エージェントハンターの歴史調査

トマトも柄

第1話 エージェントハンターの歴史調査

 俺の名前はルオ。

 機関から頼まれて歴史の道具を探りだすエージェントである。

 みんなから分かりやすく言えばトレジャーハンターと言うべきかな?

 歴史の建造物を探り出し、道具を機関に渡し報酬を得る。

 その生活を生業にしている。

 だが、そういう歴史の建造物には当然ながら罠が存在している。

 歴史の道具は当時の人達にとっては宝というべき存在でもあり、厳重な罠があるのだ。



 ルオは依頼された建造物のそばに近付くと小さな鞄を開けた。

 その鞄を開けた瞬間、羽音を鳴らしながら鞄から出てきた存在はルオのスーツの肩に乗った。

「やーっと俺の出番か! なっがい事入られてたから気分悪いぜ! やっといい空気が吸えるわ!」

 鞄から出てきたインコが饒舌に喋りながらルオに話す。

「俺のこの声聞けるとかお前は幸せ者だぜ! このスーパー饒舌イケメンボイスのウェルドイッチ様のボイスだぜ!」

 その饒舌の声を止めるようにルオが話す。

「ウェル。 仕事」

 その言葉を聞き、ウェルはため息をハーッっとついた。

「あのなぁ。 こっちは鞄の中でぎゅうぎゅう詰めに詰められてやっとこうやって楽になれたんだぜ! それなのに第一声が仕事? はぁ! ちょっとは休息をくれってんだ!」

 ルオがこの文句のマシンガントークを想定していたかのようにある物を鞄から取り出し、ウィルに見せた。

「む!? それは!?」

 ウィルは出された物に目が釘付けになっている。

 釘付けになっているのはメロンの欠片である。

「今日の仕事の報酬って事でこいつが貰えるんだが、あまり文句を言ってるようじゃ取り分が減るかもしれないな~」

「それは困る! それくれ!」

「それはダメだなー。 今の仕事の前払い報酬だからな。 仕事を受けるなら渡すぞ」

 むむむとウェルがルオを見てるが諦めたかのように

「分かったよ。 仕事受けるよ」

 ウェルが諦めを込めた声を出しながら仕事を受ける。

 それを聞いた瞬間にルオはウェルにメロンの欠片を与える。

「うっま! これうっま!」

 ウェルが美味そうにメロンを食べている。

「これは前報酬だからな。 もし成功したら大量にこのメロンくれるらしいぞ」

「マジで!? もっと食えるの!? 早く行くぞ! すぐ済ませるんだ!」

 そう言いながらウェルは建造物に向かって物凄い速度で飛んでいく。

「おい! まだ内容言ってないぞ!」

 ルオは急いでウェルを追う。

 そして建造物に入り、周りを見渡す。

「で、今回の内容は?」

「ここの建造物の調査だね。 ここを調べて道具を持って帰って欲しいという依頼だな」

「じゃあここの物持って帰ればいいんだろ? 楽勝楽勝! じゃあとっとと持って帰ってメロン貰おうぜ!」

「おいおい! 持って帰る物はもう決まってるんだぜ。 今回は金貨だ」

「金貨? こんなところにどうして金貨が?」

「ここの金貨はかなりの年数が経っていて、今だと歴史の資料に使えるので欲しいとのことだ」

「歴史の資料に使う? どんだけ年季が入ってるんだ?」

「何でも一世紀以上前の金貨らしい。 で、厳重に保管されているから当然罠もある。 そこでだ」

「このウェル様の出番という事だな~?」

「そうだ」

 その建造物の中には一本の長い道のみで何かしらの箱が置いてある。

「さあ! このウェル様の目からは逃げられないぜ!」

 ウェルは目を凝視しながら一本道を見る。

「見つけたぜー! そのまま真っすぐ!」

 インコの嘴を饒舌に動かしながらルオの肩に乗って指示を出す。

 そのまま真っすぐルオが歩きだすと床が観音開きに開き、ルオの足元に穴が開く。

「ひゃあ!」

 大柄の男とは思えぬ高い声を出し、穴に落ちていく。

 すかさずルオはスーツの袖の間からワイヤーを繰り出し、鈎爪を穴の開いた床に引っかける。

「何も無かったんじゃないのか!?」

 ルオが慌ててウェルに聞くと、

「あ! ごめーん! 床元見てなかったわ」

「そっちも見といてくれ!」

