No.36 トータナス、めっちゃ怖いですがやってみます!


トータナスの元にアギーが現れ、死の門とそこから生じた怨念に関しては対処ができたことを報告する。


「門は閉じられ、国は守られたか……やはり貴様は消すべき存在のようだ」

「みなさんを守るためにも消されません!」


アギーはそうトータナスに言い返す。


「貴様程度の存在が!この我に口答えをするな!」


「よくやったぞアギ―!さあ、あとはコイツ囲んでシバキ回そうぜ!」

フラマーラがそう言って肩をグルグル回す。


「この力を使うのは少しばかり気が引けるが」

トータナスは地面に手を触れる。

するとアギー達の足元に陣が現れた。


「これは!?召喚陣か?」

「ここに来てまた破壊者か!芸のないやつ」

グレイシモンドとテネバイサスがそういう。


「さあ、どうだろうな?」

トータナスは地面に魔力を込める。


「いやちがう!アギー!」

何かに気がついたフラマーラはアギーに二振りの斧を持たせ、突き飛ばした。


陣が光ると禍々しい紋様が走る光の壁が現れた。


「召喚陣じゃない、それは!!」

アギーもここで気付いた、その陣は見慣れた召喚陣ではない。以前自分が深淵の破壊者を元の世界に送り返したものとも違う。


「そのとおり!封印陣だ!ハハハハ!間抜けな連中だ!再び封印されるとはな!簡易的なものではあるがこれでもう連中はこちらに手出しできんぞ!待っていろ、貴様らの大事なこの小娘を殺し、貴様らにも死を与えてやる!」


トータナスが笑い声を上げる。


「そんな……!」

アギーは落胆の声をだす。


「おいアギー!」

すると壁の中からフラマーラが呼びかける。


「なにボサっとしてんだ!」

「我々に構うな、成すべきことを成せ!」

「心配するな、お前は強い」

「あんなヤツ、アギーちゃんなら問題ないわ!」


壁の向こうから魔王たちがそういった。


「わかりました……やってみます」

アギーは斧を手に取る。


「ハハハハ!!貴様のような者に何ができる!この力の前に!!」


トータナスの肉体が変化していく。


皮が張り裂け、骨が折れては戻るを繰り返す。

そんな異様な音を上げながら彼は変貌する。


巨大で灰色の岩のような象の身体に巨大な猿の腕、人の顔に象の牙を生やし、身体の至る所から蛸の足が生えている。


まさに異形、怪物と呼ばず何と呼ぼうか。


「ハハハハ!!時間切れだ!破壊者達の力を取り込む事が、今しがた完了した!」


巨大な体でアギーを見下ろすトータナス。


「なんだ、さっきよりもずっとちっぽけになったな?召喚士よまるで虫けらはのようだぞ」


「あ、あなたが大っきくなったんです!!」


「虫けらは叩き潰すに限るな」

トータナスは手を振り上げる。


「わ!わわわ!!」

走り出すアギー。


「あー!コラ!逃げんな戦え!」

フラマーラが野次を飛ばす。


「分かってますけどーーー!」

「破壊者たちに比べたら大した規模では無いだろう!しっかりせんか!」

グレイシモンドも同様に発破をかける。


「は!確かに!」

立ち止まって振り向くアギー。


すぐ後ろにはトータナスが彼女を見下ろし立っていた。


「逃げ回るだけでみじめな奴だ。そう言えば、貴様は救世主を求め奴らを呼び出したのだろう?しかしどうだ!連中はもう使い物にならん、ただ壁の向こうから叶いもしない言葉を貴様に投げかけるだけだ!なんとも無責任じゃないか、貴様も貴様だが連中もたいがい惨めな連中だッ!」


