第39話:ロードゴブリン

王歴327年3月16日:南大魔境のゴブリン族村の中・クリスティアン視点


 強い、ヒュージゴブリンの姿のままではとても勝てそうにない強敵だ。


「ボブリン族のために狂った指導者を斃す」


「ヒュージごときが本気でキング様を斃せると思っているのか!。

 いや、ヒュージごとでは俺様にすら勝てないぞ」


 確かにヒュージの俺ではとても勝てそうにない鋭く重い攻撃だ。

 大こん棒の一撃で軽く体力の半分は奪われてしまう。

 大きなケガで戦闘力も激減してしまうだろう。


「スーパーアッシドバレット、スーパーポイズンバレット、エリアアッシドソード、エリアポイズンソード」


 俺が呪文を唱えると、ヒュージゴブリンの姿がヒュージスライムに変化した。

『悪食』スキルで食べまくっている間に、スライムがロードゴブリンに匹敵するヒュージスライムに進化していた。


「ギャアアアアア」


 スライムに変化した俺に叩きつけられた大こん棒の一撃は、ロードゴブリンの腕と一緒にスライムの身体に取り込まれている。

 これでもう腕を斬り落とすしか俺から逃げられない。


「ギャアアアアア、やめろ、はなせ、やめてくれ、ギャアアアアア」


 酸でできた槍と毒でできた槍が雨あられとロードゴブリンに降り注ぐ。

 さらに銃弾のように圧縮された酸と毒がロードゴブリンの身体をぶち抜く。

 生命力が強いロード級であろうと、魔力器官と心臓を酸と毒でぶち抜かれたら、即死するはずなのだが?


「ギャッフッ」


 血を吐いて一気に力が抜けた。

 即死してくれたようだから、このままスライムの身体で包み込んで喰らってやる。

 ロードスライムを喰ったら、次にゴブリンに変化した時にはロードになれる。


「ウワッアアアアア!」

「ロードがやられたぞ!」

「逃げろ、逃げるのだ、殺されるぞ」

「キングだ、キングに報告するのだ」


 1人でもゴブリンを逃がしてしまったら、ヒュージゴブリンからヒュージスライムに変化する敵がいる事を、キングゴブリンに報告されてしまう。

 ロードゴブリンを体に取り込んだまま移動できるのか?


「エリアアッシドボール、エリアポイズンボール」


 ビッグゴブリン以下の連中なら、最下級のエリア攻撃魔術で全滅させられる。

 急いでロードゴブリンを消化吸収しつつ、ゴブリンを皆殺しにする。

 移動速度は遅くなるが、追いかけることはできるようだ。


「「「「「ギャアアアアア」」」」」


 逃げ足も、ビッグゴブリン以下の連中が相手なら俺の方が早い。

 射程距離に入ったゴブリンは皆殺しにしてしまえばいい。

 ビッグゴブリン以下の連中など食べても意味がない。


「エリアアッシドボール、エリアポイズンボール」


 まあ、ビッグゴブリン以下の連中でも食べれば多少は経験値になるようだ。

 この後で戦わなければいけない相手はキングゴブリンだ。

 ヒュージスライムのままでは少々分が悪い。


「「「「「ギャアアアアア」」」」」


 ここにいる1万人近いゴブリンを全員食べる事ができたら、キングゴブリンに匹敵するロードスライムに進化できるかもしれない。

 ロードスライムに進化できなくても、限りなくロードスライムに近いヒュージスライムになるための経験値を稼ぐ事ができる。


「エリアアッシドボール、エリアポイズンボール」


 ロードゴブリンの奴、なかなか消化吸収できないな。

 表皮と真皮、皮下脂肪と筋肉の半分は消化できたが、骨や内臓までは消化できていないから、まだ動きが鈍い。


「おのれ、スライムの分際でよくもロードを斃してくれたな。

 ロードの仇は俺様が討つ、死にやがれ」


「「「「「ウォオオオオ、ロード様の仇を討つんだ!」」」」」


 ロードゴブリンの配下であろうヒュージゴブリンが襲いかかってきやがった。

 ヒュージゴブリンの配下であろう1000人規模のゴブリン軍もかかってきた。

 逃げられると追いかけるのがメンドウだったので助かった。

 

「エリアアッシドボール、エリアポイズンボール」


 繰り返し最下級の範囲魔術を唱えてビッグゴブリン以下の連中を斃す。

 先にヒュージゴブリンを斃してしまうと、ビッグゴブリン以下の連中が逃げだしてしまうので、攻撃を受けるままにしておく。


「そのていどか、そのていどでロードの仇を討てると思っているのか?!」


 攻撃を繰り返すヒュージゴブリンを挑発してやる。

 頭の悪いヒュージゴブリンは自分が囮にされている事も、攻撃が全く効いていない事にも気がついていない。


「エリアアッシドボール、エリアポイズンボール」


 この攻撃で何とか生き残っていたビックゴブリンも全滅した。

 もうそろそろヒュージゴブリンも殺してしまって喰らうか?


「もう少し頑張れ、俺が手助けしてやるぞ」

「3人でかかればそんなスライムなど簡単に斃せるぞ!」


 またバカなヒュージゴブリンが集まってきてくれた。

 それも1000人規模の配下を連れた2人のヒュージゴブリンだ。

 この調子でヒュージゴブリンを囮にして残ったゴブリンを釣りだすか?


「エリアアッシドボール、エリアポイズンボール」


 いや、それでは最弱普通種のゴブリンを見逃してしまうかもしれない。

 まずは配下のビッグゴブリン以下を皆殺しにして、その後で3人のヒュージゴブリンを殺してしまう。

 そして鳥に変化して1人のゴブリンの逃さずに皆殺しにするのだ!

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