第20話 ケットシー
(何あれ……誘ってるのかしら?)
私はピンと立った縞模様の尻尾を見て、そんなことを考えた。
触れたいと思うが、それを躊躇させるような孤高の雰囲気を発している。
その美しい毛並みは、元の世界ではよく見かけていた『
奈良時代、経典をネズミから守るために輸入された雉トラが日本猫の始まりだという説を聞いたことがある。
もしその説が本当だしたら、雉トラは日本猫の元祖ということになる。
久しぶりに見た故郷の光景は、最近ちょっぴりホームシックの私を誘っているとしか思えない。
(って言っても……日本で見てた雉トラは二足歩行でもなかったし、長靴も履いてなかったけど)
そう、目の前で歩いているその雉トラは何かしらの種族の人であり、この世界では『人間』と称される存在だ。
そして、ただの猫とは違い立派な長靴を履いている。革素材の長靴なのでロングブーツと言ったほうが正しいかもしれないが。
元の世界でも猫が服を着させられることは珍しくないものの、長靴を履かされることはまずないだろう。
雉トラさんの背は低く、ちょうど先日出会ったクーシーのシバさんと同じくらいしかなかった。頭の高さが私の胸あたりだ。
その頭にテンガロンハットをかぶっている。
そしてその下には首輪をはめており、尻尾のそばには細身の剣を下げていた。
(猫はこの尻尾が魅力的なんだよね。今みたいにピンと立ったり、クネクネしたり)
その様子を見ているだけで飽きない。滑らかで、しかも不思議な力強さが感じられるように思えた。
が、その尻尾が突然力を失って下に垂れた。そしてその直後、雉トラさん自身もうつ伏せに倒れて動かなくなってしまった。
「だ、大丈夫ですか!?」
どうやらただコケただけではないらしい。私は急いで駆け寄った。
顔を覗き込むと、閉じていた細い目が薄っすらと開いた。
「吾輩……もう……五日……食べていないのである……」
吾輩?また古風な喋り方だ。
五日絶食には驚いたものの、私は少し安心した。
何か大きな病気だったら大変だが、ただ空腹で倒れたのなら何か食べさせてあげたらいいだろう。
それにタイミングの良いことに、ちょうど今クッキーを買いに行った帰り道だった。
「とりあえずクッキー食べます?あと、私の泊まってる宿屋の食堂がすぐ近くなのでそこへ行きましょう」
****************
(何か……つい最近全く同じ光景を見た気がするな)
ネウロイさんの食堂でガツガツとお粥をかき込む雉トラさんを見て、私はそう思っていた。
ただし、その時は猫ではなく犬だったが。
「ゆっくり食べた方がいいですよ。五日も食べていなかったのでしょう?」
ネウロイさんのセリフもその時と全く同じだ。
キジトラさんは少しペースを落としながら礼を言った。
「ありがとう。本当に助かったのである。恩人の方々の名前をうかがっておきたいのであるが……」
「私はこの宿屋を経営しているネウロイといいます。こちらは妻のルー。そしてあなたをここまで連れてきてくれたのが、うちの宿泊者のクウさんです」
私とルーさんはペコリと頭を下げた。雉トラさんもスプーンを止めて頭を下げ返す。
「吾輩はケットシーである。名前はまだない」
(……ん?どこかで耳にしたことのあるようなセリフだな)
不思議なデジャヴを感じたものの、とりあえず雉トラさんの種族が『ケットシー』だということは分かった。
ルーさんがその自己紹介を聞いて首を傾げた。
「名前がない?」
「そうなのである。実は吾輩、とある罪で故国を追放されたのであるが、その時にこの長靴以外、故国で得たものは全て剥奪されたのである。それは名前すらも例外ではなく、ゆえに吾輩は故国を出て以来ずっと名無しで通しているのである」
名前まで剥奪されるとは、この雉トラさん何をやったのだろう?
気にはなった私はつい尋ねてしまった。
「とある罪?」
もし話したくないなら無理に聞くつもりはなかったが、雉トラさんは普通に答えてくれた。
「国王の暗殺未遂である」
はい?
私たち三人はあまりの罪状に何も言えず、ただ目を丸くした。
「ちょっとやり過ぎちゃったのである」
「「「…………」」」
雉トラさんは頭をかきながら軽く笑ったが、やり過ぎにもほどがある。テヘペロしてる場合じゃない。
しばらくしてようやく立ち直ったネウロイさんが、かろうじて口をきいた。
「それは……むしろ国外追放と諸々の剥奪くらいでよく済みましたね」
雉トラさんも同意してうなずいた。
「拙者もよく命があったものだと思うのである。しかし、国王を含めてみんな暗殺未遂があって良かったと思ってくれたので、なんとかこの程度の罰で済んだのである」
「暗殺未遂があって良かった?」
そんな事があるのだろうか。
私たちは疑問を深くしたが、雉トラさんは笑って事情を話してくれた。
「そうなのである。事の起こりは前国王が亡くなったところから始まるのである。前国王には王子が三人いて、遺言でそれぞれ遺産を与えられたのである。長男が国王の地位を、次男が財宝を、三男が吾輩を与えられたのである」
私たち三人は最後の部分がよく分からず、さらなる疑問符を浮かべた。
一人だけ遺産がケットシーってどういうことだ?
