第8話爆破記念日


「4月から半年間、仕事を最低限に減らして

仙台の予備校に通って受験に集中しようと思います」


二週間ぶりに会ったその日は、

餃子の王将でハイボールを飲んでいた。


「え、仙台?」


確かに本気で受験するなら全力で

勉強に集中すべきだと思う。

しかし何故それが仙台なのか。

彼が学生の頃住んでいて土地勘があるとはいえ

実家がある訳でもないのに。


それに、こちらからの電話はいつも繋がらず、

いつの間にか彼のペースで連絡を取り合い、

彼の連絡を大人しく待つ自分に、

すっかり慣れてしまっている。

私は何故いつもニコニコしているのだろう。

本当は理解しているふりをしているだけでは

ないのだろうか。


「我々の未来の為にも環境を変えたいし」


未来?

餃子を食べ過ぎて胸焼けしているのだろうか。

頭が回らない。


「もう自分の中で決めているんだね。

会いたい時だけ会って、私達って不倫くらいが丁度いいんじゃないかな。

無理やりリクの将来に私を組み込まなくてもいいからね」


ついに爆弾を投下してしまった。


離れてしまう不安を一番可愛くない形で。


それから5日間、彼から連絡はなかった。

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