記録No.6 派遣準備2



カチカチカチカチと、リズミカルな振動が空気に混ざる。

外で、グォォォン、とジェネレーターの稼働音が鳴る。


「出力ゲージ異常なし…装備表示異常なし…機体損傷度ゼロパー…」


画面を確認しつつ作業の最終チェックを済ませていく。

口に爪楊枝を含み、爽快感を感じながら。


「お〜っし…ビームキャノンから機銃まで異常なしだ、いつでも飛べるな」

「ミス無しか?完璧だな」


コクピットから出ると、整備長が待っていた。

シャロがいるかと期待してしまったが、何時間作業したやら分からないほどコクピットにいたので、おそらく部屋にいるままなのだろう。


「データミスするようなパイロットは戦場に出ちゃいかんだろう?」

「案外居るもんだぞ、候補生とかな」

「俺も候補生なんだがな…」


と口角を少しあげながら答えると、「普通の候補生は実践でエースと張り合えねぇよ」と笑いながら返されてしまった。

否定できないので目を逸らしつつ片眉を上げてもう片方を下げた。


「候補生…いえ、ディーコン大尉、準備は整いましたか?」


凛とした聞き覚えのある声が耳に入ってきた。


「エイヴリル少佐…」


振り返るとそこには、将来の上司がそこに立っていた。

相変わらず長い髪である。

しかししっかりと管理は端まで行き届いているようでつやがあり…


「…大尉?」

「ん、あぁ、いえ、少しぼーっとしていて…」

「疲れてんじゃねぇのか?ずーっとこもりっぱなしだったしな」

「そうかもしれねぇ…」


俺は両目頭に右手を当てつつ答えた。

おもった寄り目に疲労が溜まっているようで、少し快感があった。

しっかし…なんだ?今の感覚…


「そうだろ…そういや、シャロはどうしたんだ?」

「あ〜シャロなら途中で飽きて、部屋で寝てるって言ってた…俺も寝てぇ…」


と本音を漏らすと、頬に微弱な痛みが走った。


「大尉〜?早くしてくださいよ?こっちとしては、向こうの援護に一刻も早く向かいたいんですからね」

「いてて…わかりましたから、そんな引っ張ることないでしょう…」


少佐は少しむっとした声でわざわざ告げてきた。

…少々鋭い目で見ているつもりなのだろうが、なんというか、身長さのせいで可愛さが勝っている気がしてならない、というかしている。


「まぁまぁ、少佐さんよ、一応大尉もサボってたわけじゃねぇんだ、あと今は5時ぐらいなんだから、夜中に出発とかでいいんじゃないか?」


整備長は恐らく俺が疲労で対応に困っていると取ったのだろう。

優しさがしみるぜ…


「ふ〜む…それもそうですね…如何せん、この人の初対面の時のイメージがちょっと残ってまして…」

「初対面ん時?俺なにかしてましたっけ?…」


手と距離を離しながら、小佐は苦笑いをしていた。

初対面時…と俺は思いにふけっていると、


「…酷い目付きで爪楊枝をくわえてました…微妙に怖くもありましたよあれは…」

「…あ〜…あれはぶっ通し作業の後でしたから、というか、あの時の態度はそれが原因だったんですか…」

「それもありますけど…なんかこう、覇気を感じたので…」

「どこぞの海賊漫画じゃないんですから…」


半笑いで返したが、少佐は真面目そうに「いやでもほんとに…」と言っている。

覇気なんてもん、俺にはないと思うのだが、少佐はそうではないらしい、ひたすら訴えてくる。

まぁ多分あの時の態度を正当化するための誤魔化しなのだろうが。

一旦少佐の気を紛らわすために、


「少佐、俺一応本当に疲れてはいるんですが…」


この場から離れるための口実を作った。

一応事実だぞ。


「…と、とりあえず、深夜頃に出発にしますからそれまでに色々整えておいてくださいよ」

「了解しやした〜」


了承を得られたので、俺はとりあえず飯を食いに行った。

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