雉トラさんもすぐに私たちの疑問に気づいて説明してくれた。
「あぁ、少し分かりにくかったのであるな。当時の吾輩は国軍の中でも特殊な独立騎士団を率いていたのである。それは国王の権力が及ばぬ騎士団であり、国王の無法を牽制する役割を持った騎士団なのである」
国としてそういう仕組みを取っているということか。
私は話を噛み砕いて尋ねた。
「……つまり、三男さんがその騎士団への命令権を与えられたっていう事ですか?もしもの時に長男さんの暴走を抑えるために」
「ご明察なのである。国王になった長男は、幸い暴走するほどの肝のある男ではなかったのであるが、国務の重圧に耐えきれず酒浸りの毎日を送るようになったのである」
その話を聞いたネウロイさんは苦笑した。
「それは……あなたも三男さんもお困りになったでしょう。民にむごいような仕打ちでもしたなら騎士団として動くのも仕方ないでしょうが、本人の酒浸りでは……」
「まさにその通りなのである。軍事行動に移るような非道があったのならともかく、それをするほどの肝もなかったのである。ただ、それでもやはり国王が常時泥酔では政務が非常に滞るのである。それはそのうち国民生活にも影響を及ぼし、我が主である三男は大いに心を痛めたのである」
厄介な話だな、と私は思った。
王政を敷く国では王様の資質によって少なからずこういったことが起こるだろう。
もちろん良し悪しあるだろうが、私たちのいるプティアの街は共和制だからこういったことは起こりにくい。
「苦しむ主を見ていられなくなった吾輩は、一騎士団長としてではなく、一人のケットシーとして国王の暗殺を試みたのである。それならば主である三男にも迷惑が小さいと考えたのである」
雉トラさんはサラリと言ってのけたが、そう簡単なことではないだろう。
主を守って自分だけが罪を被ろうというのだから、すごい忠誠心だ。
「拙者は国王をおだてて、酒と称した秘薬を飲ませることに成功したのである。それは飲んだ者を数分間だけネズミに変える秘薬なのである。そしてネズミになった国王を吾輩は食べようとした。しかしすんでの所でそれを主に止められて、吾輩は逮捕されたのである」
(……ん?ネズミになる薬?)
私はこの話に違和感を覚えた。
本当に殺すつもりならそんな秘薬ではなく、初めから致死性の毒薬を飲ませればいいだけだ。
雉トラさんは話を続けた。
「国王は吾輩に食べられそうになったのがよほど怖かったらしく、それまでの行いを反省して酒を断ったのである。元々重圧に弱かっただけで悪人ではなかったのであり、それ以来は政務に励んでいるそうなのである。そして我が主である三男は八方手を尽くしてくれて、吾輩の罰を国外追放と所持品の剥奪処分で済ましてくれたのである」
少し遠い目で笑う雉トラさんの顔は、どう見ても暗殺未遂を犯したような犯罪者には見えなかった。
(……きっとこの雉トラさん、最終的にこうなることまで分かっててやったんじゃないかな?話から何だか長男さんに対する憎しみを感じないし。三男さんに止めさせたのも、わざとそうさせた感じがするし)
そう思ったのは私だけではなかったらしい。
ネウロイさんもルーさんも、雉トラさんに対する視線をむしろ優しくしていた。
一応は前科者であるはずだが、どうも悪い人ではなさそうだ。
そんな雉トラさんにルーさんが尋ねた。
「それで名前も無くされたんですね」
「何か一つだけ所持する事が許されたのであるが、吾輩が選んだのはこの長靴である。これは吾輩が三男に仕え始めた時、初めて贈られた思い出の品なのである。残念ながらセットのアンクレットは紛失したのであるが、今でもこの長靴は吾輩一番の宝なのである」
ホロリとくるいい話だー。
この雉トラさんは三男さんが本当に好きだったんだな。
「でも、ずっと名無しさんだと不便じゃありません?」
ルーさんの質問に雉トラさんはうなずいた。
「それはおっしゃる通りなのである。もしよろしければ、恩人の方々に今名付けていただきたいのである」
え?
