02.ジアードの好きな人

 それからロレッタは、ジアードとセノフォンテ、それにイデアも一緒にランチをすることになった。

 イデアは一緒に食事をとるつもりはなかったようだが、ロレッタが懇願したのだ。

 男二人に囲まれてご飯だなんてとんでもない。イデアは快く承諾してくれて、セノフォンテが「ナイスだ!」となぜか大喜びしていた。

 最初は中々声が出せなくて縮こまるロレッタに、ジアードは「落ち着いて。ゆっくりでかまわないよ」と優しく微笑んでくれる。

 セノフォンテもイデアもロレッタが話そうとしたときには根気よく言葉を待ってくれて、三ヶ月が経つ頃には、三人の前でならなんとか普通に話せるようになってきた。


「ロレッタ、今日はあの二人、剣術部が休みだって言ってたし、一緒に帰る?」


 後ろの席のイデアが教科書を鞄に入れながら話しかけてくる。

 昼食はいつも一緒に食べているが、一緒に帰るなんてことはまだ未経験だ。

 ジアードとセノフォンテは剣術部に所属していて帰りが遅いし、ロレッタは家から馬車の迎えが来る。誰かと一緒に帰るなんて概念がまずなかったロレッタは、歓喜した。


「い、いいの?」

「もちろん! みんなで一緒に帰ろうよ!」

「う、嬉しい……」

「なにもう、大袈裟ねぇ」


 イデアに笑われながら隣のクラスに行くと、ジアードが級友に囲まれて楽しそうに笑っていた。

 人当たりのいいジアードは、当然だが誰からも人気のある人だ。


「ジアード、今日部活ないでしょ。一緒に帰ろ!」


 イデアが教室の扉のところから、そう声を上げた。

 ロレッタなら気を遣って一人で帰るところだ。イデアは遠慮のなさはすごいなぁといつもながら感心していると、ジアードは嬉しそうに笑った。


「ああ、帰る帰る」


 ジアードは周りに友人たちに「じゃあ」と軽く手を上げてこちらに向かってくる。


「ロレッタも一緒?」

「あ、ダメ、なら、一人で帰る、から……」

「なに言っているんだ、そんなわけないだろ。ロレッタと一緒に帰れて嬉しいよ」


 ぽんっと手を頭に乗せられていつものように微笑まれると、ロレッタの顔は勝手に緩んだ。

 ジアードのスキンシップが多いのは、誰に対してでも同じだとわかっている。が、それでも心が浮かれてしまうのは仕方ない。


「セノも一緒に帰るだろ。呼んでくるから、二人は校門で待ってていいよ」


 そういうと、ジアードは大股で歩いてあっという間に視界から消えていった。従兄弟同士の二人は生まれた時からずっと一緒にいるらしく、本当に仲がいい。

 ロレッタはイデアと二人で校門まで行くと、迎えに来ていたベルルーティの馬車の中にいる侍女に、友達と帰るからと断りを入れる。

 すると侍女は大変驚いていて「それはようございました! お嬢様、どうぞごゆっくり」と涙を流さんばかりに言われたので、少し恥ずかしくなった。


「いやー、わかってたけど、ロレッタって本当に筋金入りのお嬢様なのね〜。高位貴族の中でも、最古参なんだっけ?」


 このリオレイン王国の貴族の順位づけは、王から貴族の地位を賜った順に高いとされている。

 真実をいえば最古参なわけではないのだが、大昔から続いていた貴族は途中で家名が途絶えたり、不祥事で地位を剥奪されたりして、ベルルーティの順位が上がっただけの話だ。

 現在の高位貴族ランクでいうと、上から三番目とのことらしい。ちなみにジアードのスカルキ家は、上から十二番目という話だ。彼らの家もまた、十分に高ランクの貴族である。


「でも私は、結婚したり兄が家を継いだ時点で分家になるから……」

「それでもロレッタは高位貴族のままいられるじゃない。いいなぁ」


 そうぼやくイデアは、分家三代目だといっていたのを思い出す。

 基本的に高位貴族でいられるのは分家二代目までで、二代目が地位を返上したり剥奪されたり亡くなった時には、三代目はすぐさま下位貴族へと落ちなければなない。その際には本家の苗字は使えず、変更手続きが必要になる。

