第27話
咲夜君が起きたのは、あの人の言葉の通り翌日だった。
燈子さんが男の人と消えた後、ウルティモに教えてもらって狼煙を上げた。自分の内から溢れる魔力は私に自信をくれた。
アダル様に回復魔法を掛けながら待っていると、聖騎士団と聖魔法師団の人達が来てくれて、無事に咲夜君と城に戻ることができた。
城に戻った私を待っていたのは王様とエヴァのお父さん。二人には全ての出来事を話した。
アダルベルト様は男の人に負けたこと。
エヴァは戦利品として連れて行かれたこと。
私も誘われたけど断ったこと。
エヴァの事と男の人の事は、その日の内に公式発表された。男の人には『魔王』と言う名称が与えられた。
理由としては2つある。アダルベルト様が戦っている姿を、多くの国民が見ていたから。そしてもう一つは、黒い城が姿を現したから。黒い城の登場は『魔王』の登場と同時期だったので『魔王城』と言う名称で正式発表された。
魔王城は大陸の中央アウローラ山に顕現した。アウローラ山は昔から不可侵の山だったらしい。
なぜなら山を登ろうとすると、気が付いたら裾野に戻るから。いつしか信仰の対象となり誰も近づかなくなった。
人の目に多く映ってしまった為、隠しておくことができず、早々での発表となった。
世の中が騒がしくなってきた様に感じる。落ち着かない。早く咲夜君に起きて欲しい。元気になって欲しい。と神様に祈っていたら、咲夜君の目が覚めた。
優しい神様はいつも私のお願いを聞いてくれる。
「あ、麗……。ここは?」
「咲夜君⁉︎王妃様!咲夜君が‼︎」
アダル様の部屋のソファで休んでいた王妃様が駆け寄ってくる。
今この部屋には私と王妃様とアダル様の3人。私は王妃様に前世の話をして、連れてきてもらった。『あなたがウララ様なのね』って言われた。とても綺麗で優しい王妃様。アダル様に良く似ている。
「アダル‼︎目が覚めたのですね」
アダル様はゆっくり起き上がった。片手で何かを探している。ヴィアラッテアだ!
ヴィアラッテアを掴み私を、王妃様を交互で見る。
「俺は、負けたんですね……。やつはセヴェーロはどこへ。この国は…………」
自信なさげに目を伏せるアダル様はヴィアラッテアを握りしめてる。アダル様にとってヴィアラッテアがどんなに大事な存在かが分かる。
「魔王はセヴェーロと言うのですね。彼には『魔王』と言う呼称が与えられました。魔王は戦利品としてエヴァンジェリーナ嬢を連れ去りました。それ以外の被害はありません」
王妃様が凛として声でアダル様に告げた。と同時にアダル様が起き上がる。
(止めなきゃ‼︎)
私は必死にアダル様に縋り付く。
「ダメ。アダル様、まだちゃんと治ってない!」
「離せ!オカンを助けに行かないと!」
「どうやってですか?貴方は負けたのですよ?アダル……」
王妃様の一言で、崩れ落ちるように咲夜君はベッドに座った。私はアダル様の体から離れる。すると辛そうな咲夜君の表情が見えて、心が痛む。
「幸い我が国の被害はエヴァンジェリーナ嬢一人だけです。あなたが負けたことにより、王侯会議は難航しています。このまま静観しろとの発言もあるくらいです。エヴァンジェリーナ嬢一人で済めば、安いものだろうと」
「母上……」
「もちろん、わたくしはそうは思いません。ここで静観してしまえば、国民の信頼を失うでしょう。近隣諸国にも侮られる事になります。幸いな事に議会の大半はこの意見です。ですが、ここから建設的な意見が出ず止まっています。理由は分かりますね?」
「私が……負けたからですね」
悔しそうなアダル様の表情に涙が出そうになる。確かに魔王は、彼は、無傷だった。アダル様と違って……。
「そうですね。次は勝てますか?アダル?」
「俺…いや私では勝てないと思います」
「コスタンツァ様、貴女は魔王に勝てますか?」