初対面でそれはちょっと困ってしまう。名前って割と重要なことで、責任重大だ。
ネウロイさんとルーさんも困惑気味に眉根を寄せた。
「いやぁ、いきなり名前と言われましても……なぁ?」
「ええ……そうだ!クウちゃんならすぐにいい名前が思いつくんじゃない?使役モンスターにも全部名前つけてるんでしょ?」
名案だと言わんばかりに表情を明るくしたルーさんの裾を、ネウロイさんがぐっと引っ張った。
そして小さく首を横に振ってみせる。
(……ネウロイさん?なんですかその表情は。まるで私のネーミングセンスが良くないみたいじゃないですか)
ちょっぴりムッとした私は、即座に名前を考えて提案した。
「じゃあ……キジトラさんっていうのはどうですか?」
ネウロイさん夫婦は顔を見合わせた。
だから何なんですか、その表情は。
微妙な顔をした二人とは対照的に、雉トラさんは明るく笑ってくれた。
「ありがとう。では今日から吾輩の名前は『キジトラ』なのである。助けいただいた上に名前まで付けてもらって、感謝の言葉もないのである」
そら見ろ、本人は満足そうじゃないか。
私もその様子に満足し、キジトラさんに笑顔を返した。
****************
「あれが全部仕事の依頼なのであるか?すごい数なのである」
「そうです。あれだけあれば、私たちに向いてるのもあると思いますよ」
私とキジトラさんは二人でアステリオスさんのお店に来ていた。
クーシーのシバさんの時と同じように、先ほどの食事代と当面の宿代を私が立て替えてあげることになったのだ。
その代わりに仕事を手伝ってもらう。
(どの仕事がいいかな?キジトラさんもすごく強かったから、どんな仕事でも大丈夫そうだけど)
私はお店でキジトラさんが見せてくれた剣技を思い出していた。
戦えるかと聞かれたキジトラさんは、一枚の紙を宙に投げた。
そしてそれに剣を軽く突き刺した後、剣から抜いて私にくれた。
初めは何のことやらさっぱり分からなかったが、よく見ると一度しか突かれていないと思っていた紙にはいくつもの穴が空いていた。
目にも見えない速度で何度も突きを繰り出していたということだ。
ネウロイさんとルーさんにはなんとか見えていたらしく、二人とも驚きで口が開きっぱなしになっていた。
(シバさんもキジトラさんも、これだけ腕が立てば行き倒れなんかにならなくて済みそうなものだけど……不器用な人の放浪って難しいんだな)
私は改めてそんなことを考えていた。
ちなみにシバさんにはすでにアステリオスさんのお店を紹介しているので、ちゃんと稼ぎながら自活できている。
何度か一緒に仕事もしたのだが、シバさんが希望するのは主に討伐系の依頼だ。
(できるだけ安全に稼ぎたい私とは、ちょっと方向性が違うんだよね)
そんなわけで、特別な事情がなければそれぞれで仕事をしている。
もちろん必要があれば召喚させてもらうことにはなってるが。
シバさんはモンスターと戦って自らを鍛え、最終的には召喚状態でなくても力の解放をできるようにするのが目標とのことだった。
(首輪で開放状態になれない縛りプレイも、それはそれで良い鍛錬になるって言ってたしな……ん?縛りプレイ?)
私は自分の心のセリフにふと引っかかり、無駄にドキドキしてしまった。
縛られた上に、首輪を引かれて歩くシバさんを妄想してしまう。
(そ、そういえばキジトラさんもよく似た首輪をつけてるな)
私は一人顔を赤らめつつ、依頼書を眺めるキジトラさんを横目に見た。
(見た目は普通のペット用の首輪っぽいけど、もしかしたら……)
私がそんなことを考えていると、キジトラさんが突然剣を抜きながら背後を振り返った。
その剣に、もう一本の抜き味の剣がぶつかって高い音が響く。
「おのれ泥棒猫め!ここで会ったが百年目!成敗してやるから覚悟するでござる!」
ござる?
その珍しい語尾を発したのは、案の定シバさんだった。
シバさんがキジトラさんに斬りかかっている。
キジトラさんはそれを受けつつ叫び返した。
「吾輩が泥棒!?泥棒とはお前のことである!この泥棒犬め!」
急に店内でつばぜり合いを始めた二人に、お客さんたちがどよめいた。
慌てて外へ出ていこうとする人もいる。
それはそうだろう、真剣が抜かれているのだ。
「ちょ、ちょっと!二人とも!」
私がそう叫んだ瞬間、背後からものすごく恐ろしい何かを感じた。
そしてそれはつばぜり合いをしていた二人も同じだったらしく、一斉にそちらを振り返った。
見ると、アステリオスさんが大きな斧を右手に抱えて凄んでいる。
私はこのお店にかなりの頻度で来ているが、こんなに怖いアステリオスさんを見るのは初めてだった。
威圧感がハンパない。空気が重く、息をするのも苦しいほどだ。
「おい、お前ら。五つ数える間に外に出ろ。一、二……」
アステリオスさんは五まで数える必要はなかった。
シバさんとキジトラさんは一切の躊躇なく、扉に向かって駆けて行く。三を数え終わる前に外へ出ただろう。
私もアステリオスさんへ頭を下げながら二人の後を追った。
事情は分からないものの、外に出てからも二人を戦わせるわけにはいかない。
「二人とも、事情は分かりませんけどやめて……」
外に出た私は争いを止めようと声を上げたが、二人はすでに剣を鞘に収めていた。
そしてよく見ると、二人とも尻尾を股の間に挟んでいる。犬や猫が怯えている時にする行動だ。
「……やめてますね、もう。武器を抜いちゃだめですよ」
「抜けぬでござるよ。アステリオス殿……相当な使い手であるとは思っておったが、まさかあれ程とは」
シバさんは震える声でそう言い、キジトラさんも同じような声で同意した。
「確かにこの店の周りでは抜けないのである。何なのであるか、あのミノタウロスは?あれではもし開放状態になれたとしても勝てるかどうか……」
開放状態?