 そうして枝分かれした下位貴族は本家の駒のような形となり、決して本家に逆らうことは許されない。下位貴族は一般庶民に比べて優遇はあるものの、本家に従いたくない場合は下位貴族を返上して一般庶民に帰化することも許されている。

 その場合、下位貴族という地位とともに苗字を捨てなくてはならないが。


 高位貴族は社交会だなんだと、ロレッタにとっては嫌なイベントが目白押しだ。なんなら分家となった時にはすぐに地位を返上して一般庶民になりたいと思っているくらいだから、イデアの気持ちはあまり理解できないものだった。

 そうしてイデアと話していると、ジアードとセノフォンテがやってくる。ただ四人で歩いて帰るだけだというのに、ロレッタの胸はドキドキと鳴っていた。

 右から順にセノフォンテ、イデア、ジアードと並び、その少し斜め後ろをロレッタはついていく。

 三人はこうして帰るのも慣れているのか、楽しそうに大きな口を開けて笑っていた。話の中に中々入っていけないロレッタに、時折ジアードが伺うように顔を覗いてくれる。ロレッタは照れながらも笑顔を返した。


「ロレッタ嬢も、最近いい顔するようになったよなぁ!」


 一番向こう側からセノフォンテがそんな声をあげて、ロレッタはぴっぴと汗を飛ばしながらも微笑んだ。おそらくはぎこちない笑顔だっただろうが。


「あの、みなさんの、おかげ、です……イデアも、セノフォンテさんも、ジアードさんも、やさしい、から」

「そういや今度、本家のみのダンパがあるだろ。ジアードもロレッタ嬢も、相手は決まったのか?」


 本家のみのダンスパーティー。

 それはフランチェスター高校伝統のダンスパーティーで、社交会の練習の場だ。練習といっても、いつ王城に呼ばれても対応できるようにとかなり本格的なものではあるが。


「いや、僕はパスするつもりだ。踊るのはそれほど得意じゃないし」

「次期当主がそれで務まると思ってんのか! そんなだったら、俺が当主をもらっちまうからな!」

「あげられるものならあげたいよ」


 ジアードは困ったようにハハと力なく笑い、セノフォンテはぷんすかと怒っている。

 ロレッタはジアードが出席しないことを聞いて、ホッとしたような、残念なような、複雑な気持ちだ。


「ロレッタはどうするの?」

「わ、私は……去年も辞退、したので……」

「えー、もったいない。私なら喜んで出るのになぁ!」

「お前みたいなじゃじゃ馬には無理だ」

「なんですってー、セノー!!」


 イデアを怒らせたセノフォンテは、楽しそうにわははと笑っている。微笑ましくその光景を見ていると、ジアードは『困ったやつだ』とでもいいたげな表情で片眉を下げていた。


「そういえば、親父さんの容体はどうなんだ? イデア」


 ジアードの言葉に、二人はぴたりと笑い声を止める。

 容体、という言葉にロレッタは目を見開いた。イデアの父親の体調が良くなさそうなことは漏れ聞いていたが、そんなに深刻な事態だとは思ってもいなかったのだ。

 その疑問を受けたイデアは、悲しそうに眉を垂れ下げた。


「あは、もういよいよかなって感じするよね……みんなとこうして高校に通えるのも、もう少しの間だけかも……」


 フランチェスター高校は、高位貴族のための学校だ。下位貴族落ちすればこの学校には通えない。

 イデアは明るく振る舞おうとしているが、その寂しさは隠し切れておらず、ロレッタは胸を痛めた。おそらくは、ジアードたちも。


「イデア……俺と結婚するか?」


 そういったのは、セノフォンテの方。

 彼の日頃の態度からイデアが好きなのではと思っていたが、いきなり結婚という言葉を出すとは思っていなかった。他人事だというのに、なぜかロレッタの方がドキドキしてしまう。

