No.15 冷たすぎる大きな怪物さん?!


突如として現れた巨大な象のような怪物。


その巨体は山脈化と見間違える程。


「おい、なんだよあれ……」

流石のフラマーラもこれには驚愕し、呆気に取られていた。


「ブオオオオオオオオオッッ!!」

巨大な象が鼻を天に突き上げ咆哮。


すると猛吹雪が吹き荒れる。


「いかんッ!距離を取るぞ!」

グレイシモンドの発言に従ってアギ―達は山から離れる。


山とその怪物は巨大な吹雪の竜巻に囲まれた。


「グラド、あれは一体」


「申し訳ないが、全く分からないよ。なんにせよあいつが持つ魔力は一体、魔力だけみたら全盛期の頃の君と遜色ないくらいだ。この世界の魔王すら凌駕している」


「あれは召喚術でした。前の祠では崩壊していたので召喚陣が崩れていましたが。同じものが空にありました!」

アギ―が目撃した召喚陣について話した。


「つまり祠を守る為に呼び出された別世界の者という事か」


「なんにせよ、早く対処せねば」

グレイシモンドとグラドが怪物の方をみると相手はこちらを見ていた。


すると怪物の方から吹雪が襲って来た。


「ッ!!」

咄嗟にグレイシモンドとグラドはアギ―達の前に立ちその冷気を防ぐ。


「やってくれたな!この象やろう!」

「お返しよ!」

フラマーラとアウレンデントが焔と雷を放った。


いずれも周囲を明るく照らす程の強力な一撃。しかし、それらは竜巻によって弾かれてしまう。


「とどかねぇか!」

「あらら」


この間も吹雪の勢いは増していく。


「いかん、この吹雪が街まで到達したらッ!!流石に耐えられん」

「アギ―!貴様らは街に戻って対処しろ!ここは我らに任せるのだ!」


グレイシモンドはそう言ってアギ―達を街へと向かわせる。



国を囲う城壁の上にアウレンデントが稲光と共に現れる。


―― 一足先についたわ、こっちの声は聞こえるかしら?吹雪は山側から向かってきてるけど、あっという間に国を包んじゃうわよ ――


「あ!アウレンデントさんの声!聞えますよ!」

「へー、これが電言術か便利なもんだな」


どうやら4人はテレパシーのようなもので連絡できるようになっているらしい。


「これを使えば離れていてもお互いの状況を報告する事が出来る。アウレンデント、フラマーラ、そして俺は三方向に展開してこの冷気が国に侵入するのを防ぐ。アギ―は住民を国の中央に避難させるんだ」


テネバイサスが今後の行動について確認する。


そして街に到着した3人は各々の役割を果たす為に動きはじめる。



「さあ、やってきたぞ!」

フラマーラ達が城壁の上に到着するともう目前まで猛吹雪が迫っていた、まるで白い壁が押し寄せてくるようだ。


フラマーラ、アウレンデント、テネバイサスは魔力を放ちその吹雪が国に侵入するのを防ぐ。


アギーは城の者達や衛兵に事情を説明する、すると彼らに国内中に放送出来る場所に案内される。


「アギー様、さあ、こちらに。話しかけられれば国中に声が届きます!」


「みなさん!国の中央へ!落ち着いて移動してください!助けが必要な方がいたら教えてください!すぐに避難場所を作ります!暖を取れるもの、食料などは近くの植物に持たせてくれたら全て広場まで運びます!」


アギーはその放送を終えてすぐ、植物で中央広場にシェルターを作る。更にそこから彼女はシェルターから植物を広げる、その植物が住民たちの荷物を持ち運ぶのを手伝う事でより迅速な避難を促した。