ケットシーもクーシーと同じように力の開放で能力が跳ね上がるということだろうか。
そういえば種族名もよく似ている。犬のクーシーと猫のケットシー。
「……いや、いま吾輩は少々見栄を張ったのである。開放状態になってもあれには到底勝てないのである。と言っても……どうせこの首輪のせいで開放状態にはなれないのであるから、見栄でもないのが悲しいところではあるが」
「拙者の開放状態でも勝てぬ。まぁ拙者は新たな主君であるクウ殿のおかげで、一時的に開放状態になれるようにはなったがな」
「なに!?」
自慢げに顎を上げたシバさんの肩に、キジトラさんが掴みかかった。
「それは一体どういう……」
「ちょっと待ってください!二人とも、私には事情がさっぱり分からないんですけど。ちゃんと一から説明してもらえますか?」
私は二人の間に体を入れて引き離した。
一体どういう経緯でこうなってるんだ。
二人は顔を見合わせた後、シバさんの方が話し始めた。
「……拙者たちは放浪の道中、偶然出会って数日旅を供にしたのでござる。お互い似たような境遇であったから、赤の他人には思えなかったのでござるよ」
キジトラさんもシバさんに同意してうなずいた。
確かに二人はよく似ている。二人とも剣の使い手だし、二人とも故国から追放されているのだ。
しかも先ほどの会話からすると、首輪によって本来の力を失っているという状況まで同じということらしい。
気が合わない方が変だろう。
「拙者たちは最終的にここプティアの街の南方にある山中で別れたのでござるが、その後しばらくして荷物の中から路銀と姫様から賜った小刀が失せていることに気づいたのでござる。これはやられたと思い後を引き返したのでござるが、泥棒猫の名無し殿はもう逃げ去った後で……」
「何を言うのであるか!泥棒をされたのは吾輩の方なのである!吾輩の金銭と大切なアンクレットもなくなっていたのである!盗んだのはシバ殿であろう!」
「何を言うか!?盗人猛々しいぞ!拙者が泥棒なぞ……」
「吾輩だって泥棒など……」
「ストップ!ストップ!ストッープ!!」
私はまた二人の間に入って喧嘩を止めた。
ちょっと落ち着いてください。またアステリオスさん来ますよ。
少々ヒートアップしてしまったが、大体の事情は掴めた。
「詰まるところ、シバさんはキジトラさんが盗んだと思っていて、キジトラさんはシバさんが盗んだと思っている、と」
私のまとめに対し、二人とも同時に鼻を鳴らした。
「思っている、ではなくそうなのでござる。前日の夜、最後に荷物を確認してから気づくまで名無し殿以外には会っておらん。荷物の中でも価値のある路銀と小刀だけ落とすとも考えられぬし」
「吾輩からしても同じなのである。シバ殿以外に疑うべき人間がいないのである。っていうか、吾輩はクウ殿に『キジトラ』という名前をいただいたので、今後は名無しではなくキジトラと呼んでほしいのである」
「なに!?拙者を差し置いて我が主君から名を頂戴するなどと……」
いやいやいや、シバさんあなた名前はあるでしょう。
(なんか面倒なことになってるな……二人ともムキになってるし)
私は深いため息をついた。
それから二人に質問をしてみる。
「大体のことは分かりましたが、今お二人が一番しなければならないことが何かは分かりますか?」
二人は首を傾げた。
「しなければ……?この泥棒猫をお上に突き出すことでござろうか」
「それはこちらのセリフなのである」
ダメだこりゃ。
私はまた一つため息をついてから、二人が取るべき重要な行動を教えてあげた。
「アステリオスさんに謝りに行くことです。このままじゃ、二人とも仕事を受けられませんよ?また行き倒れになってもいいんですか?」
二人は顔を見合わせてから、不承不承うなずき合った。
どうやら休戦協定が結ばれたようだ。
****************
「謝ったってダメだ。店内で刃傷沙汰を起こすような連中に回せる仕事はねぇ」
開口一番そう言われた二人は、尻尾を下げてシュンとした。可愛そうだけどちょっと可愛い。
アステリオスさんは裏口から出てきて一応事情は聞いてくれた。
初め普通に表から入ろうとした二人はまた殺気をぶつけられ、すごすごと裏口に回ることになった。
私はなんとかフォローできないものかと頭を巡らせた。
「あの……二人とも反省してますし、ちょっとした誤解が原因みたいですし」
「誤解ではないのでござる」
「シバ殿が盗ったのである」
二人の即答に私は頬が引きつった。誰のために言ってあげてると思ってるんだ。
アステリオスさんも舌打ちを一つした。
「全然反省してねぇし、まだ仲も悪いし。店には入れられねぇよ。お前ら出禁だ」
「「そ、そんな……」」
二人は声を合わせて嘆いた。
それから今度はお互いを睨み合う。
「……あの双子岩でお主を切り捨てておればよかった」
「それはこちらのセリフなのである。双子岩をシバ殿の墓標にすればよかったのである」
もういい加減やめなさいよ二人共。そんなんだから今こんな状況になってるんでしょうが。
私はもうため息しか出なかったが、意外にもアステリオスさんが二人の会話に食いついた。
「おい。双子岩って、ここから南の山にある白と黒のデカい岩のことか?」
二人ともその質問にうなずいた。
「おっしゃる通りでござる」
「吾輩たちはあそこで最後の野営を共にしたのである。そして、そこで窃盗に遭ったのである」
その言葉にシバさんがまたキジトラさんを睨んだ。
しかしアステリオスさんはそんな様子には構わず、しばらく顎を撫でながら考えごとをしていた。
そして突然ニヤリと笑う。なんだか悪そうな顔だ。
「お前らそんなに戦いたいんなら、その双子岩で決闘しろ。俺が立ち会ってやる。そんで勝者には今後ずっと、とびきりの仕事ばかりを紹介してやるよ」
え?突然どういうことだろう?