 実際にその言葉を受けたイデアは、少し顔を赤らめてセノフォンテを見上げていた。


「冗談、でしょ……?」

「いいや、本気だ。いい方が悪かったな。俺と結婚してくれ、イデア」


 ひゃあ、と声が出そうになる口を押さえて、ロレッタは二人の行方を見守ろうと思った、その時。


「結婚するなら本家の僕の方が、イデアの求める条件に合うはずだ」


 突如としてジアードが参戦した。

 うそ、とロレッタは絶望的な気持ちでジアードを見上げる。

 いつもの柔らかく優しい顔は鳴りを潜め、真剣な眼差しがイデアを貫いていた。

 二人から求婚を受けたイデアは、驚きで倒れそうな顔をしている。ロレッタも別の意味で倒れそうだったが。


「え、どうしたの二人とも、いきなり……」

「いきなりじゃないだろ。俺はいつも、イデアにアピールしてただろうが」

「そ、そうだった!?」

「僕もイデアにアピールして……」

「「ジアはしてないっ」」


 二人に突っ込まれたジアードは、うぐっと言葉を詰まらせている。


「言っとくが、これだけは引かないぜ。俺は下位貴族じゃないし、ジアもまだ当主じゃない。お前の言葉に従う道理はないからな」

「わかってる。それでも僕はイデアのことが昔から好きだったし、彼女を娶りたいという気持ちは変わらないよ」

「ジアはまだ結婚できないだろうが! 俺は十八だから、今すぐ結婚してやれる!」

「僕と婚約すれば、学校側を納得してみせるよ。イデアを、卒業まで学校に通わせてあげられる。本家だけのダンスパーティーにだって出してあげられる」


 今度はセノフォンテがうぐっと言葉を詰まらせる番だった。リオレイン王国では女は十五で結婚できるが、男は十八にならなければ結婚できない。

 二人の熱意で、ロレッタの肌は焼け焦げそうだ。それだけセノフォンテもジアードも、イデアに本気だということがわかる。


 うらやましいな……イデア……


 そんな三人を、ロレッタは蚊帳の外から見ていた。

 イデアは可愛らしく明るく、誰にでも優しい女の子だ。ジアードの心を奪っていても、無理のないで話ある。


 私みたいな引っ込み思案で話もまともにできないような女が、ジアードさんに好かれるわけない……


 わかっていたことなのに、胸が張り裂けそうに痛んだ。

 所詮自分は、こうやって見ているくらいが関の山なのだと再確認する。

 イデアのように、物語の主人公にはなれないのだと。


 二人がいい合う真ん中で、どうすればいいのかと困っているイデアは、とてもかわいい。

 そのポジションになりたかったと、ロレッタは心から思う。


「イデア、どうする。俺となら、今すぐにでも結婚してやれる。分家の強みだ、大きなしがらみはないし、親もすぐ説き伏せられる」

「イデアは本家の者と結婚したいといつもいっていたよね。僕はいずれスカルキの当主となる。子どもができても、下位貴族に落ちることはない」

「ジア、お前そういう言い方はずるいぞ!」

「うるさいセノ、イデアと結婚できるならなんだって使ってやる!」


 がるるる、といい争う二人の間で、イデアは困りきったように肩を竦ませている。

 彼女はどちらを選ぶのだろうか。


 セノフォンテを選べば、今すぐに結婚できてイデア自身の下位貴族落ちはなくなる。しかしその子どもはイデアと同じ運命を辿ることとなるだろう。

 ジアードを選べば、この国は十八にならないと結婚できない上にジアードの両親の意向もあるだろうから、ほいそれと婚約はできないに違いない。ただし、婚約さえ確定すれば生涯安泰である。


