第5話 探索者ランク

 次の日も電車で小田原に来ている。


 なんか、探索者は増えてないが、昨日よりギャラリーが増えてる感じがする。


「おい!来たぞ!」

「本物ぞ。ヤバ。」

「コスプレしてないぞ。」

「それな。」

「トイレで着替えるらしい。」

「はよ!」


 悪夢がよみがえる……。

 ほっといて欲しいんだけど……。



 トイレで着替えて出てきたら、拍手で迎えられた。大きな笑い声と共に。


 お前ら〜!


 くそー、なぜ、俺に構う!

 プライバシー保護法はどうなった!

 動画撮るなよ!


 見下した注目を浴びながら、俺は小田原ダンジョンに入っていった。



 ◇◇◇◇◇



 今日も混雑度は変わらず、全て無視して地下4階に。ただ、今日は地下4階も混雑していて、思うようにスライムが見つからない。


「ダメだ。不安だけど、降りるしかないな。」



 地下5階は、ボス部屋。

 難易度が一気に上がるんだよなぁ……。


 あー、順番待ちか。

 最後列に並ぶ。俺は4番目。


 待ってる間に次の組も来て、早速絡まれる。


「ゆでたまご!お前、ソロじゃねえか!帰れよ!」


「ソロですけど、待っときます。」


「はぁ?別に親切で言ってんじゃねえんだよ!

 目障りなんだよ!くそたまご!」


「そう言われても。」


「あー、むかつく!よし、わかったよ。」


 そう言って、絡んできたやつが、俺に殴りかかる。


 ほう、靴の効果でこうなるだろうとは思ってたけど、それ以上だね。

 余裕で避けられる。

 殴ってきたやつは、豪快にこけた。


「お前!許さねえ!」


 また、立ち上がって殴ってくる。

 今度はボクシングのように、素早い振りで殴りかかってくるが、連続で避けまくる。


「ハァ、ハァ、なんなんだ。」


「もういいですか?」


 それからは、コソコソ何か話してるけど、絡んでくることはなかった。


 よし!順番が来た!

 俺は扉の中に1人で入っていく。


 扉が閉まり、前に1匹の巨大スライムが現れた。

 小田原ダンジョンの地下5階ボス

『ビッグボススライム』


 戦闘力と防御力は強くなるが、動きは早くないとネットに書いてあった。

 ぽよぽよと飛び跳ねるが、スキルは持ってない。あくまで、スライムの強化版だ。


「ほんじゃ、気合入れて行きますか〜!!」


 パシュ!


「あれ?」


 一撃?なんで?


 反対の扉が開いた。

 出口はこちら〜みたいな……。


 慌てて、ビッグボススライムの魔心を拾って出ていく。と最初の広場に戻ってた。


 いやいや、帰るには早すぎるでしょ!

 まだ、1匹しか倒してないし。


 そのあと、ボス部屋のみ5周回した。

 ボスなのにアイテムドロップはなし。

 やっぱり、結構辛いな。


 でも!あれほど上がらなかった探索者レベルがついに!上がった!ヒャッホーウ!


「ふふふ。今日はこれくらいにしておくか。」


 るんるん!



 ◇◇◇◇◇



 もう、ギャラリーは気にせず。

 って、気になるわ!動画撮るな!

 歩いて行くと、道が割れる!

 モーゼの如く、販売所へ。



「次の方〜!げっ!ゆで……。」

 (なんで、また来るのよ!私まで撮られるでしょ!)


「お待たせしました。買取ですね。そのマジックトレイに魔心を置いてください。」


 コロン!コロン!


 (ほら、チョロっとじゃないの!あれ?大きいわね。え?ボス?)


 マジックトレイが、買取金額を表示する。


「はい、買取金額は50,000円です。口座に振り込みますので、右手をIDセンサーに乗せてください。」


 カチャカチャ


 (まじ?あのゆでたまごよね?

 あれ?レベル4?

 でも、スキルなしのまま?

 どうやって倒したのよ!)


「はい、完了しました。

 本日はボス討伐が確認出来ましたので、探索者ランクが国内D級に昇格いたします。

 これにより、D級ダンジョンの入場が可能になります。

 すでにデータが更新されてますので、協会ホームページからご確認ください。

 他にご用件は、ございますか?」


「いえ、大丈夫です。」


「それでは、またお越し下さい。ありがとうございました。」


「はい、ありがとうございました。」


 うおー!また新記録だ!

 しかも、ランクアップ!そっか〜!

 今日も、コンビニスイーツだ!うふふ。



 ◇◇◇◇◇



「ただいま〜!桜!今日もスイーツ買ってきたよ!」


「お兄ちゃん!!今日もミーチューブに上がってるよ!」


「……やっぱりね。」


「どうしたの!お兄ちゃん!ボス討伐したって出てるけど、ほんとなの?」


「うん、ランク上がった。」



「そっか〜!おめでとう!良かったね!」


「うん、ありがとう。」


「探索者に戻るの?」


「いや、まだ決めてない。気まぐれでダンジョンに行っただけだし。たまに行くかも。」


「うーん、そっか〜!そうだね。また、あんなことになったら、嫌だもんね。」


「お前はどうするんだ?高校卒業したらやるのか?」


「うん、やるよ!友達と約束してるし。」


「そっか〜。うん、応援するよ。」


「うん、ありがとう。それじゃ、ご飯にしよう!スイーツはそのあとね!」



 ◇◇◇◇◇



 自分の部屋でパソコンに向かう。

 探索者協会のホームページにログインしてマイページを確認。


 橘 颯 25歳 日本合衆国🇯🇵

 東日本州・川崎支部所属

 探索者シーカーランク:国内D級

 東日本ランキング:10,652,953位(圏外)

 日本ランキング:38,754,064位(圏外)

 世界ランキング:2,086,654,126位(圏外)


 やっぱり、底辺のランキング……。

 ただ、世界ランキングで言うと、

 23億位→20億位!3億アップです。

 ふふふ。底辺は上がりやすい(笑)



 ついでにミーチューブを見る。

 ゆでたまごで検索すると、結構の数が上がってる。しかも、だいたい悪意があるタイトルが付いてる。もう、見たくない。

 再生回数はそれほどでもないが、これはまずい。今、目立つのはよろしくない。


 せっかく、ランク上がったけど、自粛しよ。



 これ以来、休止状態に突入するのだが、一部のコアの間で、第二次ゆでたまごブームが到来するのであった。

 これが、良からぬことを引き起こすことに。

 

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