いぶかしむ私に対し、アステリオスさんが悪そうな笑みを向けた。
「ただしクウ、お前も来て手伝うのが条件だ。二人を召喚して、開放状態で戦わせてくれ」
****************
「これが召喚……確かに力を感じるのであるが、本当にこれで開放状態になれるのであるか?」
キジトラさんは双子岩の前で召喚された自分の体を見下ろしていた。
私たちは道中で召喚契約を結び、到着してから初めて実際に召喚を行った。
魔素の消費を抑えるため、ぶっつけ本番でいいとアステリオスさんに言われたからだ。
「拙者は地力と召喚による強化とで首輪の力を超えられたのでござる。なれなかったとしたら、それはキジトラ殿自身の力不足ということでござるな」
挑発するようなシバさんを、キジトラさんは目を細めて睨んだ。
それからフーっと息を吐き、全身に力を込める。猫が威嚇をする時のように毛が逆立った。
しばらくすると、シバさんの時と同じように全身がほのかに発光し始めた。
ただし、シバさんの開放状態とは色が違う。シバさんは緑色だったが、キジトラさんは赤色だ。
赤いオーラが全身を包み、ケットシーの力が開放された。
それと同時に、召喚魔法を使う私への負荷が大きくなる。やはり開放状態での召喚維持は魔素の消費が激しい。
「なれた……開放状態になれたのである……」
キジトラさんは手を握ったり閉じたりしながら自分の体を確かめた。
それから剣を抜き、目にも止まらぬ速さで突きを繰り出す。
ひとしきり動きを確認した後、涙の溜まった瞳を私へと向けた。
「クウ殿……行き倒れていたのを助けてもらい、名前まで付けてもらった上、さらに再び開放状態にさせてもらえるとは……もはや恩の返しようも、ないのである……」
シバさんの時もそうだったが、やはり鍛え上げた人間が強さを失うというのはよほど辛いことらしい。
キジトラさんの言葉は涙で詰まって途切れ途切れだった。
あまり気兼ねされるもの申し訳ないので、私はできるだけ明るく笑って見せた。
「いや、そんな大げさですよ」
「そんな事はないのである。もしよろしければ、吾輩の新しい主になっていただけないだろうか?騎士として、吾輩の剣をクウ殿に捧げたいのである」
キジトラさんは剣を顔の前に立て、私にひざまずいた。なんだかデジャヴだ。
「え?いや、いきなり主って言われましても……」
「そうでござる!クウ殿が困っているではないか!」
シバさんが顔を険しくしてキジトラさんに掴みかかった。
いやいやいや。あなたつい先日ほぼ同じことしてましたよ?
