第6話

2月10日。

気づけばバレンタインまですぐそこだった。


色々と迷った挙句、生チョコを作ることにした。

家に帰って、何度もつくった。練習を兼ねて。

そして、やっと、思い通りの物が作れた。


ラブレターも書いてみた。

誰かのために本気になるって、多分小学生以来だ。


そして、とうとう当日が来てしまった。

杏奈には、既に報告済みだから『がんばっ!』と一言。背中を押してくれた。


ちょっと可愛らしい服装に着替え、頑張ってつくったチョコが入った袋を手に家を出る。

今の私は、お花畑にいるようだ。



そんな気分も、リンクが近づくにつれて緊張に変わった。

好きな人には、好きな人がいる。そんなのわかってる。

だけど、気持ちだけでも伝えてたとえお返しは来なくても渡したい。

この手紙に、このチョコに、自分の気持ちを精一杯込めたんだ。


リンクの扉を開けると、まだ人っ気はなさそう。

結翔くんも、まだ来てないのかな?

でも、ドアは開いたからいるはず。


ほんの少しの期待をかけ、少しずつ足を運ぶ。


「……です」



え? 今、結翔くんの声がした。

よく聞くと、誰かと話しているようだ。


恐る恐る進むと、そこには……。


「羽柴くん、ありがとう」


あの子と結翔くんだ。


どうしよう。引き返そうか。

でも、足が動かない。


なんで?


この状況に置かれている以上、帰りたいのに。


「私も、羽柴くんが好き」


え?


「俺と、付き合ってください」


え?


「はい。私で良ければ」



終わった。



私の、恋が──。

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