第4話 聖歴152年6月12日、うー、ムラムラする

 ジューンの後をついて石畳の街を歩く。

 表通りは露店が立ち並び賑やかだ。

 商品を売り込む露店の店員の声がひっきりなしに聞こえる。


 なんとなく目が前を歩くジューンのお尻にいってしまう。

 だって、今晩は同じ部屋に泊まるんだろう。

 意識するなっていう方がどうかしてる。

 前世と年齢を足すと50近いが、今の肉体は23歳。

 肉体労働をやっていたせいか、精力が有り余っている。

 まあ、察しろ。


 ジューンがウダー宝石店と書かれた看板のある店に入った。

 俺も一緒に入る。


 店の中はショーケースが沢山あり、宝石やアクセサリーが陳列されている。

 いかついメイスを持った警備員が5人いて、油断なく俺達を見張っていた。


「お邪魔するわ」

「いらっしゃいませ」


 店員が丁寧に応対し始めた。

 店員は俺の事は護衛だとでも思っているのだろう。

 一瞬視線をこちらに向けてから、興味なさげに視線をジューンに戻した。


 俺はショーケースの中を覗いた。

 宝石がはまった指輪が金貨12枚で売られている。

 宝石のカットもされているようだ。

 どんな技術なんだろうか。

 やっぱりスキルを使っているんだろうか。


「これ売りたいんやけど。ダイヤモンドちゃうけど、ガラスでもあらへん」

「拝見いたします」


 商談が始まったようだ。


「どない」

「そうですね。一粒で銀貨22枚といったところでしょうか」

「そないなわけあらへん。もっと高いやろ」

「鑑定書もありませんし、ダイヤモンドでもないとなると。値段は見事なカット技術につけさせて貰いました」

「しゃあないな。それでお願いするわ」


 鑑定書が要るんだな。

 そりゃそうか。


 でも銀貨22枚はわりと高いのか。

 銅貨100枚で銀貨1枚。

 銀貨100枚で金貨1枚だ。


 銅貨2枚で露店の串肉が買える。

 パンもそれぐらいだな。

 銀貨20枚ぐらいが、街で勤めてる人の一ヶ月あたりの給料だ。


 一日で給料3ヶ月分、わりと良い値段だな。

 魔力通販だけで何もしなくても食っていけそうだ。


「せやけど、良かったんか。こんな高い物をうちにくれて」

「気にするな。スキルで毎日出せる」


「今日はご馳走するわ」

「期待してるよ」


 ジューンの後を歩く。

 やっぱりいいケツしてんな。

 なんとなくムラムラときてしまった。


「何が好きなん」


 いきなりジューンが振り返る。

 俺は慌てて視線を上げた。


「な、何でも食うぞ。嫌いな物はない」


 少しきょどってしまった。

 ばれなかっただろうか。

 顔は赤くなってないだろうか。

 ジューンにどう思われたか気になるが、仕方ない。


「そう」


 再びジューンは歩き始めた。

 どこに行くのか気になっていたら、食料品店についた。

 ジューンは肉や野菜やパンを買い込んだ。


 俺は荷物を持ったよ。

 目の前に遮蔽物があるとほっとする。

 これで視線が隠れるはずだ。


 そして、3階建ての住居についた。

 ギシギシと音を立てる木の階段を上がる。

 ジューンの部屋は3階のようだ。


 ジューンが鍵を開け中に入る。


「狭い所やけど。さっ、入ってや」

「お邪魔するよ」


 部屋は2部屋あり、入口の1部屋は食堂兼、リビング兼、台所になっているようだ。

 奥の部屋が寝室だろう。


 あまりじろじろ見るのも不作法なのでテーブルの椅子に腰をかける。

 そうだ、無限収納を試してなかったな。


「【無限収納】」


 俺は腰のメイスを目の前に現れた黒い穴に入れた。

 うん、普通に使えるな。

 取り出してみるか。


「【無限収納】。あれっ、穴が出ない。ステータス」


――――――――――――――

名前:スグリ LV12

魔力:0/1200


スキル:

無限収納

魔力通販

――――――――――――――


 魔力がないと無限収納のスキルも働かないようだ。

 今後は魔力切れに気を付けよう。


 ジューンに視線をやると、台所で料理をしていた。

 やっぱり後ろ姿にムラムラきてしまう。

 エプロン姿はなんとなくエロいんだよな。


 泊めてくれると言う事はオッケーという事なんだろうか。

 いや止めておこう。

 ジューンとの伝手は大事にしたい。

 それに恩人だ。


 俺は恩人に対して、なんて事を考えたんだ。

 少しは落ち着けよ。

 これじゃ童貞丸出しだ。

 もちろん前世では経験がある。

 今世では経験がないが、そんな事はどうでもいい。


 今日は床に寝て反省しよう。

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