王妃様が私を見る。突然の質問に戸惑う。今の私は魔法を使える。だからかな?答えがはっきり分かる。
「私――勝てると思います。たぶん、私のほうが強いです」
「え?麗!なんでそんなあっさり」
「咲夜君、私ね。魔法が使えるようになったの。実は咲夜君の後に魔王とも戦ったの。あの時は錯乱状態だったから、うまく戦えなかったけど。咲夜君が戦い方を教えてくれれば、もっともっと強くなれるよ。魔王なんてコテンパンにやっつけちゃう。咲夜君は私に守られてればいいんだよ」
「嫌だよ!それ!俺が麗を守りたいよ」
「じゃあ一緒に闘おうよ!どっちが先に魔王を倒すか競争だね!」
「では決まりですね!母はこれから今の話を王侯会議でぶちまけて来ます」
王妃様が立ち上がり、私と咲夜君を見て、にっこり笑った。
(かっこいい~)
「ぶちまけるって、母上、いつの間にそんな言葉を……」
「ぶちまけちゃってください!文句いうやつは、私のパンチをお見舞いしちゃいます。私のパンチは強いですよ~。ひと振りでこの城を壊せる自信があります。人間なんてぺっちゃんこです!」
「ぺっちゃんこって……麗――」
「頼もしいわね。それも言ってくるわ。では二人きりになるけど、昔は恋人でも今はまだ他人よ!節度は守りなさいね」
王妃様はそう言いながら、早足で部屋を出て行った。
赤くなる私。咲夜君は、こんなとこまでオカンの影響がってブツブツ言ってる。燈子さんは素敵な人だもの。だからみんな影響されちゃうんだよ!
なんだろう……事態は好転していないのに、咲夜君が起きただけで、それだけでうまくいく気がして来た。
私はきっと愛する人達のためなら、なんでもできる。できちゃう!怖い者はない!
◇◇◇◇◇
「おかしなこと言うね、王妃様。だってここにはヴィアラッテアもウルティモもいるのにね」
麗がニコニコ笑いながらウルティモを掲げる。
ウルティモが大きくなっている。
そうか……もう麗は魔法を使えるから、ペンダントである必要はないわけだ。
[声が聞こえないから仕方がないことです。アダル殿、体調はどうだ?]
[私が癒したんですよ!大丈夫にきまってます!ね!アダル様]
「ああ、もうすっかり元通りだ。喉が渇いてお腹がすいたくらいにね」
俺の言葉を聞いた麗がぴょこんとベッドから飛び降りる。
「飲み物持ってくるね。あと軽食があるの。後で食べようと思って取っておいたの。一緒に食べようよ」
そう言って執務机にある飲み物とサンドイッチを取りに行く。パタパタと走る姿がとてもかわいい。
麗がいてくれて良かった。いなかったら俺は誰が止めてもオカンを助けに行っていっただろう。俺が弱いせいで、俺が負けてしまったせいでオカンは連れ去られてしまったのだから……。
「はい。咲夜君、どうぞ」
麗が水を差し出してくれる。そのお盆の上にはサンドイッチとフルーツ、そしてなぜかケーキが載っている。
俺にとってケーキは軽食ではないんだけど……とは思ったけど、ニコニコ笑ってる麗を見ていたら、突っ込めない。
もらった水を飲むと自分の喉が乾いてる事に気付いた。疲労と緊張、つまりストレスだ。
自分で自分を分析する余裕はあるみたいだ。 セヴェーロが最後に放った雷撃は、俺の結界を吸収し、その魔力を攻撃に上乗せしていた。どんな魔法の公式を使えば、あんなことができるのか……。悔しいけど、俺には思いつかない。
麗の視線を感じて見ると、なんだか熱い視線を送ってる。見ていて分かる。この熱視線は俺にじゃない、アダルベルトに送ってるんだ!そう思うと嬉しさ半分、苛立ち半分の気分になり思わずデコピンをしてみた。
「いたい‼︎」
そう言って麗がオデコを押さえてる。
痛みが分かる様になってる?オカンの話だと体と心が乖離してるって聞いたけど……。良い事だと思った。麗は前を向いて歩いてる。俺も前を向かないと!
