第2話 追放されてしまう話 ②

「どうして、なんで僕が!? 」


この場にラントが居ないことで何となく嫌な予感がしていたアラリウルであったが、やはり納得がいかずイルマを問い詰める。


「言わなければわからないか? 」


「あぁ、わからない」


本当はアラリウルはその理由も検討がついていた。だが、信じたくないという思いがアラリウルにそう言わせるのだった。


「ラントはお前以上の働きがあり、お前にラントの代わりが務まるとは思えない。 そして俺達がこれからもっと注目されるためには、華も実力もあるラントの存在は不可欠だ」


言われたくない、考えたくないことをイルマは淡々と述べる。


「確かに、僕はラントに比べると能力は劣っているかもしれない! だけど1番仲間と連携を取れるし、他の雑務も全部僕がやってきてる。 精霊は強くはないけど、今まで工夫して苦しい戦いも乗り越えてきたじゃないか! 」


「いい加減にして下さい! 」


そう言ってアラリウルに杖を突きつけるのは、イルマと同じくアラリウルと育成学校からの幼馴染である、魔道士ミルナであった。


長く美しい髪を振り乱し、エメラルド色をした瞳でアラリウルを見つめる。


「イルマだって辛くないわけないじゃない! でもこの大人数でやりくりをしていくためには能力のある方を選ばざる得ないのよ! 」


最初、明星の華はアラリウル、イルマ、ルミナの3人だけであった。


たが、その後活躍が世間に広まると、志願者が集まり気付けば20人近くを抱える大所帯となっていた。


「でもやっぱり、納得できないよ! グリッド公爵と話し合って少しでも罰が軽くなるように僕達でお願いしに行こう! そうすれば― 」


「うるさい! 分かってくれよリウル。 俺達は今Sランクに上がれるかどうかの大事な時期なんだ。 これ以上問題をややこしくしないでくれ! 」


イルマはダンッと机を勢いよく叩きながら立ち上がり声を荒らげる。


アラリウルの頬にはいつの間にか涙が伝っていた。


「こんなことしたくはなかったんだが……」


イルマはそう言ってミルナに目で合図を送る。


それを受けたミルナは小さく頷くと再びアラリウルに杖を向け直す。


アラリウルはショックが大きすぎるのか反応に遅れる。


「何を―」


「お前が悪いんだからな、お前が俺達の決定に従わないから」


イルマがそう言い終えると同時にミルナは呪文を唱える。


上級封印魔法精霊の檻


その瞬間、アラリウルと契約を結んでいた精霊ピクシーがアラリウルの魂から引き剥がされる。


「やめろ!!! ピクシーぃぃい!! 」


透明な膜の中に封じ込められたピクシーはアラリウルを見つめ手を伸ばしている。


「お前ら! 何てことを、このままだとピクシーが死ぬぞ!」


1度人間と契約を結んだ精霊はその人間の魂と共にしか生きることが出来ない。つまり、アラリウルの魂から引き剥がされたピクシーはそう長くは生きることが出来ないのだ。


「あぁ、そうだ。 知っているよこのままだとピクシーは死ぬ。 じゃあどうすればいいか分かるよな!? 」


イルマはアラリウルの胸ぐらを掴み怒鳴りつける。


「お前ら………… 狂ってる… 」


アラリウルは何かを諦めたかのように、脱力するとフラフラとピクシーの元へ歩き始める。


ピクシーは何をされるのかを悟ったのかキィキィと弱々しい声で鳴き声を上げる。


「お前とずっと旅を出来て良かった。 次、人間と契約する時はもっと才能のあるやつとしろよ………… ゴメンな」


アラリウルはそう言うとピクシーとの契約を解除する。


そうすることでピクシーとアラリウルの間にある契約と絆がなくなり、二度と契約を結べない代わりにピクシーは生きることが出来る。






そうして精霊を失った祓魔師アラリウルはグリッド公爵の森を焼き払った狂人として、連行されることとなった。




《あとがき》

仕事の合間に書いてゆきます!

少しでも気になったらフォロー、評価、コメントして頂けるとすっごく嬉しいです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る