「そんな事ないです!皆さんはとっても立派です!みんなの為に必死で闘ってくれるそんな方々です!」


アギ―は言い返す。


「減らず口を焼け消えろ!」

トータナスは猿の腕から爆炎を放つ。


「でもやっぱり怖いです!!」

植物を発生させ、急成長させる。その先端に掴まりアギーは炎の一撃を回避した。


「逃がすか!」

トータナスが象の牙を振るうとアギーが掴まっている植物が根本から凍り始める。


アギーは蔦を発生させてトータナスの身体から生えている猿の腕に巻きつける。


「あああ!!」

凍結が自身に及ぶ前にアギーはその場を脱した。


「小賢しいガキが!」

腕を振るって振り落とそうとするトータナス。


振り落とされたアギーは顔面から地面にダイブした。


「いたた、あー、危なかった」


「なんか決まらねぇなアイツは」

「いつも通りだな」

どこか緊張感が今一つ欠けているアギーにため息をつくフラマーラとテネバイサス。


「逃げてばっかでは勝てんぞ!」

トータナスは蛸の足、その先端にある蛇の頭から灰色の煙を吐き出した。


「アギー!それは毒だ!吸い込むな!」

「毒!?えーっとえーっとそれじゃあ!」

テネバイサスの声をきいてアギーは、自身の周囲に植物を生やす。


花が咲くと周囲に迫ってきた毒の煙が消えていく。


「ふぅ、一安心です」


「煩わしい雑草がッ!!焼き払ってやるわ!!」

今度は両方の猿の腕から大量の焔を放つトータナス。


「今度は植物なんぞ使わせんぞ!!」

先ほどよりも遥かに広い範囲に焔が拡散していく。


植物を出している暇は無かった。


「ど、どうしよっ」

アギ―がそう言って屈むと彼女の身体が耀に包まれる。



「え?」

気付けば、なぜか彼女は上空に飛び出してた。


彼女の視界の下方には焔の海が広がっていた、もし今もあそこにいたらただでは済まなかっただろう。


「何!?今のは!」


トータナスが驚いた顔で見上げる。


「ならばこれでどうだ!」

彼は頭上に無数の光の珠を生み出す、灰色の光の珠は矢のようにアギ―目掛け放たれる。


「今の感じ、もしかして……」

「アギ―ちゃん!!」

アウレンデントが呼ぶがアギ―は自身の手をただ見ていた。

そこにはいつの間にか黄色の小さな花が咲いていた。


光の矢がすぐそこまで迫ってきている。


「次に行きたいのは……あそこ!」


アギ―はトータナスの背後を指さした。すると、彼女の身体は再び耀に包まれ、雷光のようにトータナスの横を駆け抜けていった。


通り過ぎざまにトータナスの顔に傷をつけたようだ、彼の顔から灰色の血が流れる。

「き、貴様!!その力は、どうして貴様にそれが扱える!?」


アギ―が使ったその力はまさしくアウレンデントの耀の力だった。


「そうよ!私達はアギ―ちゃんに召喚された事で魔力の繋がりが出来ている!例え私たちがここに閉じ込められていてもそれは変わらない!アギ―ちゃん、私達の力を使って!」


アウレンデントはそうアギ―に呼び掛ける。


「皆さんの力!はい、やってみます!」


「それがどうした!今更そんな連中の力を使った所で!!」

トータナスは灰色の焔を放つ。


「まずは、これ!」

アギ―は手に紫の花を咲かせる。

花と同じ紫の煙が大量に吐き出された。


「そう来たか!ならば!」

トータナスは灰色の焔に自身の死の力、怨念を纏わせた。


「いや、大丈夫だ」

テネバイサスがそう呟く。


焔は煙に直撃、しかし突破する事はなくそのまま煙の中に飲まれていった。


「行きますよ!!」

紫の魔力を纏った灰色の焔が勢いよく、トータナスに向けて放たれる。


それはトータナスの身体の一部を吹き飛ばす程の破壊力だった。


「何だとォォォッ!?」


トータナスは吹き飛んだ体の一部をおさえて苦しんだ。


「おおお!効いてるぞ!」

「そういえば先の耀の力をアギ―ちゃんが使った時も結構効いてるかんじだったわね。私達が使い魔を出しているのと同じようにアギ―ちゃんの魔力が入ってるからかしら?」

フラマーラとアウレンデントが苦しむトータナスをみてそう言う。


「それもある、だが一番大きな要因は奴が持つ魔力の種類、その割合が変わったんだ。奴は今【自分自身の魔力】、【俺たち4人の魔力】そして【破壊者たちの魔力】を持っている」


「先までは魔力の性質が我々に近い、だから我々の攻撃を大きく軽減出来ていた。しかしそれが今は変わってしまったから今まで程の軽減はできんという事か」


テネバイサスの説明を聞いてグレイシモンドは理解した。


「これマジで行けるんじゃねぇか!」


フラマーラが興奮気味にそう言った。


「召喚士がッ!!」

トータナスは自身の身体を変形させ吹き飛んだ部分を元に戻しながら、アギ―を睨みつけた。


先ほどまでとは違う、彼の目にはハッキリとうつるものがあった。


異形と化したトータナスの前に立つアギ―だった。


そんなアギ―はトータナスに指を向ける。

「あなたをここで……ぶったおします!」

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