「なに、ジロジロ見てんの?そのサンドイッチちょうだい」
照れ隠ししながら、麗に甘える。なんだかこの感覚は懐かしい。
「どうぞ!王様からもらったケーキもあるよ」
「父上のケーキなの⁉︎じゃあ遠慮しておく」
「なんで?美味しいよ?」
「激甘だろ?」
「それが良いんだよ。咲夜君は昔から甘いものダメだよね~」
[そうなんですか?知らなかったです]
「そうなんだよ、ヴィアラッテア。咲夜君のお父さんもケーキが大好きでね。ケーキバイキングに連れて行かれて、お父さんがケーキを20個食べたのを見てから、苦手になったんだって」
[面白いですね]
麗とヴィアラッテアが呑気におしゃべりをする。この光景は前世ではなかったけど、ほのぼのとして安心する。
ここにオカンがいれば、言うことはないのに……。
「そうそう、咲夜君、私思うんだけど、魔王って雅也さんじゃないかな?」
麗の再びの爆弾発言に思わず咽せる!
「な、なんでそんなこと!だって似てもにつかないし!」
「それ咲夜君が言うの?見た目は私も咲夜君も前世と全然ちがうよ?」
「え?でも、俺、攻撃されたし……」
「そっかぁ。じゃあ違うかな?雅也さんが咲夜君を攻撃するわけないもんね。たださ、魔王がエヴァを見る目が、なんか優しい気がしたの。ただ、それだけの理由なの。忘れて」
「うん、いや、確かにまだオヤジだけが見つかってないし、もしかして俺と同じで記憶が戻ってないとか?」
「あー!それあるかも!無意識で求めてる、みたいな?素敵ね、愛ね!」
「オカンは勘でオヤジを見つけるって言ってたから、もしかして今頃正体が分かっている可能性があるかも?」
「やだ!咲夜君、燈子さんの勘があたる訳ないじゃない!あの人の勘ほどアテにならないものはないって、良く雅也さんが言ってたよ。勘で動いて道に迷うなんて日常茶飯事って聞いてるよ」
麗の言葉に声が出ない!
そうだった……。忘れてた。オカンは人を覚えるのが苦手だ!しかも勘で暴走して良く壁にぶち当たってた!
そもそも、何年一緒にいてもオカンはラッキーと他のゴールデンを見分けられなかった!俺はなんでオカンの勘を信じようと思ったのか!……いや、単にオカンに逆らえなかったせいかも知れないけど……。その可能性が高いけど!
[エヴァ殿の件で話がある]
ウルティモが改まった声を出す。なんだか神妙な雰囲気に見える。剣だけど……。
「どうしたの?ウルティモ」
[エヴァ殿は聖女だ]
「あーーーーーーー‼︎」
突然の麗の叫び声に驚いて、耳を塞ぐ。
「え?なに、麗。ウルティモの言葉に驚いてるのに、大声を出さないで!」
「思い出したの、咲夜君!攻略サイトにあったの‼︎ エヴァンジェリーナは聖女の子孫だって!」
「聖女?王家が勇者で、サヴィーニ公爵家が聖女の子孫ってこと?確かにサヴィーニ公爵はこの国を起こした勇者の親友の弟が起こしたって聞いてはいるけど」
「そうなの⁉︎」
「そうだよ。魔王を倒す時に犠牲になった親友の弟に爵位を与えたって聞いてるよ」
「……そうなんだ……。だからエヴァは聖女なのかな?」
[そもそもが違います。神の加護を受けた者は、聖剣の持ち主なれます。つまりここで言うアダル殿とコス様です。男性であれば、勇者。女性であれば聖女と言う呼称になります]
ウルティモが俺達の会話に入って来る。
「神の加護って何?」
[コス様には神のご加護があるはずです。コス様の些細な願いは神により、叶えられているはずです]
「あ……そうか。優しい神様ね」
「優しい?試練ばかりな気がするけど?」
なんか俺と麗の神への認識が違う。俺は神託を受ける度に寝込んでいるんだよ?優しさなんてない!