「イデア、僕とセノ……どっちを選ぶ?」


 ジアードのその言葉を聞くと、胸が張り裂けそうになる。

 もしも自分に言ってくれたなら、迷わずジアードを選ぶのに……とロレッタは唇を噛んだ。


「そ、そんなの……決められないよ……っ」

「イデアは俺とジア、どっちが好きなんだ?」

「それ、は……」


 セノの質問に、イデアはいい淀んでいる。

 彼女はセノフォンテが好きなのではとなんとなく思っていたが、違ったのだろうか。ジアードの本家という言葉にぐらついてしまっただけなのだろうか。


「イデア」

「わ、わかんないわよ! 二人とも、大切な幼馴染みなのよ!? 決められるわけないじゃない!」

「じゃあ俺とジアのどっちが結婚相手でも、文句はないってことでいいか?」


 セノフォンテの真剣な顔に、イデアは顔を赤らめながら頷いた。その姿を見たセノフォンテは、満足そうにニヤリと笑う。


「分家の俺でも構わないと思ってくれただけで、十分だ」


 そしてセノフォンテは、視線をジアードへと向けるとこういった。


「イデアを賭けて、勝負しろ」


 対するジアードは少し驚いたような顔をしたが、すぐにキッと目元をつりあげて口元を引き締めた。


「勝負内容は」

「決まってる。俺らには剣術しかないだろ」

「臨むところだ」


 そうして二人は、ジアードの家の庭で今から試合をすることを決めてしまった。

 完全に部外者だったロレッタだったが、その決闘の結果を知りたくてジアードの家の庭にお邪魔する。


 二人はジアードの家の木剣を手に取り、互いに向き合い剣を重ねる。

 少し離れたところでロレッタたちはそれを見守った。


「どうしよう……私のせいで……」


 イデアはそう言いながら、少し震えているようだった。けれど『私のためにやめて』というつもりはないらしい。彼女もどちらかとは結婚したいのだろうから、当然といえば当然だが。