「何をそんなにムキになっているのであるか?シバ殿の主君の戦力が増えるのであるから、むしろ喜ぶべきことでなのである。それともシバ殿の忠誠心は主君を独り占めにしたいだけのエセ忠誠心なのであるか?」
「ぐぬっ……」
痛いところを突かれたシバさんは悔しそうに言葉を詰まらせた。
反対にキジトラさんはドヤ顔を見せつける。
厄介だなぁ。なんか張り合ってるし、どうせ断っても食い下がってくるんだろうなぁ。
もう二人同じにしとけば文句ないよね。
「じゃあ……シバさんの時と同じように、召喚時だけの主ってことで」
「当面はそれでいいのである。ではよろしくお願いするのである」
満足げにうなずいたキジトラさんとは対象的に、シバさんは歯ぎしりでもしそうな表情で新たな同僚に言葉を投げた。
「キジトラ殿、喜ぶのはまだ早いでござるよ。その首と胴が繋がっていなければ主に仕えることも叶うまい」
言いながらスラリと刀を抜いた。心なしか、いつもより刃がギラギラしている気がする。
キジトラさんも剣をギラつかせて応じた。
「シバ殿こそ、心臓に穴が空いては主君に仕えることなどできないのである」
アステリオスさんはその様子を満足そうに眺めた。
「二人ともやる気満々で結構なことだ。クウ、始めさせてやれ」
「……仕方ないですね」
これはもう、一度思い切り喧嘩しないと収まらないだろう。
私は右手の中指と親指で輪を作り、シバさんを召喚した。ちなみにキジトラさんは左手の中指と親指にしている。
シバさんはすぐに力を開放し、緑色のオーラに包まれた。
そして私への負荷がさらに大きくなる。魔素が二人にどんどん吸われているのを感じた。
「二人とも、できるだけ早く済ませてくださいね」
魔素が急激に減ってムラムラしてきた私は二人にそうお願いした。
しかし何故かアステリオスさんがそれを否定する。
「いや。たっぷり時間をかけて、気の済むまで戦え」
「ぇえ?」
「いいんだよそれで。よし……始めろ!」
アステリオスさんの一言で、二人は弾けるように下がってまず距離をとった。
そして一瞬の静寂の後、二人はその中間地点でぶつかった。
私にはあまりにも速すぎてはっきりとは視認できなかったものの、ぼんやりと二人が絡み合う様子が見て取れる。
どうやらシバさんの斬撃をキジトラさんがいなしているようだった。
キジトラさんの剣はシバさんの刀に比べて細身だ。まともに受ければ折れてしまうのかもしれない。
華麗なほど滑らかな剣さばきで、上手く力をそらしている。
と思ったら、即座に攻守が交代して今度はキジトラさんが高速で突きかかっているようだった。
シバさんは剣を水平に構えてそれを迎え撃つ。矢継ぎ早に打ち込まれる刺突は、全てシバさんの刀に打たれて弾かれた。
凄まじい反射神経だ。
「すごい戦いですけど……魔素の消費もすごいんですよ」
「そりゃそうだろうな。ほらよ、魔素の補充薬はかなり持ってきたからどんどん飲め」
アステリオスさんは瓶の並んだ木箱を差し出してくれた。魔素補充薬が1ダース入っている。
私はそれをグビグビ飲みつつ、横目にうろんげな視線を送りながら尋ねた。
「……で、何を企んでるんですか?」
↓挿絵です↓
https://kakuyomu.jp/users/bokushou/news/16817139558220909129
アステリオスさんはニヤリと笑いながら抗議してきた。
「何だよ『企んでる』って。俺が悪巧みしてるみたいじゃねぇか」
「してるでしょう?そんな悪そうな顔しちゃって」
「がっはっは!そうだな、そろそろ教えてやろう。この岩の周辺はシーフモンキーの縄張りなんだよ」
「シーフモンキー?」
「そうだ。シーフモンキーはその名の通り猿型のモンスターで、ほとんどの個体はかなり弱いから危険性としては小さなやつらだ。ただ、少し変わった習性を持っていてな。強い者の所持品を盗んで身に着けることを好むんだよ」
「……え?じゃあ、もしかして?」
「そうだ。二人がお互い盗まれたと思ってる物は、十中八九シーフモンキーが盗んだんだろう。弱い代わりに気配を消すのが上手いモンスターだから、寝てる間に盗みに来られたらそうそう気が付かないだろうな」
やっぱり誤解か。
どうせ何かしらの事情があるのだろうとは思っていたが、まさかモンスターに盗まれたとは思わなかった。
「でも、それなら何で黙って喧嘩させてるんですか。教えてあげればいいのに」
「シーフモンキーは不思議と物の価値が分かるやつらでな。いいもんばかり盗んで身に着けてるから、もし捕まえたら高価なもんを得られることが多い。ただし普段は隠れててめったにお目にかかれないんだよ。弱いモンスターゆえの本能だな」
「はぁ……」
「だが、強い者から盗みたくなるというのもやつらの強烈な本能だ。つまり強い者がいれば、それに惹かれて集まってくる。だから二人を開放状態で戦わせてるんだよ。あの状態は確かに強いが、魔素のオーラがだだ漏れだからな」
つまり、シバさんとキジトラさんを餌にしてシーフモンキーを釣り上げようという作戦なわけだ。
「……二人がちょっと可愛そうじゃないですか?」
「何言ってんだ。うちの店で騒ぎを起こしたんだから、これくらい当然だよ」
「せめて教えてあげればいいのに」
