第24話

森の奥に進んでいくにつれ魔物の量が増え、魔力の密度もどんどん高くなっていく。

とはいえ、魔物の強さは低級階級ばかりなのでそう苦労はしない。


地底炎フレイムエア!!」


自身を中心に、乱状に地面から炎を放出する。


これはゴルゴスが使っていた技を参考にしたものである。敵とはいえ、技術を盗めるものは盗まないと強くはなれないからな。


テオは俺の「地底炎フレイムエア」を飛び越え、地面に拳を叩きつける。その威力で周囲の魔物は高く吹き飛んだ。


黒喰ヴァイータ


殺しきれなかった魔物を俺の魔法で確実に殺す。


「ナイス連携」


テオは一旦俺のところに戻ってくるとグータッチをする。


「これでひと通り片付いたか」


辺りを見回して、敵が居ないか確認する。


「ま、この様子からすると召喚魔法だろうな」


召喚魔法。魔法陣を介して自らが使役する魔物を召喚する。けど普通の人間の場合、この魔法を使えるのは勇者以外にほぼ居ない。しかしその肝心の「魔法」の勇者も存在していないため、その可能性もほぼゼロだろう。


「ということは、どこかに魔法陣が仕掛けられてるのか」


「そう考えるのが妥当なんだが……めんどうなことに、魔法で巧妙に隠されてやがる。位置を特定できない」


俺も念の為に探知をかけてみるが、テオの言う通りそれらしきものは見つからない。


「とにかく、一旦里に引き返した方がいいんじゃないか。万が一のこともあるだろう」


俺がそう言うと、テオも頷く。

と、その時。


ドォォォン!


空高くで何かが爆ぜた。


「「!?」」


空を見ると、なんらかの闇属性の爆発が起こり黒煙が舞っていた。


「この魔力……アーシャ!?」


瞬時にそれがアーシャのものだとわかった。

嫌な予感がする。俺は思わず駆け出していた。


「お、おい!ベラ!?」


テオも慌てて俺の後に続いて走り出した。


────────────────────


「な、なんだよこれ……!?」


エルフの里が、謎の物体に飲み込まれていた。謎の物体、まるで黒い泥のようで、それでいて不気味な魔力を纏っている。1度はまったら抜け出すのは無理そうだ。


「ありゃあ……やばそうだな」


テオも少し苦笑いを浮かべる。

全くもって同感である。


というか、先程のアーシャの魔法はここから打ち上げられていた。


……まさか。


「おい、待てよ!まさかに突っ込むつもりか!?」


とっさに走り出そうとした俺をテオが腕を掴み引き止める。


「あそこに……俺の仲間がいるかもしれないんだよ!」


「!?」


テオは俺の言葉に目を丸くする。


「まじかよ?」


「ああ。かすかにだが、仲間アーシャの魔力の残穢ざんえを感じる」


リディもエルフで魔力量が多いおかげで、僅かにだが感じ取ることができる。


もし、あれに呑み込まれてるのだとしたら一刻も早く助け出さなければならない。



「あれぇ!?もしかして、お仲間さん巻き込まれちゃった感じかなぁ!?」


「「!?」」


突然、上から声が響き渡る。


上を見ると、空中に誰かが立っていた。


目を凝らすと、徐々にその正体が見えてくる。そして、そいつが誰だかわかった瞬間

俺は激しい怒りに飲み込まれた。


「お前は……!!」


村を壊滅させた最凶の存在、「剣」の勇者レオノス。


「白髪にフード……やっぱりてめえがゴルゴスを殺した魔道士か?」


「!」


レオノスは俺を探るような表情を浮かべる。様子からして、流石に俺があの村の生き残りだとは気づいていないようだが。


「そうだ、と言ったら?」


答えると、レオノスはニヤリと不気味な笑みを浮かべる。


「俺は仲間思いだからなぁ……こいつで殺して仇を取ってやるんだよぉ!!」


手を上にかざしながらそう叫ぶレオノス。それと同時に沼からズブブブ……と四足歩行の魔物らしき泥の怪物が出てくる。


そして、その怪物の中に大量の魔力反応があった。


「この魔力量……お前、エルフの里の人達をどうした!?」


「察しのいいことで何よりだぜ?エルフは魔力量が多いからなぁ……この悪魔を召喚を手伝ってもらいましたぁぁ!!」


「悪魔……まじかよ」


テオの顔がひきつる。


悪魔について、前にクロノスに聞いたことがある。悪魔とは魔王になる前の姿であり、魔物の上位互換。普段は下界に住み着いているが、時折なんらかの影響で現実世界にやって来てしまうのだ。


その影響とやらが、まさしく今目の前で起こっているこれのことである。


「あの化け物の中に、俺の仲間の魔力も……混じってる」


アーシャとリディを見つけられなかったのは、これが原因か。


「お前たちが囮の魔法陣の方に向かっていってくれたおかげでよぉ……沢山のエルフを捕まえられたんだぜ!?感謝しきれてもしきれないよなぁ……あひゃひゃひゃ!!」


反吐が出そうなほど甲高く気持ちの悪い笑い声をあげるレオノス。


こいつ、あの日となんら変わっちゃいない。


「●●●●●!!」


悪魔が咆哮する。それと同時に口から光線を吐き出す。


「「!!」」


俺とテオは間一髪でそれを躱す。先程俺たちが立っていたところは跡形もなく溶かされていた。


「さぁて……悪魔こいつの中にいればいるほどどんどん体は腐食されていく……早く助け出さないと、みんなまとめて天界行きだぜぇ!?」


「!?」


ニヤニヤと薄気味が悪い笑みを浮かべるレオノス。


「なっ……!おい、ベラ!早くしないと……って、ベラ?」


なんて言った?


あいつ、今なんて言った?


死ぬ?


あの中にいるやつは全員……死ぬだと?


また死ぬのか?


また何も罪のない人達が殺されるのか?


また俺は大切な人、仲間を失わないといけないのか?


「お、おい……ベラ?」


ギリギリと手を強く握る。あまりの強さに、血が滴り落ちるほどに。


『おい、落ち着け』


いつの間にか起きていたクロノスがそう言うも、俺の耳には全く届いていなかった。


「絶対……殺す」























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