[コス様の守護神は、慈愛の神です。そしてアダル殿の守護神は、試練の神です]
「あ……うん、なんか納得した」
そうか……だから神託と共に寝込むくらいの試練を与えるんだ。
正直前世では神なんて信じていなかった。だけど神託を受ける身となっては信じるしかない。そしてこの世界の神は知られる事を極端に嫌がる。だから大聖堂の教皇ですら、神々の事を詳しくは知らない。よくよく考えれば変な話だと思う。オカンがいればゲームの世界だから仕方ないとか言いそうだけど……。
「この世界の神聖文字は4文字。俺は『偶像崇拝を好まない神々』と言う文言を当たり前のように聞いて育ったから、神は4柱なのかとは思っていたけど違う?」
[そうです。だから聖剣は4本あります。ヴィアラッテア、私、セヴェーロが持っていたスピラーレ。最後の一本は、エヴァ殿の体内に封印されています]
「封印?なぜ?」
[分かりません。ですが以前、エヴァ殿を見た時に聖剣ヴィータの波動を感じました]
「ヴィータ……。俺は前にオカンの常時魔法を解いたけど、気付かなかったけど?」
[聖剣同士は共鳴します。つまり聖剣でなければ気付けません]
「ちなみにヴィータの神は?」
[献身の神です]
献身……意外ではない。納得できる。オカンはいつだって我先に怪我した人を助けようとする。エヴァ嬢が作った医療系分析魔法もそうだ。全ては人を助ける為だ。
猪突猛進で暴走機関車なオカンだけど、前世で救急医だった時も、いつも目の前の患者を救おうと頑張っていた。そのひたむきで一生懸命なオカンを尊敬していたことは確かだ。
[私の記憶ですとヴィータはヴェリタ国にあったはずです。どうしてエヴァ嬢の体内にあるのか……]
ウルティモの不思議そうな声に疑問を持つ。
「ヴェリタ国?知らない国だけど?」
[初めのご主人様達の国です。私もご主人様達もそこから来ました]
ずっと黙っていたヴィアラッテアが話す。
「ヴィアラッテア……ご主人様達って言った?」
[はい、すべてお話します]
ヴィアラッテアとウルティモが淡く光り出した。
街並みが見える。見たことない建物。行き交う人達の服も、まるで違う。
さっきまで、俺の部屋にいたのに……。
「これは過去の出来事を直接見せてくれているのか?」
[はい、お二人の脳に、直接映像を流しています』
ウルティモの声が聞こえる。
そうか、3Dゲームみたいな感覚だ。すれ違う人の体は擦り抜けてしまう。
[神殿に移ります]
ウルティモの声と同時に、場面が変わる。
人が4人立っている。
俺にに似た金の髪の男性。
コスタンツァに似た銀の髪の女性。
セヴェーロに似た青銅色の髪の男性。
エヴァンジェリーナに似た赤銅色の髪の女性。
皆、仲良そうだ。
[彼らが我々の最初のご主人様です。我々はそれぞれの神の啓示により、それぞれの主人に仕えました。魔王を倒すために]
ウルティモの説明の後に、また画面が変わる。巨大な、黒い塊。とても嫌な感じがする。その黒い塊と4人が戦っている。状況は良くない。戦いは、黒い塊の方が有利に見える。それだけ力の差がある。
赤銅色の髪を持つ女性が叫ぶ。
『これ以上は無理よ!私のヴィータに魔王を封印するわ!みんな手伝って』
青銅色の髪の男性が駆け寄る。
『すまない、この方法しか思いつかない』
『良いのよ。我が神も私の献身を喜ぶわ』
金と銀の髪の二人も駆け寄る。
4人の力が一つになり、一面が眩く輝く。
光が静まった後に見えるのは、立っている3人の人影と、倒れている赤銅色の女性。
「今の…………」
周りを見回すと俺の部屋に戻ってきた事が分かった。
目の前にはヴィアラッテアとウルティモ。
麗が目をパチパチと瞬いている。
「あの黒い塊が魔王?」
俺の質問にウルティモが答える。
[最初のご主人様達が便宜上、そう名付けました。この世界に生きる全ての者は、魔力を放出しています。その魔力が固まり、力を持った物があれです。ただ、世界を食い潰す事しか考えていない、悪しき物です]
「あの赤銅色の髪の人が、剣に魔王を封じたの?」
[そうです、コス様。彼女が自分の命と引き換えに封印しました。その後、私のご主人様とヴィアラッテアのご主人様は、旅をし、この国を起こしました。スピラーレのご主人様は、聖剣ヴィータと共にヴェリタ国に残り、結界を張って他国の人が入れない様にしました]
ここに来て魔王が出てきた。ではセヴェーロはなぜ魔王と名乗ったのか……。映像を見る限りではセヴェーロに似た男は味方のようだったが……。オカンを連れ去った事と関係があるのか?
