第7話:キャット族の村
王歴327年2月6日:南大魔境のキャト族村・クリスティアン視点
想像していた家族的な小集落とは全く違っている。
建材こそ石ではなく木材だが、規模から言えば都市と言えるほどの大きさだ。
「待て、連れているホモサピエンスは何者だ。
捕虜ならばしっかりと捕縛した状態で連れて入るのが決まりだ。
グレタ殿であろうと村の掟には従ってもらう」
この家族の長はグレタという名前のようだな。
村長ではないが、村の中ではかなりの権力を持っているようだ。
「このホモサピエンスは捕虜ではなく客人だ。
我々がオーク族に襲われている所を助けてくれた。
各部族の長が客人と認めた相手は、部族の責任において村に入れてもいい掟になっている、違うか、門番」
「確かに村の掟ではそうなっているが、今までホモサピエンスが客人に選ばれた事などないではないか!」
サーバル族の門番は納得できないようだな。
確かに、ほとんどのホモサピエンスは獣人族を下に見て差別しているからな。
「それは今までキャット族を助けたホモサピエンスがいなかっただけだ。
今回初めてキャット族を助けてくれたホモサピエンスが現れた。
だったら誇り高きキャット族にふさわしい礼をするのは当然であろう」
「だが…しかし…」
「通してはダメよ、イェンス。
グレタ殿、いくら貴女の言葉でも信じられる事と信じられない事があるわ。
誇り高く強力なリンクス族がホモサピエンスに助けられただなんて」
タイガー族の女か。
種族的にはリンクス族よりもタイガー族の方が強そうだな。
だが、個人から放たれている気配はグレタの方が強く感じられる。
「若くて愚かね、イングリート」
「何ですって?!」
「その誇り高いリンクス族が、ホモサピエンスを恩人と言わなければいけない状況だったのよ。
ここで我らリンクス族に更なる恥をかかせるようなら、私のグレタ家と貴女のヤスミン家の決闘になるけれど、貴女にそれを決める権限があるのかしら?」
「うっ」
「文句がなくなったのならここを通るわよ、いいわね、イングリート。
イェンス、貴男も文句はないわね?
それとも、私と決闘する覚悟があるのかしら?!」
タイガー族の娘は黙ったが、まだ俺に敵意の目を向けているな。
サーバル族の門番の男は、もう文句を言う気力はないようだ。
「グレタ、この事は母上に報告させてもらう」
「あら、あら、自分の思い通りに行かなかったら村長のお母さんに泣きつくの?
孤高の戦士と言われたヤスミンも子育てだけは下手のようね。
親の力で村人を従わせようなんて、キャト族の恥さらしだわ」
おお、怖い怖い。
誇り高いキャト族を本気で怒らせるとこうなるのか。
それにしても、タイガー族の村長を敵に回してでもホモサピエンスの俺をかばってくれた以上、俺も覚悟を決めなければいけないな。
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