 ルオはワイヤーをつたって壁をよじ登り、穴の開いた床まで戻る。

 床まで戻って宝箱の前に立つ。

「ウェル、確認をよろしく」

「アイアイサー! じゃあこの宝箱見ていきましょうかね~」 

 ウェルは宝箱を凝視する。

 そして、宝箱を見た後に左右の壁を安全確認をするように確認し始めた。

「古典的なトラップだな~。 確認したら開けたと同時に矢が飛んでくるようになってるわ。 これは逃げ場所は無いだろうね~」

「上から飛んでくるって事は無いのか?」

 ルオの言葉にウェルは天井を見上げる。

「天井には無いようだな。 なら逃げる場所は決まってるよな?」

「だな」

 ルオはそう言うと宝箱を開けると同時に大きく跳ぶ。

 そして袖の間から鈎爪を出し、天井に刺した。

 ルオ達が天井にぶら下がる形になった。

 すると、宝箱にあった左右の壁から無数の矢が飛び交っている。

「おいおいー! 危なかったな! 一歩間違えたらサボテンになっちまってたぜ!」

 ウェルがケラケラ笑いながら言うと、

「お前をあそこに投げてから家で飾っても良いんだぞ」

「サラッと怖い事言わないでくれ……」

 ウェルが青ざめた顔で返すと、下の矢の音が収まる。

「収まったか?」

 ルオが音が収まったのを聞いて、見下げて確認する。

 矢はもう飛んでおらず、壁には無数の矢が落ちている。

 天井に刺した鈎爪を引き抜き、宝箱の前に落ちる。

 ルオは宝箱を開き、中身を確認する。

 ウェルも横から覗き込むように一緒に見る。

 そこには金貨が溢れそうなくらいに入っていた。

「おお! 金貨じゃないか! ギャハハ! これで俺達は大金持ちだ!」

「いや……俺達は歴史材料で取りにきただけだからな……」

 ルオが金貨を確認していくと、一枚の手紙に気が付いた。

 それを読み漁っていき、

「どうやらこれらはきっちり返さないといけない場所があるみたいだな」

「ん? どういう事だ?」

「とりあえずそこに確認するか」

 そう言いつつ、ルオはウェルを掴み、ある所へ向かった。

 


 

 そこは教会であり、神父に事情を説明した。

 神父の先祖は金銭面で困った場合の金貨を隠していた事。

 金貨の主がこの教会になっている事。

 一世紀近く前の金貨にも関わらず、保存状態がとても良いので政府が高値で買い取れる事。

 包み隠さず全てを話した。

 神父はそれを聞き、ルオ達の話に了承して一部の金貨の買取を行ってくれた。



 金貨の買取が終わり、教会からの帰り道。

「しっかし! またあのダンジョン行って同じトラップ体験しないと行けないのはめんどかったな!」

 ウェルがブーブー文句垂れながらパンにかじりついてる。

「金貨の主が教会のって分かったら迂闊に手を出す訳にもいかないだろ。 神父から了承も貰えたんだし良いじゃないか」

 そう言いながらルオも持ってたパンにかじりつきながら話す。

「それに二度手間なったからって神父がわざわざパンまでくれたんだし、そんな言うなよ」

「分かったよー。 けど、数枚だけで良かったのか? 教会側ももうちょい金貨渡す言ってたのに」

「あれが適正価格での買取だから問題ない。 政府からも了承貰ってる。 あれ以上貰ったら向こうが損してしまう」

「ルオがそう言うならそうなんだろうな。 まぁ先祖の残してくれた物だし、歴史的価値は普通にあるしな」

「今回のはかなり保存状態良かったし、歴史資料でかなり使えるだろう」

 そしてルオとウェルがパンを食い終えて、

「さて、次の依頼が入ってきているからな。 ウェル、行くか」

「はぁ!? 休み無いのかよ!? 少しは休ませてくれよ!」

「目的地に休みながら行ったら良いんだよ。 それなら問題無い」

 そしてエージェントは新たな目的地へ向かっていった。




 












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エージェントハンターの歴史調査 トマトも柄 @lazily

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