分からない。謎は深まるばかりだ……。どちらにしろ、セヴェーロと会わなければ分からないのだろう。
まずは整理をしよう。今の時点で分かっている事を把握しないといけない。
「映像を見て、魔王の話は分かった。それを踏まえて、質問させて」
俺はウルティモに向き合う。やはりちゃんと話をするなら彼だろう。
[分かった。全て答えよう]
思った通り応えてくれる。頼もしい。
「まず、オカンの剣はヴェリタ国にあった。間違いない?」
[間違いない]
「オカンの体にはヴィータが封印されている?」
[そうだ]
「ヴィータには本物の魔王が封印されている?」
[その通りだ。そして前にエヴァ殿を直接見た際に封印の緩みが見えた]
「封印は解けつつあるって事?」
[おそらくそうだ。元々は封印だ。いつまでも持つものではないはずだ]
「魔王を倒すには聖剣の持ち主が4人必要?」
「そう神はおっしゃった」
「ではなぜセヴェーロは魔王を名乗った?」
[それは彼に聞け。エヴァ嬢の事も彼に聞けば分かるだろう]
「アウローラ山にヴェリタ国はあるんだな?」
[ヴェリタ国には案内してしよう]
さすがウルティモだ。返事の仕方が簡潔で分かりやすい。
「では最後の失礼だ。ウルティモの初めの主人は、何故詳しい情報を残さなかったんだ?伝承では勇者は一人だ。だが実際は勇者と聖女の4人だろう?コスタンツァは、聖女の血統だろう。だが王家に銀の髪の血統はない。どうしてだ?」
[それは、ヴィアラッテアの初めの主人が、浮気したからだ]
[ウルティモ!!それ言っちゃダメって言われた]
[うるさい!そもそも、お前の主人が悪いんだろう!手に手を取り合って苦難を乗り越えて、この国を起こしたのに、私のご主人様を悲しませて!お陰で私のご主人様は、私を置いて出奔するハメになったんだ!そもそもなんでお前も止めなかった‼︎]
[止めたけど、聞いて下さらなかったんだよ~。だってまさかあんなに魔力の強い女性が他にもいるなんて思わなかったし!しかもその人から積極的にアプローチされたし!]
[知らんわ‼︎]
[そんなこと言ったって、ウルティモのご主人様だって他の人と結婚したんじゃないか~。しかも私のご主人様と違ってマッチョと結婚したくせに!]
[お前の主人が先に浮気したんだろうが!そ、それに私のご主人様は筋肉が好きなんだから仕方ないだろう……。あんな筋肉隆々で魔力の強い人間がいるとは他国は恐ろしいと思った]
[うん、やっぱり狭い世界にいたご主人様達は世間知らずだったよね。最後は外の世界にすっかり感化されちゃったんだよね~]
[そうそう……色々あったなぁ]
2本の剣は昔話に花を咲かせ出した。なんだ……これ?
「これって、黒歴史だから子孫には隠してたって事かな?」
麗がそっと耳打ちしてくる。その顔は呆れながらも笑ってる。
「たぶんね。呆れた理由だよ。ドッと疲れちゃった」
「ふふ、なんだかんだで仲良さそうで良いね」
ウルティモもヴィアラッテの昔話は止まらない。その2本の剣を見て、俺と麗も顔を見合わせ笑う。
「俺は浮気なんてしないよ」
そう言って麗にキスをする。前世とは違う唇の感触。でも麗だ。俺の愛してる人。
「次は大人のキスしてね」
麗から耳打ちされる。そんな言葉は前世では聞いた事がなかった。麗はそんな要求をする女の子ではなかった。
だけど麗の真っ赤になった表情を見ると、分かった。
前世では言えなかったのだと……。
そう言えば俺と麗の最後のキスは……。
くすっと笑い、麗に耳打ちする。
「二人だけになったらね……」
まだ分からない事だらけだ。好転したのかも分からない。だけど大丈夫だと思えた。
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