第59話:死闘
王歴327年6月19日:南大魔境・オーク族大集落の周辺・クリスティアン視点
ロードゴブリンは普通種から4段階も進化しているだけあってバカじゃない。
同格が簡単に殺されたのを見て、3人同時にかかってこようとしている。
だが俺も何もせずに手をこまねいているわけではない。
「お前たちもオーク族を襲って殺そうとしたのだ。
負けた場合は自分たちが殺され喰われる覚悟くらいしていただろう。
もうあきらめて俺の血肉になれ」
俺はめぼしい敵を喰らって消化吸収した。
ヒュージ級やビッグ級のゴブリンはもちろん、ジャイアントやトロールも喰った。
ジャイアント級とトロール級にビッグ級がいるのには正直驚いた。
こんな連中を支配下に置くキングゴブリンの強さに少々怖くなった。
「ギャアアアアア、助けてくれ、助けてくれ、お願いだ」
泣いて命乞いする普通種のゴブリンも情け容赦なく喰らった。
キングと戦う事を考えると、わずかな経験値もムダにできない。
ヒュージオークに1万人のゴブリンを渡すと約束したのは間違いだったか?
いや、キャット族の平穏な生活の為にはどうしても必要だ!
「俺の獲物に手を出すのではないぞ!
ゴブリン1人の経験値がオーク族の存亡に直結するかもしれないのだ。
俺が負けた時にはオーク族も滅ぶと思え!」
よく考えれば、ロードゴブリンだけと戦うとは限らない。
俺がキングゴブリンの強さを甘く見ていた場合は、偵察した範囲の外にキングゴブリンが潜んでいて、3人のロードと共に襲い掛かってくる可能性がある。
いや、キングの側に親衛隊のロード級がいる可能性まであるのだ!
「俺は3人のロードを斃してくる。
オーク族は城壁の中で次の戦いにそなえていろ。
ゴブリンどもが襲ってきても城壁内に戻る自信があるのなら、その辺に転がっているゴブリンを集めてもかまわない」
さっき言った事を直ぐ変更するのは恥ずかしいが、こんな所で時間を潰せない。
キングがロードたちと合流する前に1人でも多くのロードを喰らう。
少々の雑魚に逃げられても仕方がない。
まずは3人のロードから確実に喰らうのだ!
★★★★★★
幸か不幸か、キングゴブリンがロードゴブリンたちに合流する事はなかった。
俺は3人のロードゴブリンを個別に殺す事に成功した。
4人ものロードと、ロードに匹敵するキングジャイアントやキングトロールまでいる部隊が、オークごときに負ける事はないと思っていたのだろうか?
「ビッグゴブリンを拷問してキングゴブリンの居場所を吐かせろ。
いいな、そうしないと安心して暮らしていけないからな!」
俺に忠誠を誓ったヒュージオークに10人のビッグゴブリンを預けた。
ヒュージオークに反乱を起こしそうなビッグオークにも忠誠を誓わせた。
反抗的なビッグオークをスライムの身体に取り込んで皮膚と筋肉を溶かしてやったら、半分消化された目から血の涙を流して忠誠を誓ったから裏切る事はないだろう。
ちゃんとパーフェクトヒールをかけて元通りに治してやったしな。
「はい、ご指示通りにさせていただきます。
これからもよろしく御指導御鞭撻願います」
思いっきり堅苦しいが、元々がそう言う性格ならしかたがない。
約束通り1万人分の普通種ゴブリンを食糧として渡してやったのも、忠誠心を高める効果になったのだろう。
「キングゴブリンが襲ってきても、必ず護ってやるから安心しろ」
レベルアップした影響か、今までスライムとしか表示していなかったのが、進化の段階を示すようになって、ロードスライムと表示されている。
ロードスライムならキングゴブリンが相手でも勝てるはずだ。
「ありがたき幸せでございます」
ロードスライムに進化できたから、キングゴブリンにも勝てると判断して、大切な食糧になる普通種ゴブリンは消化吸収せずに亜空間胃に保存した。
キャット族にはとても嫌われている不味くて臭い肉だが、オーク族やドッグ族にはとても貴重な食糧だ。
2万人も保存しておけば、両種族合わせても1カ月分の食糧にはなるだろう。
『クリスティアン』
種族:ホモサピエンス
称号:悪食
レベル:60/∞
「基本能力」
HP: 625
魔力:1823874
命力:1198327
筋力: 692
体力: 731
知性: 10087
精神: 4582
速力: 617
器用: 600
運 : 694
魅力: 600
変化時は変化した種族とレベルにあわせて基本能力は上昇
「神与スキル」
悪食 :レベル60
:ストマックサブスペイス
:スモールインテスティンサブスペイス
:コロンサブスペイス
:ラバリィ、
:ウルトラセルフヒーリング
:ウッド
:ウッドボール
:ウッドアロー
:ウッドソード
:ウッドランス
:ウィンド
:ウィンドボール
:ウィンドアロー
:ウィンドソード
:ウィンドランス
:パーフェクトヒーリング
:アッシドバレット
:ポイズンバレット
「付帯スキル」
回復魔術:レベル60(ロードスライム変化時)
:ヒーリング、エリアヒーリング・ハイヒーリング
:エリアハイヒーリング・スーパーヒーリング
:ウルトラヒーリング・パーフェクトヒーリング
毒術 :レベル60(スライム・サイドワインダーなどに変化時)
:ポイズンバレット
酸弾 :レベル60(ロードスライム変化時)
:アッシドバレット
薬生産 :レベル60(ロードスライム変化時)
:ピルファーマスーティカル?
