第15話 シュナイダー定食

そうこうしていると、シュナイダー定食がテーブルに並べられていく。


アーネが言うには、豚っぽい肉のソテーでシンプルに見えるが、隠し味の入ったオリジナルソースとの相性が絶品らしいのだ。


「いい匂い!旨そう!」

ルビは、今にも食いつきそうになりながらナイフとフォークの準備をする。


「はいはい!さっさと食べちゃいましょ!いただきます。」

「あ!ずるいぞ!いただきまーす!」


「いただきます。」

ルビと桜花は、美味しそうに食べ始める。


少し前まで戦っていた魔王と勇者パーティーが、一緒に食事をすることになるとは、夢にも思わなかったルビであった。


「うめぇっ!想像以上だな!」

「もっと落ち着いて食べなさいよぉ!私のもあげようか?」


「いいのか?欲しい!」

ルビは、アーネの皿から肉を一切れもらう。


「本当に美味しいです。またこんな温かくて美味しい料理を食べられる日が来るなんて……ぐすん……ずっと定期で自動魔力転送される冷たくて美味しくない魔力レーションを食べてたから……」


「桜花ちゃん。よかったな~」

桜花の涙にルビももらい泣きをしながらも、二人の食べるスピードは落ちなかった。


「魔力レーションか~あれはまずいわよね~よく我慢してたわね!外へ食べに出たりしなかったの?」

「何度か上の階へ上がろうとしたのですが、すぐにあの玉座に引き戻されてしまって……」


「……ふ~ん。」


(そういえば大魔王から何かを守護させられていたとか言ってたわね。それと関係があるのかしら?桜花の降参宣言でその守護の誓約が解けて外に出られた?……あれ?それって……何かまずくない?)


アーネは、直感的に何かミスをしてしまった気がした。


その時だ。

アーネは、店の奥から小さな手招きを確認した。


「ちょっと失礼……」


「トイレか?」

「無神経かっ!」

アーネは、ルビにツッコミを入れて奥へ進む。


アーネは、トイレの前を通り過ぎ、さらに店の奥の部屋に入り扉を閉めた。


「で、いくらになりそう?」


(ぶっちゃけた話、勇者の私が付いてるし、桜花がマントを被ってれば、強引に謁見できなくはなかったのだけど、魔王軍装備って特別な鉱物でできてるみたいで高く売れるのよね~それが魔王装備一式なら尚更よ。)


「なかなかのレア装備よね~1000ゴールドでどうかしら?」


「またまた~私の目利きでは2000ゴールドくらいのはずよ?」

アーネは、負けじと食い下がる。


「こっちだってね~リスクはあるのだから出せても1200ゴールドよ。」


「1800でどう?」

シュナイダーとアーネの真剣な交渉が続く。


その二人の目は、獲物を狙うダークウルフの目のように研ぎ澄まされていた。


「じゃあ、さっきの定食3つとあの桜花って子に合う中古防具一式をタダにするなら1300ゴールドでいいわ!どうよ?」

アーネは、これ以上は譲れないとばかりに問う。


「あんたね~あの子のレア装備でご飯食べて、中古装備にさせて、さらに1300ゴールドも掠め取る気?ろくな死に方しないわよ~本当に勇者なの?」


「勇者だって人間なの!こっちだってろくなクエストが無くて干上がってるの!それに豚に似せたレッドウルフの肉を怪しいソースで誤魔化して商売しているシュナちゃんに言われたくないわね~」


「失礼ね!聞かれたら『豚っぽい肉』と説明しているだけで、嘘は言ってないのよ。それに料理の腕でカバーしてると言って欲しいわね!」


このような商品は、町のあちこちで発生しており、半年前の大魔王軍襲来が、まだまだ国民生活に悪影響を与え続けていることを意味していた。


「それに……あの子は異世界召喚で来たみたいでこの世界に身寄りがないのよ。今の私と同じ……だから私が面倒を見るつもりよ。」

「なるほどね。その為の資金なのね……そうならそうと言いなさいよ。さすが勇者ね!」


「もっとも、これから謁見するフレイヤ女王様次第ではあるのだけどね。でも桜花は、誰も人を殺めていないし、どうにか上手く交渉するつもりよ。」

「頑張ってね!あんたのそういうところ好きよ。」


「なっ!シュナちゃんってば!や、やめてよ!照れるでしょ!」


アーネは、16歳の少女らしく、顔を赤らめならが、足早にルビ達の所へ戻って行った。


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