第17話 聖歴138年7月28日、試合

 あー、これは6歳頃の夢だな。

 一人部屋を与えらて、喜んでいたのを覚えてる。


「ステータス」


――――――――――――――

名前:スグリ LV1

魔力:100/100


スキル:

なし

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 現状は変わらずか。

 モンスターを倒すとレベルが上がるらしいが、子供の力では野生動物さえも殺せない。

 武器のいいのがあれば、まだ何とかなりそうだが。


 部屋の中はベッドと小さい机が一つ。

 タンスが二つ。


 俺はタンスを開けると服を素早く身に着けた。

 そして、プロテクターというか、胸当てと手甲と脛当てを身に着ける。

 腰に30センチぐらいの木製の棍棒を吊るす。


 戦闘態勢だが、これがこの家の方針だ。

 常在戦場だそうだ。


 食堂に行くと半分ぐらい席が埋まっている。

 俺は末席に腰をかけた。


 この家の順位は強さで決まる。

 暗殺者の家系みたいだが、実際は勇者の家系だ。

 勇者と言ってもスキルや聖剣なんかで決まる訳ではない。

 国で一番強い戦士が勇者を名乗る事が許される。


 人が段々と集まってきて、俺の向かいにも従姉弟のハックルが座った。

 相変わらず嫌な目つきだ。

 爬虫類みたいな目をしてやがる。


 料理が運ばれて来た。

 食事が始まる。


「初代グロウクラスターは言った。強くあれと。強くなければ何事も成す事ができないと。では食事を始めよう」


 そう、俺の父さんが話しをして食事が始まった。

 みんな黙々と食べる。

 食事のスピードは速い。

 ぼやぼやしている奴から死んで行くと言われた。

 仕事が早い奴は食事も早いとも。


 俺は急いで料理をかき込むと、席を立って修練場に向かって走り出した。

 お気に入りである木の人形の前に到着。

 腰の棍棒を抜いて打ち込みを始めた。

 隣を見るとハックルが打ち込みをしている。

 音が軽い。

 力がないんだな。

 俺の方は、鈍い重たい音がしている。


 これでいい。

 俺の長所は力だ。

 膂力に任せた一撃だ。

 同じ年なら負けないと信じている。


「スグリ、ハックル、来い」


 父さんに呼ばれた。


「試合してみろ」

「はい」

「はい」


 俺は木の棍棒を、ハックルは木の短剣を両手に一振りずつ持って構えた。


「始め」


 始めの合図と共に俺は木の棍棒を振り下ろした。

 ハックルは短剣を交差してそれを受ける。

 甘いんだよ。


 俺の重たい一撃でハックルは片方の短剣を落とした。

 連続して棍棒を振り下ろす。

 持ちこたえられるはずもなく、ハックルは残っていた短剣も落とした。

 頭部にピタリと棍棒を寸止めする。


 ハックルはしゃがむと短剣を拾い。

 俺の腹に切りつけた。


「それまで」


 ハックルは父さんに一発殴られた。

 そして俺も。


「ハックル、ルールは守れ。いくら強くても。ルールを守れない奴は、けだものと変わらん。スグリ、お前は勝ったと油断しすぎだ。そういう時こそ隙が出来る。覚えておけ」

「はい」

「はい」


 不服そうなハックルの返事。

 次にやった時はもう油断はしないぞ。

 しかし、ハックルは嫌な奴だ。

 目つきが気にくわないだけではない。

 執念深い性格だし、卑怯者でもある。


 こんな奴が家を継いだらどうなる事か。

 父さんの跡は俺が必ず継ぐ。


 修練を終えて井戸水で体を拭く。


 ステータスを確認するが、チートは発現してない。

 転生特典はなかったのか。

 普通あるもんじゃないのか。

 記憶を持って生まれたというのが、チートと言えばチートか。


 おかげで筋力は鍛えられたが。


 部屋に帰り、筋トレしていると、扉が叩かれた。

 むっ、誰か来たか。


 目を覚ますと朝で、宿の人間が扉を叩いてた。

 遠征の疲れが出たんだな。

 今日はゆっくりしておこう。


 俺のスキルって商人向きだよな。

 だが、ハックルに復讐するまでは冒険者は辞められない。

 商売はジューンに頑張ってもらおう。

――――――――――――――――――――――――

 休載します。

 再開は4/21からです。

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