「本気でやった方がシーフモンキーが集まるだろ。召喚状態なら死ぬこともねぇしな」
「まぁ……それはそうですけど」
その点は私も考えていた。
どうせ喧嘩するなら召喚されてからの方がいい。これならば死ぬほどのダメージを受けても召喚前の場所に戻るだけだ。
ただし、魔素がほぼゼロの状態で戻るので相当しんどいとは思うが。
「クウにはシーフモンキーが集まってきたところで捕獲も手伝ってもらうぞ。使役モンスターを総動員してくれ」
「いいですけど……二人の召喚でしんどいから、ガルーダは召喚できませんよ」
私は魔素補充薬をまだグビグビと飲んだ。
っていうか、話を聞きながらもずっと飲んでいる。
補充した端から消費されていくから、どれだけ飲んでも満たされない。おかげでずっとムラムラし通しだ。
っていうか、っていうか、お腹タプタプでもう飲めないよ。
アステリオスさんは一本300mLくらいの瓶を1ダース用意してくれているが、それだと全部で3.6Lだ。
飲めるわけがない。
「……今の内にお花摘みに行ってきていいですか?」
「あぁ、そんだけ飲みゃそうなるわな。あっちに茂みがあったから行ってこい」
『お花摘み』というのは、要はトイレだ。登山などで女性がお花摘みと言ったら察してください。
私は離れた茂みの方へ行ってから、腰を下ろした。
そして用を足すのではなく、右腕スライムのスケさんを召喚した。
「ごめんねスケさん。これ以上飲むのはキツイから、ちょっと手伝って」
スケさんは私の顔に近づき、耳元と首筋をそのローションでぬるりと撫でた。
ゾクゾクとした快感が背筋を伝う。私自身も自分の体に手を伸ばした。
やはり薬での魔素補充には限界があるので、セルフケアでの回復を目指すことにしたのだ。
私はこの世界に来てから得てしまった発情体質のおかげで、魔素が枯渇してくるとめっちゃムラムラしてくる。
そしてそのムラムラを解消するべく行動すると、魔素が回復するのだ。
今も魔素がカラカラでめっちゃムラムラしていたので、セルフケアはかなり捗った。
そしてごく短時間で昇天を迎えることができ、魔素が一気に回復する。
……のだが。
「……足らない」
その回復した魔素もすぐに二人によって消費されてしまう。仕方なく私は立て続けに二回戦に突入した。
私はムラムラすると同時に、ちょっぴりイライラした。
何で私がこんなことになってるんだ。そう思うと喧嘩しているシバさんとキジトラさんに対して腹が立ってきた。
(……二人をセルフケアのネタにしてやる)
私は腹立ち紛れにそうやってフラストレーションを解消することにした。
そのくらいはバチが当たらないだろうし、妄想するだけなら自由だ。
考えたら二人ともなかなかネタとなるポイントが多い。二人ともドギースタイルがスゴそうだし、私を主として仕えるとか言ってるし。
(四つん這いになって二人から責められたり、反対にアレコレご奉仕させたり……)
私は妄想の中で二人を存分に弄んだ。そしてまたごく短時間で昇天を迎える。
「……っくぅぅ」
私がそんな声を漏らすのと同時に、茂みの低木がガサガサと音を鳴らした。私が起こした音ではない。
その音のした方から、小さな角の生えた猿が顔を出した。
「スケさん!!」
驚いた私は即座にスケさんに攻撃を命じた。
グーを作ったスケさんが猿の顔めがけて飛んでいく。
おそらくこの猿がシーフモンキーなのだろう。
アステリオスさんの言う通りあまり強いモンスターではなく、スケさんのパンチ一発で気を失って倒れた。
「あービックリした……って、あれ?」
私は倒れたシーフモンキーのそばに落ちている物に気がついた。
それはどうやら小刀のようだった。
「これもしかして、シバさんの?……あ。このシーフモンキー、アンクレットもしてる」
なんとその足首には宝石のついたアンクレットまでついていた。
もしこれが二人の物なら、とりあえず喧嘩の理由はもう無くなったことになる。
私は急いでアステリオスさんのところに戻った。
「お、帰ってきたな。そろそろ呼ぼうかと思ってたところだ。シーフモンキーがだいぶ集まってきたから、捕獲を始めてくれ」
周囲を見渡すと、確かに木々や茂みに隠れたシーフモンキーがちらほら見つけられた。
「分かりました。みんな出ておいで」
私はガル以外の使役モンスターを全て出した。そして魔素の補充薬を一本イッキ飲みしてから命じる。
「シーフモンキーたちを出来るだけたくさん動けなくして。完全に倒さなくてもいいから」
私の命令で、うちの子たちはすぐに動き始めた。
それぞれシーフモンキーたちにかかって行くが、特にイエローとレントの二体は目覚ましい働きをしてくれた。
イエローはスピード・ジャンキーなのでものすごい速度で次々に感電させていくし、レントはたくさんの枝を同時に伸ばして敵を捕らえられる。
今回の目的にはおあつらえ向きの二体だった。
しばらくすると、周囲は倒れたり拘束されたりしたシーフモンキーだらけになった。
集まった半分ほどはやれただろうか。
私たちは残りが逃げてしまった時点で身に着けている物の回収を始めた。
「……すごい量になりましたね」
盗品は積み上げると腰くらいの高さの山になった。
しかもこのほとんどが価値あるものだという事だから、大変な金額になるだろう。
