出してリビングに戻ってきた。

「まなか、早くあの虫を追い払ってよ!」

 ミユは涙目でまなかを見つめている。巨大なゴキブリは恐怖でしかない!

「ハナニンチェンジ!」

 DXハナニンフォーンのスイッチを押しまなかは一瞬でハナニンジャーに変身した。まなかは素早くヌンチャクを取り出し巨大ゴキブリに構えた!するとハナニンジャーの殺気を感じたのか巨大ゴキブリはハナニンジャーに向き直った。そして突如、ハナニンジャーに向かって突撃した!

 ハナニンジャーは冷静なヌンチャクで巨大ゴキブリを迎撃! 巨大ゴキブリは吹き飛んで痙攣した!そこにすかさずハナニンジャーは巨大ゴキブリをつかんでベランダまで持っていきマンションの敷地の外に投げ捨てた!

「まなか、虫が大きくて怖かった!」

 ミユは巨大ゴキブリを追い払って安堵したのかハナニンジャーに抱きついてわんわんと泣いた。まなかはミユを落ち着かせるためミユを優しく抱き寄せるのであった。


 しかし、なぜ巨大ゴキブリが突如桜木家のリビングに襲来したのだろうか?桜木まなかが知らないだけで知られざる悪が蠢動しているのだろうか?まなかは疑問に思ったがすぐに生活のことに切り替えた。世の中切り替えの早い人間は何かと得であるからだ。


◆◆◆◆◆


次回予告!


 桜木家を襲った巨大ゴキブリはやはり新たな悪の尖兵だった! 桜木家の平和を守るためにまなかは一路、西に向かう!

「そうだ、京都に行こう」

 次回「ハナニンジャーの新たな事情」

 ご期待ください!😀😉😉😉

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ハナニンジャーは静かに暮らしたい 夏川冬道 @orangesodafloat

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