第2話 私の進む道

さて、お腹も落ち着いたところで。


ちょっと今後を考えてみましょう。


ここはグリーク王国。西に雄大なエラリカ山脈、東に広大なユーサラ河があり、肥沃な土地に恵まれた、安全な国だ。


この国の人たちはみんな、大なり小なり魔力を持っている。基本はやはり四大要素の水、火、風、土。光や闇は珍しいが、全くいない訳ではない。そして細かく言えば、いろいろな魔力があったりする。勉強すれば、掛け合わせたりできるしね。やはり血筋で貴族の方が多くの魔力を…という傾向にあるが、平民からもなかなかの人達が出たりもする。



この国には学園が二校あるのだが、そういったことを考慮して、ある意味学校は平等。



貴族のご子息ご令嬢が通うグリーク魔法剣術学園と、平民の子どもたちが通う、聖エミール学園。


あら結局分けられてるじゃんと思うなかれ。


まあ、分けられてるには違いないけど、やっぱり生まれ育った環境が違うとどうしても価値観の相違や、マナーの違いなどが出やすくなる。この国の貴族で平民を雑に扱う人たちはほとんどいないが、トラブルが起きると平民不利は否定できない。あれよ、日本でもお嬢様お坊っちゃま学校はあるでしょ?同じ同じ。


でも二校の交流会とかも割と頻繁にあったりとかして、まるっきりの分断ではない。



聖エミは、初代の聖女、エミール様が国民皆の為にと国王に上奏して創立した。ご自分の褒美を辞退したそうだ。素敵。平民でも優秀な者もたくさんいるので、そのままにしておくのは本人も国にとってみても勿体ないことだと。もう何百年も前の人なのに、前衛的な考え方だよね。憧れます。



で、そんな訳で、両校とも国立!学費はタダ!


いやほんと、いい国に生まれましたよ。


学院は13歳から18歳まで。グリーク学園は全寮制。


聖エミは家業を手伝う子とかもいるから、通いでも寮でもOK。それぞれ魔法を磨いて国の省庁を目指したり(もちろん平民でもなれる!)、魔法剣士を目指したり(これも平民でもなれる!)、さらに商業や農業や建築に特化した科もあったりする。12歳以前も、教会で読み書きを教えてくれるので、この国の識字率はほぼ100%だ。


なもんで、エミール様の読み通り、グリーク王国はなかなかの大国で、なかなかのお金持ち国家になれました。やっぱり国力を上げるのは人よね。



で、私も12歳。


もうすぐ魔力判定を受ける頃だ。


それで自分の属性を認識し、やりたいことと擦り合わせてクラスと学科が決まる感じ。


「いろいろやりたいことは考えているけれど…。何事もなく済むのかなあ」


この顔でスタイルで、モブだったらいっそ清々しいが。



前世の私は、ザ・普通!で、そりゃあガチガチのモブでした。まあ、愛する家族に恵まれてそれなりに幸せだったから、文句はない。


キラキラしていた人達が羨ましくなかったかと言われたら、羨望0です!とは言えないけれど。


「前世で早死にしたりして、それが納得しにくい人生で、こんな風に生まれ変わったらテンション上がって、自分の世界だわ!ってなる気持ちも分からなくもないけどなあ…」


いくつか、そんなお話があったよなあ。



だけど。



「浮気はダメ!!絶対!!!」



前世での旦那様はなかったけど(多分)、付き合った彼氏とかには痛い目にあったりした。そりゃあね、生きていればいろいろと……ブツブツ。


ともかく、だ。


狙って人様のにちょっかい出すとか、ねぇ。普通に引く。


「何があろうと、婚約者様のいる人には近付かない!」


こと、と、


誰しも大人になるとあるであろう。勉強しておけばよかったと何度思ったことか。


「勉強も一生懸命やる!魔法省とか目指しちゃったり?」


「退職金とかあるのかしら…悠々自適な老後を送りたい…今生は長生きしたいわあ」



前の人生をやり直せる訳じゃないし、未来が分かる訳ではないけれど。せっかくの人生経験もありがたく受け取って、楽しく生きていこう。



「憧れのキャリアウーマンになれるかなあ」



もともと健康で、もうすっかり風邪も治り、元気いっぱいの私はかなり浮かれていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る