【実話】予感?

 大学生1年生の時、バイト先の人が亡くなった。


 死因とかは特に聞いていなかったが、突然病気になったらしい。


 突然見かけなくなったなと思ったら、数週間後くらいに亡くなったと、同じバイトの人から聞いた。


 接点は本当になかった。


 名前も呼んだことがなかったし、そもそも名前すらも知らないくらいだった。


 勿論、会話なんて一度もしたことがなかった。


 それなのに、休むようになった数日前に急に話しかけられたことを憶えている。


「奏羽くん…だよね?」

「え?あ、はい」

「今日は天気が悪いね」

「そうっすね、雨で濡れるからここ最悪ですよ」

「ははは、風邪ひかないようにね」


 詳細は忘れたけど、確かこんな感じの他愛もない会話をした。


 本当に突然だった。


 いつも互いに挨拶くらいで、それ以外は素通りしていた。


 その日も別に俺のいる場所に来る理由などなさそうに見えた。


 ただ、本当に話しにきただけって感じで、少しだけ話してその場を去った。


 その数日後ぐらいから、姿を見なくなった。


 偶然だったのか、それとも何か、本人にしか分からない予感みたいなものがあったのだろうか。


 本当に印象がない人だった。


 けれど、最後の最後で短いとはいえ会話をしたからだろうか。


 亡くなったと聞いた時、少しだけ悲しくなった。

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