5章 平和な世界の綻びは希望の一筋

第21話 兄と妹の関係ともう一人の姉

 帰り道に私は悟くん聞いていた。

「悟くんもあの男女の入れ替える、光景を見ていたでしょ?恋歌は私にいったい、何を求めているんだろう。」素直に彼に聞いていた。


「恋歌さんはもし、あの力を使って、自分が間違えを起こしてしまった時、美優に止めて欲しいんじゃないのかな?」彼の思いがけない言葉に私は、


「恋歌自身も自分を律するのに苦労しているのかな…。」

 あの力があればもっと悪用できる、人間を滅ぼす事だって…だけど、あの人は自分がなるべく最善と思う世界をその手で作り出していた。


「俺は思うよ。恋歌さんの中に眠る美優の願いと今の恋歌の願いは似ているのかもしれないって…。平和で争いの無い世界。」

 私は悟くんの意見を聞いて、


 最初の世界にいたときに聞いた恋歌お姉さまの言葉を思い出した。


「なにか特別な才能に恵まれて生まれてきたのなら、その才を困ってる人や弱き者を助けるために使う義務がある。」


 才能を持った人間が持つ責任か…。その義務を果たすために、多くの人を騙して彼女は実現しようとした。それがこの世界。ただ男性を弱い立場にしたわけでは無く。戦争や争いで苦しむ子供や女性といった弱者を守るために世の中に生まれる男性を減らし、攻撃性が出ないように男性の体型を小さくした。



 これじゃあ、元の世界に戻そうとしている私が悪者みたいでは、無いのか?元の世界に戻せば、再び男性が力で牛耳る、おぞましい世界に戻る。多くの人間の苦しみや悲しみが増える世界に戻ってしまうのだ。


私が悩んでいる顔をしていると、

「美優は美優の道を行けば、良いんじゃ無いのかな?恋歌さんに合わせる必要も無いし、恋歌さんが必ずしも正しいとは限らない。」


「それに俺は今の美優が一番好きだよ?ほとんど人は恋歌さんの方が正しいと言うと思う。でも、美優のやりたい事も一つの答えとして正しいと思うよ?」


私は悟くんに聞いてみた、

「世界を元のあるべき姿に戻してもいいのかな。」


「美優はそうした方が良いと思っているんだろ?」と答えてくれた。


そして私の考えを聞いてもらうことにした。

「私は元に戻した方が良いと確信している。私たちすべての人間が招いた事だもん。恋歌だけの考えで勝手な世界を作って良いわけが無いよ。それで人間がダメになったとしてもそれはみんなの責任。私は元の世界にいるみんなにその重さを知って欲しい。だから、私に力を貸してください…。」

 私は彼に頭を下げると、


彼は私の頭を撫でながら、

「思い出したよ。君は俺の妹だ。あの美優(恋歌)は俺の願いも叶えてくれたみたいだな。ずっと前にな、妹の性格をした美優が一番好きな事があったんだ。もし、元に戻したら、俺たちは兄妹に戻ってしまう…だけどそれでも好きでいれるなら一緒に過ごそう。」と話してくれた。


私は、

「お兄ちゃん…私たち兄と妹なのに愛し合うなんて…変態だね。」


「男女恋愛が異常な世界でさらに異常な事をしても何にも問題ないだろう?」

 とお兄ちゃんは答えてくれた。


「おい。兄と妹の気持ち悪い馴れ合いは済んだか?お前たち…。」

 その光景を見ていた長身の女子生徒が声を掛けてきた。


私はその人が誰だか分からなかったが、その姿を見たお兄ちゃんは、

「白河 純…。運命的な出会いをして、俺の妹になった一年の女子生徒だ。」


(このスレンダーな女子生徒が元の体(私)だった人…。)


「まさか、この姉の私が妹をやるとは思わなかったぞ。悟吏と純。」

 あっ、この人は、


「恋歌お姉さま!本当にお会いしたかったです。嬉しいです。」

 そうだこの人は私の一番上の姉だった。本物の恋歌お姉さまだ。


「手を貸せ、純よ。お前だけでも、元に戻してやる。」そう言うと、

 私と恋歌お姉さまだった人は手を取り合いそして、私は久々に元の体に戻った。その瞬間、すべての記憶を取り戻す事に成功した。


私の体、ほぼすべての格闘技を学び鍛え上げた最強に近い体。

「お姉さま!ありがとうございます。でも、なぜ?力が使えるのですか?」

 私は疑問に思い聞いてみた。


「お前は、忘れたのか!」大きな声で怒鳴られた。


「純は美優と悟吏が作り上げた人間なんだぞ?お前はほぼ、柏野家の血を受け継いでいるに値する力の持ち主だ。バカなお前が使えないだけで優秀な私なら造作も無いことだ。」

 ちょっと今、私の事をバカにしていませんでした?お姉さま?


「純よ、私の事を美優と呼べ。私とお前で愚妹を呼び起こすぞ!」


「はい!美優お姉さま!大好きです。」と笑顔で答えた。


 私の大好きなもう一人の姉が帰ってきてくれた。よし、作戦続行だ!

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