第51話:驚愕のエルフ族
王歴327年6月11日:南大魔境・キャット族新村・クリスティアン視点
本村で新しい嫁が20人以上できた俺は、鳥に変化して新村に戻った。
俺は新村の村長なので長く留守にできないし、新嫁たちの事も嫁たちに報告しなければいけないからだ。
「族長の命令ならば従わなければいけませんね」
「先生の子供が欲しいと言う気持ちはよく分かります」
「クリスティアン先生以外男に見えないのもしかたありません」
「旦那様以外はクズですから」
「さっそく新村からクズ男を追放しましょう」
俺の心配など全く不要だったようで、嫁たちは簡単に納得してくれた。
それどころか新村から男たちを追放する話まで始めてしまった。
余計な事はしないように念を押して、また鳥に変化して本村に行った。
「新村の村長屋敷はロードゴブリンの屋敷だったから、とんでもなく規模が大きいのと聞いているので、部屋はいくらでも余っているのだろう?
元々キャット族は最低限の家具や道具しか持たないからな、新村には持ち運べるものだけ持って移住してもらう。
新嫁たちの生活用品は婿殿が買ってやってくれ」
ヤスミン本村村長は簡単に言ってくれた。
本村に戻って直ぐに新嫁たちと本村を追いだされて新村に向かう事になった。
危険な南大魔境内の移動とは言え、俺がいるし、四肢を失って体力と筋力を失っているとはいえ、元は歴戦の戦士や狩人だった新嫁たちだ。
キャット族のナワバリ内を4日かけて本村から新村に移動するくらい、とても簡単な事だった。
「ラウラ、これからよろしく頼む」
「こちらこそよろしく頼むわね、イングリート」
「クリスティアン様の好みをおしえてくださいね、ケルスティン」
「どうすればケルスティン村長のお役に立てるのか教えてくれ、レーオニー」
嫁と新嫁たちの中には顔見知りや親しいモノもいるようで、特に寵愛争いも勢力争いもなく、自然に共同生活が始まった。
ドキドキ心配していた俺がバカみたいだった。
4日も村を留守にしていたので、やらなければいけない事がたくさんあった。
食糧を確保するための狩りは備蓄があるので急がないが、キングゴブリン対策に掘っている地下道工事を遅らせる訳にはいかなかった。
「地下道も大切だが、自分の評判も大切にしてくれ、婿殿。
エルフ族の言動が悪かったのは間違いないが、四肢を奪って生き地獄落としたままでは、婿殿の評判が悪くなり過ぎる。
キッチリと処刑するか治すかのどちらかにしてくれ」
俺が新村の村長のなった事で、形だけは部下となったリンクス族族長のグレタは、徐々に言葉づかいをていねいにしてくれている。
そんなグレタが本気で警告してくれているので素直の言う通りにする事にした。
「なにしにきた、ホモサピエンス?!
お前に変化の力がある事も強い事も理解したが、その程度の事でエルフ族が誇りを捨てて屈服すると思うなよ!
我らエルフ族は殺されると分かっても誇りを捨てぬ。
命乞いなどしない、殺すなら殺せ!」
何を勘違いしているか聞き返す気にもなれない。
鼻につくような高慢なエルフなど、どれほど美人でも側にいるのも嫌だ。
さっさと回復魔術を放って元通りにする。
そして村から出て行ってもらえば、俺もエルフも嫌な思いをしなくてすむ。
「パーフェクトヒーリング、パーフェクトヒーリング、パーフェクトヒーリング、パーフェクトヒーリング、パーフェクトヒーリング、パーフェクトヒーリング……」
俺が魔術を発動させるたびに、スライムに変化した俺に手足を喰われたエルフ族が元通りの姿に戻っていく。
手足が元通りになったエルフも、それを見ていたエルフも、信じられないモノを見たような驚愕の表情を浮かべている。
「これで俺のやった事の責任は果たした。
今度は高慢な態度と暴言を続けたエルフ族に責任をとってもらう。
1度は村に入る事を許したが、それは間違いだった。
今日1日準備をする時間をやるから、明日には村を出て行ってもらう」
俺はそう言い切ってエルフ族が借りの住処としていたホモカウ族の家を出た。
ホモカウ族は5000人もいて、全員が安心して暮らせる家を持っているが、同時に旅商人時代から使っている寝泊まりもできる車も持っている。
200人程度のエルフ族に家を貸すくらい簡単な事だった。
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