アステリオスさんもホクホク顔でそれらを見下ろした。
「大漁大漁」
「これって全部自分の物にしていいんですか?」
「いや。モンスターに盗られたとはいえ、元はちゃんと所有者のある物だ。ちゃんと役所に届けるさ」
「え?じゃあ儲けはないんじゃ……」
「ちゃんと一割の謝礼を貰えるんだよ。それに、三ヶ月しても所有者が見つからなかった場合には丸々貰えることになってる。遺失物とほぼ同じ扱いだな」
なるほど。
どのくらい所有者が見つかるかは分からないが、これだけあれば結構な稼ぎになるだろう。
アステリオスさんは満足げにうなずくと、大斧を持ち上げた。そしてシバさんとキジトラさんの方を向く。
二人はいまだに戦い続けており、剣が空を切る音や金属のぶつかる音が鳴り続いていた。
「え?アステリオスさん、どうするんですか?もう戦いを止めるなら召喚を解除しますけど」
「いや、そのままでいい。俺は確か『勝者にはとびきりの仕事ばかりを紹介してやる』って言ったよな?」
「ええ、そう言ってました」
「じゃあ……二人には敗者になってもらわないといけねぇからな!」
アステリオスさんは無造作に大斧を振り上げ、それを目の前の空間に激しく振り下ろした。
轟音とともに衝撃波が発生し、シバさんとキジトラさんへと向かう。
二人は驚いて飛び退いたが、それまで二人がいた地面に大きな亀裂が入っていた。
「「ア、アステリオス殿、何を……?」」
喧嘩しているはずの二人は、ぴったりと息を合わせてハモった。
「何って、俺も参加させてもらおうと思ってよ。こっからはバトルロイヤルだ。三人のうち、最後に立ってたやつが勝者だからな」
それからアステリオスさんは今日一番の悪い顔を見せた。
その顔を見たシバさんとキジトラさんは、震えながら尻尾を股の間に挟む。
そしてこの後に起こる一方的な蹂躙の中で、私は本物の怪物を目の当たりにするのだった。
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☆元ネタ&雑学コーナー☆
ここから先は筆者が話の元ネタなどを気の向くままに書き記しているコーナーです。
本編のストーリーとは関係ないので興味ない方は読み飛ばしてください。
〈ケットシー〉
ケット・シーはアイルランドの民間伝承に登場する猫の妖精です。
『ケット』が猫で『シー』が妖精なので、まんま猫妖精ですね。
名前はクーシーととても良く似ているのですが、クーシーが妖精の丘の番犬なのに対し、ケットシーは言葉も喋れて自分たちの王国を作っているそうです。
クーシーはほぼ犬扱いなのに、ケットシーは高等生物扱いなんですね。
不公平。
〈cats and dogs〉
英語で『cats and dogs』と言うと『犬猿の仲』という意味のことわざになります。
日本と動物が違うのがちょっと面白いですね。
では『It's raining cats and dogs.』と言うと、どういう意味になるでしょう?
正解は『土砂降りだ』なのです。犬猿の仲から少し離れた気もしますね。
この慣用句の由来は諸説あるのですが、一説には『北欧神話で猫が雨、犬が風を起こすとされているから』とも言われています。
晴れて欲しい時には猫に優しくしてあげるといいかもしれません。
〈長靴をはいた猫〉
割と知らない人もいると思うので一応あらすじ書いておきますが、『長靴をはいた猫』というおとぎ話があります。
三人兄弟の父親が亡くなり、息子たちはそれぞれに遺産をもらうことになりました。
遺言により長男には粉挽き小屋、次男にはロバ、そして三男には猫が相続されたのですが、さすがに三男はがっかりしてしまいます。
どう考えても自分の遺産だけ資産価値が低い。
しかし猫は『心配いりません。私に長靴をください』と言って長靴をもらい、その国の王様のところへ行きました。
そして猫は上手いことやって王様と仲良くなり、しかも三男を貴族だと信じさせることに成功します。
さらに猫は広大な領地を持つオーガの所へ行き、これを騙して食べてしまいます。
『オーガさんはライオンやゾウに化けられて凄い!でも……さすがにネズミには化けられないでしょう?』
と言って煽り、言葉巧みに己の捕食対象にしてやりました。
こうして三男はオーガの城を得た上に、王様にも気に入られて王女様と結婚できたのです。
めっちゃ
筆者は小さい頃にこの話を聞いて、
『長靴関係ないじゃん!!』
って思ってました。
でも調べると、この当時はブーツが貴族など高貴な人間の象徴だったらしいのです。
身なりを整えて王様に会いに行った、ということですね。
つまり『長靴をはいた猫』の『長靴』は、現代で言うところのブランドスーツや高級腕時計みたいなもんなのでしょう。
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お読みいただき、ありがとうございました。
気が向いたらブクマ、評価、レビュー、感想等よろしくお願いします。
それと誤字脱字など指摘してくださる方々、めっちゃ助かってます。m(_ _)m
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