 贅沢な状況に、激しい嫉妬に駆られそうになった。


「ジア……勝った方がイデアと結婚できる。それでいいな」

「ああ」

「勝っても負けても恨みっこなしだぞ」

「わかっているよ」


 そういって木剣をカンと交わした瞬間、二人はバックステップを踏んだ。

 そして後ろの土を互いに蹴ったかと思うと、木剣が折れるのではないかと思うほどの勢いでガンッと剣が交差する。

 互いに弾き返すと、ジアードが猛攻撃を仕掛けてはセノフォンテがそれをいなし受け流している。


「ど、どっちが強いの……?」


 剣術の良し悪しなどわからないが、なんだかとてつもなくすごいことが起きている、ということだけはわかった。

 ロレッタの問いに、イデアは胸の前の手をぎゅっと握りしめながら答える。


「純粋な勝ち数でいうと、ジアの方が上なの。でも……」

「でも?」

「大会になると、いつもセノが優勝しているわ……」


 そういって心配そうに二人を見つめるイデア。

 普段の練習試合ならジアードの方が強く、セノフォンテは本番に強いということだろうか。

 ならば公式な試合でないこの戦いは……

 そこまで考えると、心臓が嫌な音を立て始める。


 ジアードさんが勝っちゃたら……イデアと結婚しちゃう……っ


 ロレッタは、ジアードに負けてほしいと強く願った。

 こんなことを願うのはいけないとわかっていても止められない。

 彼が誰か人のものになるのは、絶対に嫌だ。


 素人目にはジアードが優勢。次々と切り込むジアードに、セノフォンテは後手にまわっているように見える。

 それでも手をゆるめないジアードの気迫に、こちらまでも圧倒された。

 ジアードからの飛び込むような上段の一撃に、受け止めたセノフォンテが苦悶の表情を漏らす。


「セノーーーーッ!!」


 隣にいたイデアが叫んだ。

 剣を返しサイドに飛んだセノフォンテは、姿勢を低く保ってジアードの間合いに入る。


「っらあぁあああ!!」

「ぐあっっ」


 ドゴ、と妙な音がして、ジアードが崩れ落ちた。

 そのまま悶絶するように脇腹を押さえて草の上に埋もれている。


「はぁ! はぁ! はぁ!」

「う、うぐ……っ」


 大きく肩で息をするセノフォンテに、息をするのもつらそうなジアード。

 イデアはどうしていいかわからず、その場に立ちすくんでいる。


「悪い、ジア。寸止めが間に合わんかった」

「気に、すん、な……」

「イデアは、俺がもらう」

「……ああ」


 ジアードの言葉を確認すると、セノフォンテはこちらに……否、イデアのところにまで歩を進めて、跪いた。


「俺が勝った。約束だ、イデア。俺と結婚してくれ」


 スッと手を出すスマートなセノフォンテの立ち居振る舞いに、ときめかない女子などいないだろう。

 ロレッタですら、隣で見ていてドキドキしてしまう。

 イデアは頬を赤らめて、差し出されたセノフォンテの手に己の手を乗せた。それは、了承の意味だ。


 セノフォンテはほっとしたように嬉しそうに笑って、イデアの手に優しく口づけた。


 まるで、物語の中のような光景。

 女の子なら、誰だって憧れてしまう。

 こんな風に告白されたいと、夢見てしまう。


 セノフォンテが立ち上がると、お互いの世界に入ったように見つめあっていた。

 そして善は急げとばかりに、二人はこれからお互いの家に説得に行くことになったようだ。


「ねぇ、ジアは……」


 イデアは寝転がったまま起きようとしないジアードを心配そうに見た。しかし、駆け寄ることもできないのだろう。直接ではなくとも、振ってしまった相手なのだから。


「しばらく、そっとしてやってくれ」


 セノフォンテが憐憫の目を向けていた。彼もまた、ジアードが負けるのはつらかったのかもしれない。


「ロレッタ、家まで送ろう」


 力のない笑みを見せるセノフォンテに、ロレッタは首を横に振った。


「私……まだ……ここ、に……」

「……そうか」


 それだけいうと、セノフォンテとイデアは門から出て行った。

 二人の姿が見えなくなるのを確認してから、ロレッタはジアードに駆け寄る。

 そっとしておくのが正解なのかもしれないが、じっとしてなどいられなかった。

 制服のスカートが汚れるのも構わず、ロレッタはその場に座り込む。


「ジアード、さん……っ」


 ジアードは痛みが少しおさまったのか、ごろんと仰向けになり空を見上げた。

 日が暮れ始めて、ほんの少しオレンジがかっている雲をぼうっと見ている。


「負け、たな……」


 はは、と悲しい笑いが漏れた。

 なんと声をかけていいかわからない。


「あの、痛み、は……骨……折れて、ない?」

「骨のない脇を狙ってくれたよ。インパクトの瞬間、握りを弱めてくれていたし……さすがだよ、セノは……」


 セノフォンテを褒める言葉の語尾が、震えている。目にはじわりと涙が溢れているのが確認できて、いよいよロレッタはどうすればいいのかわからなくなった。


「ジアードさ……」

「イデア……ッ」


 ジアードの口から愛しい人の名前が漏れ、彼は己の手で目を隠した。

 食いしばられた歯の奥からは、ひっくとしゃくりあげる音が聞こえてくる。


 彼は、負けてしまったのだ。

 愛しい人とは、決して一緒になれないのだ。

 それは、どれだけつらいことだろうか。


「泣いて、いいですよ……ここは、ジアードさんのお庭ですもの。私、誰にも言いませんから……」


 聞こえているのかいないのか。

 ジアードはそのまま、空に向かって吠えるように泣いていた。

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