:リキッドメディスンファーマスーティカル?
毒生産 :レベル60(ロードスライム変化時)
:ポイズニング
攻撃魔術:レベル60(キングゴブリン変化時)
:ウッド
:ウッドボール
:ウッドアロー
:ウッドソード
:ウッドランス
:ウィンド
:ウィンドボール
:ウィンドアロー
:ウィンドソード
:ウィンドランス
超回復 :レベル45(ビッグトロール変化時)
:スーパーオートマチックリカバリー
憤怒剛力:レベル40(ビッグジャイアント変化時)
:アンガスーパーヒューマンストレングス
牙攻撃 :レベル21(ビッグドッグ変化時)
:ファングローリングイートゥ
:ファングスクリューネックカッター
棒術 :レベル11(ビッグオーク変化時)
:スティックアート
剛力 :レベル11(ビッグオーク変化時)
:スーパーヒューマンストレングス
自己回復:レベル11(ビッグオーク変化時)
:ウルトラセルフヒーリング
牙突進 :レベル10(レッドボア変化時)
:ファングラッシュ
飛行 :レベル10
:フライング、グライディング、アヴィエイション
遠見 :バードアイ、ディスタンスビュー、テレフォウトウ
「装備と武器」
投擲用の石
鉄の長剣
綿の下着
綿の靴下
鰐の革鎧
★★★★★★
「言います、言います、言いますからもう許してください、お願いします!」
「そうか、だったらキングゴブリンの居場所を吐け!」
スライムに変化している俺の身体の中には、30人のヒュージゴブリンがいる。
亜空間化した胃のなかではなく、消化吸収する体液の中にいる。
正直にキングゴブリンの居場所を吐いた者は助けると約束してだ。
最初はキングゴブリンに忠誠を誓って抵抗していた連中も、身体を表面から消化吸収される痛みと恐怖には耐えられなかった。
「よく頑張ったな、なかなかの根性だ。
5回も回復されて6度目まで粘ったのだからな」
死ぬ寸前まで身体を消化吸収されてから、俺に完全回復させられて、再び体の表面から消化吸収されるのだ。
大抵のヒュージゴブリンは1度目にキングゴブリンの居場所を吐いた。
5度耐えたのはこのヒュージゴブリンただ1人だ。
「キングは大魔境の外に遠征にでた。
全ての種族にバカにされてきたゴブリン族が世界を支配するのだと言って」
なるほど、コンプレックスを晴らすための遠征とは、俺の予想通りだった。
キング級にまでも進化すると、ゴブリン族の名誉まで考えるようになるのだな。
それとも単なる支配欲なのだろうか?
「そうか、キャット族を襲わないのならキングゴブリンが何をしようとかまわない。
それで、お前たちはどうする?
俺に忠誠を誓うと言うのなら、このまま南大魔境に住む事を許す」
「そうさせてください、お願いします。
他種族に、それもホモサピエンスに負けて命乞いをしたと知られたら、キングに殺されてしまいますから、もうキングの所に戻る事はできません」
「そうか、だったら南大魔境内でくらすがいい。
だが、もう生き残っているゴブリンはヒュージ級の30人だけだぞ」
「それは大丈夫です。
それぞれの村に戻れば、留守番の連中が残っています」
「そうか、だったら解放してやるから村に戻れ。
だが、もうキャット族はもちろん、俺の支配下に入ったホモカウ族、オーク族、ドッグ族は襲うなよ」
「はい、わかりました」
「ただし、今言った4種族から襲ってきた時は別だ。
黙って殺される事も逃げる事もない、返り討ちにして喰ってかまわない」
「本当にいいのですか?」
「お前たちは俺に忠誠を誓ったのだろう?
だったら5種族は俺の下にいる同格の存在だ。
互いに襲う事を禁止している以上、先に襲った方が悪い」
「ありがとうございます」
「まあ、誤解や争いが起きないように、こちら側に来ないようにするのだな」
「はい、そうさせていただきます」
拷問をかけたゴブリンたちには忠誠を誓わせた。
人間界を襲いに行ったキングゴブリンは強いだろうが、人間には武力系の神与スキルを優遇する風習があり、強力な軍隊がある。
そう簡単にキングゴブリンが世界を制覇できるとは思えない。
万が一キングが世界を制覇して南大魔境に戻ってきたとしても、その時には俺はもっと強力なスライムになっているだろう。
土や岩を喰らって地下に大迷宮を築くだけでいくらでも経験値を稼げるのだから。
問題は人間に戻った時にこの情報を覚えていない事だったが、地面に文字を書いて残しておけば大丈夫だと思いついた。
今までこんな簡単な方法を思いつかなかった自分が情けない。
大公公子でしたが、神与スキルが『悪食』だったので、王太女には婚約破棄され大公家からは追放され弟には殺されかけましたが、幸せに生きています。 克全 @dokatu
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