「アギーさん!俺たちも避難の手助けするぜ!」

「我らもグラド様の忠臣として民を守るため尽力致します」

「ありがとうございます!」

街の酒場の店主や城の者達も彼女に協力し、人々の避難誘導や手助けをした。


――こっちはなんとかなりそうです。みなさん大丈夫ですか?――


――ああ、今のところはな、だがいつまでもこれ続けるわけに行かねぇぞ!勢いがどんどん増してきやがるっ!――

フラマーラが返事をする。


現状はなんとかこの超冷気を防げているがそれもいつまで続くのか分からないという。


――私達はまだまだ全開になれないから、このまま防ぎ続けるのはいい案じゃないわね。結局大本をどうにかしないと――


――そうは言ってもあの怪物が持つ魔力は本来の俺たちに匹敵するものがある。あの二人でも相当厳しいだろう、悪いがこっちもそう長くは持たない――


アウレンデントとテネバイサスもこの状況が長引けは結果はよくない事になるという。


「なんとかする……あ!あれだったら」

アギーが何かを思いつく。


「すみません!ここをお願いしてもよろしいですか?」

「ええ、お任せ下さい、アギー様もシェルターに入らないと……ああ、アギー様!!」

側にいた協力してくれている人が呼び止める前にアギーはその場を飛び出した。


アギーは避難する人の中である人を探していた。


「あ!すみません!」

「おお!お客人のお嬢さん、この植物はあんたがやったのか?俺と店のモンだけじゃ店の食料は全部運べないからな、これだけあればみんなに飯を配れるぜ!」

それは酒屋の店主だった、彼は大量のの食料などを運んでいた。


「それは良かったです、あ!えっと、お花屋さんって誰かご存知ですか?」

「おい!お前ら花屋知らねぇか?!こちらのお嬢さんがお探しだ!」

店主が従業員達に聞く、すると一人の従業員が答えた。


「花屋のばあさんなら誰かにおぶって貰って避難してました!」

「本当ですか!」


それを聞いたアギ―は酒場の店主たちと中央広場に行く。


既に多くの人々が避難していた。

シェルターは人が増えるにつれそのサイズを大きくし、2階、3階と階層も増やしていた。


「お!いたいた!あの花柄の頭巾被って背を曲がったばあさんだ!」

従業員の1人が指を差す。


「あ、あの、お花屋さんですか?」

「ん?あらまぁ、綺麗なお嬢様、こんなばあちゃんに何かようかね」

相手のおばあさんはゆっくりとアギ―の方を向いた。


「おう!花屋のばあさん、このお嬢さんが花が欲しいんだと」


「えっと、お花の種が欲しいんです。極氷蓮の!」

「持ってるかい?」

アギ―と店主にそう言われたおばあさんは自分の鞄から一つの袋を取り出した。


「勿論さ、この花はこの国に生きる人間の魂のようなものさ」

「それ売っていただけませんか?」

アギ―は相場が分からないのでとりあえず金貨の詰まった袋を取り出し、それごと渡そうとする。


「お金はいいよ。グラド様と一緒にこの国を守ってくれてるんだろ?」

おばあさんはそう言ってアギ―が出した袋を仕舞わせて、種の詰まった袋を渡す。


「これが何の役にたつかは分からないけど、きっと上手く行くわ。頑張ってね」

優しくそう告げて袋を受け取ったアギ―の手におばあさんは手を重ねた。


「はい!私達が必ず皆さんとこの国を守りますから!」


アギ―はそう力強く言ってその場を走り去った。


「あのお嬢さん、おっとりした感じの人かと思ったけどしっかりしてるなぁ」

「何言ってんだい。あの子は誰よりも強い目をしているじゃないか」



植物を利用してアギ―は城壁の上に跳び上る。

そこにはフラマーラが出せる限りの炎を放ち、国を飲みこもうとしている冷気を抑えていた。


「あん!?アギ―?!何しに来た!」


アギ―の気配に気付いたフラマーラが怒鳴るように話しかける。


「フラマーラさん!手伝って欲しい事があるんです!

「手伝うって何を!?こっちも結構手一杯なんだ」

そう言われたアギ―は息を吸った。


「私をグレイシモンドさん達の所へ送って欲しいんです!」


「はぁ?!」


思わず振り向くフラマーラ、アギ―は一体何を思いついたのだろうか。


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