第3話 魔力判定

さて、晴れやかな空の下、あっという間に魔力判定の日がやってきた。

近くの教会には、同じ12歳の子たちがわらわら。


「エマ、緊張してる?」

にっこりと微笑みながら、母さん。

今日も眩しいです…。


「ちょっとだけ!でも楽しみよ!」

私も負けずにニッコリ。


そんなキラキラ親子に視線が集まる。

自分で言うのもなんだけど、分かるわ。


それはさておき。

だんだんと私の順番が近づいてきた。

何だかんだ、やっぱりちょっと緊張しちゃうなあ。


「母さんは水魔法と火魔法少しで、魔力量も普通だったけれど。生活魔法として使えるし、便利よ。聖エミだったらいろいろ分かるし、任せて」


「ありがとう、母さん」


そうね、目指すは自立した女性!

与えられた才能で頑張ればいい。


皆それぞれ順番に判定を受け、「やったー!火だ!」とか、「二つあったよ!」とか盛り上がっている。


「次、エマさんね。どうぞ」


私が生まれる前からこの教会にいらっしゃるシスター長、メイが、笑顔で水晶を指す。優しく歳を重ねてこられた、穏やかな方だ。お顔にもそれが表れている。


「はい」


私は教わった通り、水晶に手をかざす。この水晶の中に、それぞれの属性の色が出るらしい。


私が手をかざすと、今まで見たことのない七色の光がぱあっと水晶の中で輝いたと思ったら、更には教会を包み込むほどまでに広がり、10秒ほどで収まった。


皆呆然としている。


ちょっとは何かあるかなと予想はしていたものの、私も呆けてしまっていた。



「聖女様だ…」



誰かが言い出した。


それが口火となり、「聖女様!」「すごい!」とにわかに騒ぎになりだした。


私がおろおろしていると、

「皆さんお静かに!確かにエマさんが聖女の資質がある可能性がありますが、本殿で確認する必要があります。あまり大きな騒ぎにしないよう」

と、シスターメイが場を納めてくれた。


そして私を振り返り、

「エマさん、あなたにはお話があります。全ての判定が終わるまで、申し訳ないけれど奥の部屋で待っていただける?お母様と」

そう、穏やかな笑顔で語りかけてくれた。落ち着く。さすがシスターメイ。


「はい」


「ありがとう。では、シスターリリ、お二人を案内して」助手をしていたシスターへ話かける。


「かしこまりました、こちらへ」


「はい」


私たち親子はシスターリリについて、教会の奥に向かった。





教会の手作りクッキーをいただきながら、待つこと小一時間ほど。


シスターメイが変わらぬ穏やかな笑顔で戻られた。


「お待たせしてごめんなさい」


「「いえ」」母と同時に言う。


そんな私たちを、とても温かい目でみているシスター。


「あなたたちは、本当に仲の良い親子ね」


「えへへ、ありがとうございます」と、私。


微笑む母。


すると、シスターの笑顔が、ちょっと困ったような、申し訳ないような表現に変わった。そして、言いにくそうに話を切り出す。


「先ほどは皆にああ言いましたけど…エマさんが聖女なのは、ほぼ確定だと思います」


うん、だよね、そんな気がした。


中身これでいいですかと思うけど。前世思い出しちゃったからなー。


「そして聖女は、12歳からの三年間は俗世から離れ、教会の本殿で聖女としてのあり方など、いろいろと学んでいただくことになります。


16歳からは学園に編入する形になるけど、学園も聖エミールではなく、グリーク学園になるの。その為の作法も覚えてもらうように、という理由もあるわ。その最初の三年間は、手紙のやり取りは認められているけれど、家族とも会えないのです」


「え…」


私は困った顔をしながら母を見る。


聖エミに自宅通学する予定だったのだ。


母は笑顔で、

「仕方ないわ、エマ。少し…いえかなり寂しいけど、素晴らしい魔力?聖神力?を授かったのだもの、人様の役に立たないと」

と言った。潤んでる瞳が刺さる!


これ、私いなくなって、逆に母は大丈夫かしら…ふとどきものとか…


「母さん、私、頑張るのは嫌じゃないわ。ううん、むしろちゃんと頑張る!」


元、モブからすると、楽しみな方が多いくらい。けど。


「母さんが心配」


ふとどきものとかふとどきものとかふとどきものとか。


うちは母子家庭だ。父さんがいないのだ。


私がいろいろ考えている事に気づいたのか、

「エマさん、大丈夫よ。お母様は教会がきちんと守るわ。大事な聖女…娘さんを預かるのだもの。教会の神官が悪意をはね除ける結界も張るわ」

と、シスターが申し出てくれた。ありがたい。


「ありがとうございます、シスター!」


「ふふ、どういたしまして。当然のことよ。それよりも、エマさんの方がお母さんみたいね、ふふっ」


ギクッ!


ちょっと隠しきれないプラス年齢が出ちゃったかしら。


気を付けよう。バレても困らないような気もするけど、わざわざ言いたくないという気持ちもある。


「そうなんです、エマはしっかり者なんですー」


嬉しそうな母。その笑顔、私よりよほどヒロインだな。


まあ、そんなこんなで、安心して聖女修行をすることになりました。



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